12月21日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、2023年9月4日~14日にカンボジアで実施した年次協議の結果を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN10か国と日本、中国、韓国による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。
カンボジアのGDP成長率については、2023年5.3%から2024年6.2%へと回復を強めると見ています。カンボジア経済は、観光業の回復、国内需要の伸び、縫製以外の製造業の堅調、外国直接投資の流入、インフラ投資等に支えられて引き続き好調を維持するとしています。他方、縫製業は欧米の需要減退を受けて弱含んでおり、不動産は供給過剰の状況で厳しい状況が続くとしています。
物価上昇率は、2023年前半には落ち着いていましたが、後半から上昇に転じ、2023年平均で2.6%、2024年は3.1%となると見ています。対外収支については、経常収支の赤字は対GDP比で2021年に40.4%、2022年25.7%まで拡大したものの、2023年2.6%、2024年3.1%と改善の方向にあるとしています。外貨準備は、2022年末で184億ドル(輸入の7.6か月分)と非常に安定的なレベルにあり問題ないと分析しています。財政収支は、新型コロナ対策等で赤字が拡大したものの、対GDP比で2021年8.5%から、2022年3.3%、2023年6.2%、2024年3.2%と落ち着いてくるものと見ています。
リスクとしては、カンボジアにとって重要な経済パートナーである中国の景気後退を最大の要因と見ています。また、縫製品の主要輸出先である欧米の景気後退も懸念しています。ロシアのウクライナ侵略等による国際的な資源価格の上昇もリスクとしています。また、不動産不況の金融業界への影響も挙げています。
今後の課題としては、新型コロナ対策としての貧困層への現金支援等の終了に伴い、社会保障の強化等が必要と指摘しました。また、インフラの拡充等による経済の多様化と競争力の強化も提言しています。不動産関係については、金融機関以外によるシャドーバンキングの取り締まりの強化も求めました。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、プノンペンのリバーサイド。AMROの発表より)
AMROの新聞発表(英文です)
https://amro-asia.org/cambodia-restoring-buffers-and-structural-reforms-key-to-a-strong-economic-recovery/
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カンボジアのGDP成長率については、2023年5.3%から2024年6.2%へと回復を強めると見ています。カンボジア経済は、観光業の回復、国内需要の伸び、縫製以外の製造業の堅調、外国直接投資の流入、インフラ投資等に支えられて引き続き好調を維持するとしています。他方、縫製業は欧米の需要減退を受けて弱含んでおり、不動産は供給過剰の状況で厳しい状況が続くとしています。
物価上昇率は、2023年前半には落ち着いていましたが、後半から上昇に転じ、2023年平均で2.6%、2024年は3.1%となると見ています。対外収支については、経常収支の赤字は対GDP比で2021年に40.4%、2022年25.7%まで拡大したものの、2023年2.6%、2024年3.1%と改善の方向にあるとしています。外貨準備は、2022年末で184億ドル(輸入の7.6か月分)と非常に安定的なレベルにあり問題ないと分析しています。財政収支は、新型コロナ対策等で赤字が拡大したものの、対GDP比で2021年8.5%から、2022年3.3%、2023年6.2%、2024年3.2%と落ち着いてくるものと見ています。
リスクとしては、カンボジアにとって重要な経済パートナーである中国の景気後退を最大の要因と見ています。また、縫製品の主要輸出先である欧米の景気後退も懸念しています。ロシアのウクライナ侵略等による国際的な資源価格の上昇もリスクとしています。また、不動産不況の金融業界への影響も挙げています。
今後の課題としては、新型コロナ対策としての貧困層への現金支援等の終了に伴い、社会保障の強化等が必要と指摘しました。また、インフラの拡充等による経済の多様化と競争力の強化も提言しています。不動産関係については、金融機関以外によるシャドーバンキングの取り締まりの強化も求めました。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、プノンペンのリバーサイド。AMROの発表より)
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