JRグループの旅客鉄道会社は6つあり、このうちの北海道、四国および九州は「三島会社」などとも言われます。いずれも本州に土台を置かず、そのためもあって経営基盤が脆弱であるとされ、車両の面などで特別な配慮を受けた会社です。
このうち、JR九州が2016年度に株式を上場する意向を示していることは、既に報じられています。そのための準備ということなのか、これから駅の無人化を大きく進めるようです。朝日新聞社が、昨日(1月17日)の12時付で「JR九州、最大100駅無人化へ 上場向け収支改善図る」(http://www.asahi.com/articles/ASH1J633BH1JTIPE02Z.html?iref=comtop_list_biz_n01)として報じています。
「三島会社」の中では最も早く新幹線が開通し、経営状態もよいように見えます。実際に、2004年度以降、営業黒字が続いています。しかし、これは副業または関連事業によるところが大きく、本業の鉄道事業は一年あたりで150億円ほどの赤字が続いています。新幹線、「ななつ星in九州」にばかり目が行くのですが、本当に目を向けなければならないのは地域輸送であり、ローカル線の現状です。たとえば九州横断特急は原則としてワンマン運転であり、2両で運行しています(私が大分市に住んでいた時に豊肥本線を走っていた特急「あそ」は原則として3両でした)。吉都線、日南線などの状況は、仮に1980年代の特定地方交通線選定基準のうち、旅客輸送密度を取り出して現在にそのまま当てはめれば第一次特定地方交通線に指定されるようなものとなっています。日南線は、終点の志布志で接続していた志布志線および大隅線が第二次特定地方交通線に指定されて廃止されたのに対して存続した訳ですが、旅客輸送密度は低く、除外要件に該当したために廃止を免れたのでした(肥薩線、吉都線も同様です)。仮に日南線の北郷~志布志が志布志線であったら(1963年までそうでした)、この区間も1980年代に廃止されていたでしょうか。
〔九州での第一次特定地方交通線は宮原線、妻線、香月線、勝田線、添田線、室木線、矢部線、甘木線および高森線で、最後の二つは第三セクターに転換して存続しているものの、その他の路線は廃止されています。〕
朝日新聞の記事でも触れられていますが、JR九州は駅の無人化を以前から進めていました。その結果、現在、566の駅のうち、281が無人駅となっています。大分県に住んでいたということで取り上げると、昨年、久大本線の古国府駅(大分市内)、豊肥本線の犬飼駅、日豊本線の豊後豊岡駅が無人化されています。また、大分県内ではないのですが、日豊本線の吉富駅も昨年に無人化されています。
JR九州は、今年から最大で100駅弱を無人駅にする方針を立てています。そのうち、今年の3月から4月に50駅を無人化するということです。今回は、福岡都市圏の駅も対象にしており、同社の全駅の実に半分以上が無人駅となる訳です。既に、同社は香椎線の12駅を今年3月のダイヤ改正時に無人化することを発表しています〔朝日新聞社が、昨年の12月22日19時38分付で「JR香椎線の12駅を無人化 来年3月のダイヤ改定時に」(http://www.asahi.com/articles/ASGDQ5K1ZGDQTIPE01D.html?iref=reca)として報じていました〕。
一応の基準は、一日あたりの利用客数が700人以下であるということです。首都圏や京阪神地区にお住まいの方は「少ない」と驚かれるかもしれません。しかし、大分駅の一日平均の利用客数が33000人台(2005年度)であり、これでも大分県内では一番多いのです。しかも、JR九州の営業エリアには、特急停車駅であっても一日あたりの利用客数が700人以下という駅がいくつか見当たります。
九州に限られた話でもないのですが、駅員がいる駅でも、実はその鉄道会社の従業員ではなく、関連会社の従業員が駅員であるというところは多いのです。これを業務委託駅と言います。JR九州の駅員配置駅でも業務委託駅は多く、むしろ直営駅(その鉄道会社の従業員が駅員であるところ)は少ないでしょう。再び大分県を例にとると、直営駅は大分駅の他、中津駅、柳ヶ浦駅、杵築駅、別府駅、臼杵駅、津久見駅、佐伯駅、日田駅、由布院駅、豊後竹田駅、三重町駅です。その他の駅は業務委託駅、簡易委託駅または無人駅です。
問題は業務委託駅と簡易委託駅、とくに前者です。JR九州が業務委託を進めてきたのは、人件費という問題があるためです。しかし、業務委託駅の駅員の高齢化という問題があります。さりとて、簡易委託駅とするのも困難な場合があります。地元の商店、観光協会、農協など、さらに自治体に切符販売などを委託する、というのが簡易委託駅なのですが、受託してくれる人・団体・法人があってこその話であり、簡単にはいかないのです。
直営駅でも一日あたりの利用客数が700人以下というところがあるようですが、すぐに無人化するようなことはないでしょう。運転業務、信号などの関係があるからです。そうなると、業務委託駅が無人化される可能性が高いでしょう。現に、先に2014年に無人化された駅の例としてあげたところは、すべて業務委託駅でした。機械的に基準を適用すれば、市町村の代表駅である、または特急の停車駅であるというようなところであっても無人化される可能性が高いでしょう。地元から反対が叫ばれてもおかしくなく、今後、どのようなことになるのか、注意していく必要があります。
JR九州が打ち出している赤字幅圧縮策は、駅の無人化のみではありません。今年3月のダイヤ改正時にJR東日本が新幹線や特急の一部で車内販売などを廃止することを発表していますが、JR九州も類似の改革をします。新幹線、JR九州の在来線を走る観光列車には客室乗務員を配置し続けますが、それら以外の特急列車については客室乗務員を廃止する、というのです(その多くは契約社員ではないかと思われます)。従って、多くの在来線特急では車内販売などがなくなることになります。
この他、みどりの窓口の削減も検討されているようです。
駅の無人化と言えば、南海高野線の美加の台駅が無人化され、大問題となったことが報じられました。今でも検索をかけるとこの話に関するページがいくつも出てきます。南海では、同じ時期に無人化された駅がいくつかありますし(難波駅の隣の今宮戎駅も無人化されました)、近鉄も駅の無人化を進めています。また、大手私鉄で無人駅がとくに多いのが名鉄です。様々な理由があるのですが、利用者にとっての利便性など、問題は残ります。