ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

JR西日本の美祢線が気になる

2023年07月01日 23時59分40秒 | 社会・経済

 昨日(2023年6月1日)からの大雨により、山口県の厚狭駅から長門市駅までの路線である美祢線が不通になっています。これは、四郎ヶ原駅と南大嶺駅との間で橋と線路が崩落した、などの被害を受けたためです。

 この路線は、2010年の7月にも大雨のために全線が不通となりました。この時は約1年2か月をかけて復旧しています。鉄道ファンなどの間ではよく知られている話ですが、美祢線は1980年代の国鉄改革の際に、旅客輸送は振るわないものの、石灰石輸送などの貨物運輸が活発であったために幹線として位置づけられました。2010年7月の被害の際には既に大規模な石灰石輸送が廃止されていたものの、貨物輸送は続けられていたので、復旧に結びついたのかもしれません(この辺りの事情を知らないので、御教示いただければ幸いです)。

 しかし、今回は事情が異なります。美祢線の貨物列車は2014年4月1日に廃止されており、旅客運送しかありません。同線ではキハ120形の単行、つまり1両編成で間に合う程度となっており、厚狭駅の時刻表を見ると美祢線の列車は1日9本、長門市駅の時刻表でも同様です。途中の駅は全て無人駅となっていますから、旅客輸送だけであれば地方交通線のレヴェルであることは推測できます。果たして、以前このブログでも参照した「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度)」(JR西日本)を見ると、美祢線の平均通過人員は1987年度に1741となっており(当時は営業されていた南大嶺駅から大嶺駅までの区間を含みます)、貨物運送がなければおそらく第2次特定地方交通線に指定されていたことでしょう。それから30年以上が経過して、同線の2018年度の平均通過人員は541にまで低下しています。また、同年度の旅客運輸収入は8000万円となっていますが、支出はわかりません。

 このような状況において大雨による路盤流出などの被害を受けて不通となってしまうと、存続か廃止かという話につながる可能性があります。実際に、JR九州の日田彦山線のうち、2017年の九州北部豪雨により被災した添田駅から夜明駅までの区間は、鉄道路線ではなくBRTとして復旧されることとなっています。また、同じくJR九州の肥薩線は、2020年7月の豪雨で大きな被害を受けたことにより、八代駅から吉松駅までの区間が不通となって現在に至っています。大雨などによる被害ということでは、JR北海道の根室本線のうち、富良野駅から新得駅までの区間が廃止されることとなっています。

 今回の美祢線の不通に話を戻すと、被害の詳しい状況が明らかになれば、復旧に必要な費用の概算が示されることでしょう。その上で、復旧を断念して廃止になるという可能性は低くないものと考えられます。

 これは、2018年4月1日に廃止された三江線の例があるためです。同線は、2013年8月24日に大雨のために全線が不通となり、2014年7月に全線で運転を再開しました。この際に10億円以上の費用がかけられています。しかし、収益の改善などがないまま、結局廃止されています。何のために大金をかけて復旧したのかがわからなくなった訳でして、美祢線についても同じ轍を踏むことになるのではないかという懸念も、JR西日本の中にはあるのではないか、と考えられるのです。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« EVはどうなのだろう? | トップ | 東急9000系9012F »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事