COVID-19を受けて、日本でもようやくオンライン授業が進められました。しかし、市町村によって状況は異なるようで、同一都道府県内での格差も見られるようです。今でも在宅ワークを理解できない人がいるらしいので、或る意味で仕方のないところかもしれませんが、そうも言っていられない問題になっています。毎日新聞社のサイトに、2022年2月5日付の「結局PC使わずプリント配布 オンライン授業に格差 保護者の不満」という記事(https://mainichi.jp/articles/20220205/k00/00m/040/023000c)があり、埼玉県での事例が紹介されています。
同県の全市町村について紹介されている訳ではないので、断片的に知るくらいしかできませんが、それでも或る程度の事情は理解できる内容です。
大学でのオンライン授業や在宅ワークの増加で、インターネット接続が上手くいかないことが多くなりました。日本の回線状況が国際的な観点からすればどの程度なのかわかりませんが、どのような回線でも容量は限られていますので、インターネットの利用者や利用時間が増えれば限界に達することは明らかです。そのことを市町村の教育委員会などはどの程度までわかっていたのでしょうか。
上記記事によると、さいたま市内では2021年度の2学期に小中学校のハイブリッド授業(教室での授業とオンライン授業との併用)が行われたのですが、やはり接続できない、あるいは接続はできても教材を開くことができない、などのトラブルが多かったようです。そこで、3学期が始まる前に接続テストを実施したそうです。ただ、テストは成功しても本式の運用が上手くいくかどうかはわかりません。さいたま市教育委員会も、負荷のかかり方を気にしているようです。ちなみに、2月3日において、市内の56の小学校で179の学級、17の中学校で56の学級が閉鎖となっています。
埼玉県内でオンライン授業の環境整備が進んでいるとされているのは久喜市であるそうです。同市の全小中学校では選択登校制が取り入れられました(記事の内容からして1月31日からの週に始まったということでしょう)。大学であれば、オンライン授業の参加を確認できれば出席として扱うのが当然と言えますが、それは多くの大学で採用されているmanabaのresponという出席票発行機能があればこそとも言えますし、試行錯誤が続いている面もあります。久喜市の具体的なシステムはわかりませんが、上記記事によれば「当初は『出席停止・忌引等』として扱っていたが、感染拡大を受け、オンライン授業への参加や学習内容の定着が確認できれば市独自の措置として『出席』扱いとする」そうです。「独自」という点に引っかかりを覚えるのは私だけでしょうか。
上記記事では市町村名が示されていませんが、オンライン授業の導入が進んでいない市町村もあるようです。県東部と書かれているにすぎない或る市町村では、2月から分散登校をはじめたようです。オンラインでの生授業も配信できるように市(の教育委員会?)が支援しているようですが、実際には2020年に各家庭のPCからWi-FIで接続しただけで、学級閉鎖になっても課題プリントの配布があっただけだったという話もあります。最近では文部科学省のギガスクール構想(2020年2月から)によって児童・生徒にノート型PCやタブレット型PCを配布することになっているはずですが、それもなかったということのようです。
同記事を読んでいて、正直に「わからない」と思ったのが、県中央としか書かれていない市町村の話です。昨年、「第5波」の際に、その市町村の小学校でPCが配布されたそうで、「接続して、会話の時にオン、オフにする程度は練習したが、実用はほぼしてなかった。学級閉鎖になったら授業できるのか不安だ」というのです。これでは全く意味がないでしょう。実用をすることができなければ、何のためにPCを配布したのかがわかりません。オンライン授業を普及させるには機械だけでなく人の問題もありますから、一日や二日で準備が終わる訳ではないのですが、急ぐ必要はあります。
ここまで記してきたことは、大なり小なり、他の都道府県についても妥当することでしょう。
さて、話題を変えることとなりますが、上記記事に全く書かれていないことで非常に気になっている点があります。文部科学省のギガスクール構想です。「吉田製作所」というYouTubeのチャンネルによると、この構想で推奨されているノート型PCやタブレット型PC(いずれもMicrosoft Windows 10 ProかGoogle Chrome OS)の性能が非常に低く、使い物にならないそうです。文部科学省のサイトに、2019年12月19日付の「GIGAスクール構想の実現パッケージ〜令和の時代のスタンダードな学校へ〜」(https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_jogai02-000003278_401.pdf)という文書が掲載されており、そこに「学習者用端末の標準仕様」が示されています。「5万円程度の価格帯」とされており、次のようになっています。
①Microsoft Windowsの場合
OSはMicrosoft Windows 10 Pro
CPUはIntel Celeron同等以上で2016年8月以降に製品化されたもの
ストレージは64GB
メモリは4GB
画面は9インチから14インチまで
②Google Chirome OS
OSはGoogle Chrome OS
CPUはIntel Celeron同等以上で2016年8月以降に製品化されたもの
ストレージは64GB
メモリは4GB
画面は9インチから14インチまで
③iPadOS(iOS)
OSはiPadOS
ストレージは32GB
画面は10.2インチから12.9インチ
他にも書かれていることがありますが、ここでは省略します。
現在、私はMicrosoft WindowsやGoogle Chirome OSを使用していないのでよくわかりません。そこでiPadOSの箇所を見ます。
iPadについてはWi-FiモデルなのかWi-Fi+Cellularモデルなのかがわからないのですが、おそらく、Wi-Fiモデルであれば十分ということなのでしょう。少なくとも学校でWi-Fi環境が整備されていればWi-Fi+Cellularモデルである必要もないので、Wi-Fiモデルとしておきます。Wi-Fi+Cellularモデルでは価格もそれなりに高くなるという理由もあります。
まず、非常に気になるのはiOSのヴァージョンが全く書かれていないことです(同様のことはGoogle Chrome OSにも言えるのですが、このOSについてはよく知りません)。iPadの場合は購入時点で最新ヴァージョンのOSが入っていることが多いですし(細かいヴァージョンアップは購入直後に行う必要があります)、32GBでも十分に動くからでしょう。実際、第9世代になってから64GBモデルと256GBモデルが発売されるようになりましたが、第8世代までは32GBモデルと128GBモデルが発売されていました。
ただ、32GBモデルを使ってオンライン授業でZoomやWebexを起動し、さらにWord、Excel、PowerPoint、Pages、Numbers、Keynoteというようなアプリも使うとなるとどうでしょうか。アプリによってはかなりのギガ使用量になりますから、残り容量には十分な注意を払う必要があります。32GBモデルでは、教材の保存などを考慮すると力量不足になってしまうかもしれません。少し高額でも128GBモデルのほうが使い勝手がよいかもしれません(ちなみに、私が2018年5月12日から2022年1月28日まで使用していたiPad第6世代のストレージは128GBです)。
現行のiOSのヴァージョンが15.3であることと関係があるかもしれませんが、現行モデルであるiPad第9世代、iPad miniおよびiPad Airのストレージは64GBか256GBで、iPad Proであれば最低でも128GBです。5万円程度の価格帯ということからすれば、小中学校で使うのはiPad第9世代の64GBということになるでしょう(4万円でお釣りが来ます)。Wi-Fi接続さえ上手くいけば上記の①(Microsoft Windows 10 Pro)など問題にならないほどに活躍してくれるでしょう。なお、iPhone12およびiPhone13のストレージは64GB、128GB、256GBの三種類となっており、iPhone11のストレージは64GBと128GBの二種類、iPhone SEのストレージは64GBです。
先程記した「吉田製作所」の動画によると、上記の仕様ではMicrosoft Windows 10 Proなど全く使い物にならないそうです。とくにCPUがよくないようですし、メモリが4GBでは処理に時間がかかるようです。何故HomeではなくProなのかと疑問に思いますし、Windows機の場合、Macと異なって最初からあれこれのソフト(アプリ)が最初からインストールされていることが多いので、実際に使えるストレージの容量はそれほど多くないということになります。また、大規模、小規模の別を問わず、OSのヴァージョンアップをする必要がありますが、大規模なヴァージョンアップであればメモリもストレージも相当の量を使います。見極めが難しいとはいえ、最初から或る程度は大きな容量を見込んでおかないと、1年も経つか経たないかのうちにPCが使い物にならなくなります。私も大学院生時代から長らくWindowsを使っておりましたから、メモリ不足、ストレージ不足には何度も悩まされました。
文部科学省が示した仕様はあくまでも標準で「あくまでモデルであり、各自治体が各学校での活用を想定して仕様書を作成」となっていますが、PCに詳しくない人が担当して仕様書を作成したら大変なことになると思いました。私の経験からしても、オンライン授業を上手く進めるには、Wi-Fiや光回線の使用環境という問題があるとはいえ、それなりの性能を有するPCを使わなければ話になりません。
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