カンボジア経済

カンボジアの経済について、お堅い数字の話から、グルメ情報といったやわらかい話まで、ビジネス関係の方にお役に立つブログです

シェムリアップ新空港 開港式典は首相も参加して12月1日に

2023年10月05日 | 経済
 9月27日、カンボジア民間航空局(SSCA)は、シェムリアップ新空港の開港式典を12月1日に行うと発表しました。式典には、フン・マネット首相と中国の代表が参加するとしています。また、これに先立ち、10月16日から新空港をソフトオープンすると発表しました。同日に旧空港は業務を停止する模様です。このため、航空会社等は旧空港から新空港への引っ越しを行う必要があり、一部で混乱も見られるようです。
 シェムリアップ新空港は、シェムリアップ市街の東約60キロメートルに位置し、敷地面積約750ヘクタール、滑走路延長3600メートル、ターミナル面積8万平方メートル、旅客処理能力年間700万人、貨物取扱能力年間1万トンの計画です。契約期間55年間のBOT方式で建設されています。中国の雲南省投資控股集団(雲投集団)傘下のアンコール・インターナショナル・エアポート・インベストメントが工事を請け負っています。総工費は当初の約8億8000万ドル(約1310億円)から、11億ドル(1640億円)に膨らんでいるようです。新型コロナの影響もあり、工事は遅れていましたが、なんとか開港にこぎつけた模様です。
 現在のシェムリアップ空港は、シェムリアップ市街からすぐ近いというメリットがありますが、周囲にアンコール遺跡等があり、運用に様々な規制があります。そうした中で、かなり遠くとなりますが、大型機も発着可能な空港がコロナ明けと共に完成することは、新型コロナで深刻な打撃を受けてきたカンボジアの観光業界には朗報と言えます。きちんとした工事の完成と、稼働後の維持管理が重要な課題と見られますので、カンボジア政府の厳格な監視と指導が期待されます。
(写真は、プノンペンポスト紙より)


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AIIB カンボジアに融資 ADBと協調融資で

2023年10月04日 | 経済
 9月26日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank: AIIB)は、カンボジアに3300万ドルの借款と1000万ドルの贈与を供与する契約に調印したと発表しました。今回の借入金の使途は、カンボジアの家畜健康及びバリューチェーン・インフラ改善事業となっています。なお、この事業は、アジア開発銀行(ADB)との協調融資であり、ADBは6290万ドルの借款を供与する予定です。
 AIIBについては、中国共産党に支配されていると非難してカナダ人幹部が辞任したことを受け、カナダ政府は6月14日、AIIBとの取引を全面停止し、同行への中国共産党の影響力を調査すると発表しています。調査の結果によっては脱退する可能性もあることを示唆しているとのことです。
 AIIBは日米が主導する世界銀行やアジア開発銀行などに対抗する形で、2016年に中国主導で設立されました。2023年6月時点で世界92カ国・地域が加盟していますが、日本や米国は運営が不透明であること等を理由として加盟していません。当初は、日本もAIIBに加盟すべきだとの意見が野党や経済界からありましたが、今となっては加盟していなかったことは妥当であったとの意見が多数派となっているものと見られます。
 カンボジア(政府及び民間企業)は、これまでAIIBから6件、総額4億6000万ドルを借り入れています。親中派の国としては、貸付金額が伸び悩んでいるものと見られます。また、カンボジア政府の借入残高に占めるAIIBのシェアも、0.3%と微小です。
 中国の一帯一路政策や過剰な貸付により、いわゆる「債務の罠」に陥る国々もある中で、カンボジアは、日本や国際機関からの譲許的借入を活用することで債務の健全性を保っています。引き続き慎重な対外債務コントロールが継続されることが期待されます。
(写真は、プノンペンポスト紙より)

AIIBの発表(英文です)
https://www.aiib.org/en/news-events/news/2023/AIIB-Signs-Agreements-for-Cambodia-Cross-border-Livestock-Health-and-Value-chain-Infrastructure-Improvement-Project.html


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カンボジア中央銀行 為替市場に引き続き介入 ドル高に対応

2023年10月03日 | 経済
 9月18日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、今後4週間にわたり、毎週2回(水曜日と金曜日)に為替介入(ドル売り・リエル買い)を行うと金融機関に通知しました。NBCは、9月前半に合計5000万ドル規模の為替介入(ドル売り・リエル買い)を行いました。介入規模は、9月6日に1000万ドル、8日に1500万ドル、13日に1000万ドル、15日に1500万ドルとなっています。最近のドル高に対応して、自国通貨リエルの為替レート安定を目指しているものと見られます。NBCが為替市場に介入するのは、2021年以来2年ぶりとなります。
 リエルの対ドルレートは、年初の約4110リエル/ドルから2月末には約4040リエルまで上昇しましたが、その後は減価して8月末には4160リエル程度となっていました。9月29日には、今回の介入の効果が出たためか、4123リエルまで戻しています。
 リエルの減価は3%ほどであり、日本円や他通貨に比べれば大きくありません。しかし、リエルは信用力が強くないため、ドルと安定的なレートを維持することが、リエルの信用を維持するためには重要となっています。このため、これまで中央銀行では、リエルの対ドルレートを4000リエルから4200リエルの間で安定させるため、緩やかなドルペッグを行ってきています。
 ただ、リエルをドルにペッグさせている中で、今回の局面のように大幅なドル高となると、リエルも実力以上の評価となって、他通貨に対してリエル高となってしまい、輸出競争力に大きな影響を与える可能性があります。信用力の弱い自国通貨を守るためにはやむを得ない面もありますが、中央銀行としては難しい局面を迎えているものと見られます。
(写真は、クメールタイムズ紙より。イメージ)

カンボジア国立銀行のフェイスブック(クメール語です)
https://www.facebook.com/nationalbankofcambodiaofficial/posts/pfbid02pQaytJYo6bf5hbCyGFdANDHF3ffEkhiF52wWdGuqJMQ9NkfUGdUdEN8aWSZgH3P3l?_rdc=1&_rdr


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2024年の最低賃金 204ドルで決着

2023年10月02日 | 経済
 2024年1月1日から縫製業等に適用されるカンボジアの最低賃金は、204ドル/月で決着しました。現在は200ドルで、2.0%の上昇となります。カンボジアの最低賃金の上昇は、2012年61ドルから2013年80ドル(31.1%増)、2014年100ドル(25.0%増)、2015年128ドル(28.0%増)と急激なものがありましたが、労働諮問委員会で客観的基準を使用し始めた2016年は140ドル(9.4%増)、2017年153ドル(9.3%増)、2018年170ドル(11.1%増)、2019年182ドル(7.1%増)、2020年190ドル(4.4%増)、2021年192ドル(1.1%増)、2022年194ドル(1.0%増)、2023年200ドル(3.1%増)と上昇幅が落ち着いてきています。2024年の最低賃金は、世界経済の減速傾向の影響で経済に不透明感が広がっている中、上昇幅が抑え込まれたものと見られます。
 最低賃金は、政府、雇用者、労働組合の3者の代表51名が参加する労働諮問委員会で討議されてきました。9月28日の会議において投票が行われ、51票中46票が賛成した202ドルで合意し、労働大臣に答申されました。この結果を受けて、毎度おなじみの首相の鶴の一声で2ドル増額を加えることを決定し、最終的に204ドルで決着しました。なお、使用者側からの意見もあって、フン・セン前首相が始めた追加の金額は2019年までの慣例だった5ドルから、2020年は3ドルに、2021年以降は2ドルに縮減されています。
 内需振興のためにも、最低賃金の引き上げは必要不可欠ですが、急激な上昇は外国投資家の懸念となっていました。カンボジア政府では、最低賃金の検討に当って、労働生産性上昇率や物価上昇率等の客観的基準を2016年の最低賃金から使用し始めており、雇用者側も労働者側も納得感が高い決定方式が次第に定着しつつあります。
 2020年以降は、新型コロナの影響が大きく、工場の閉鎖や労働者の失業・一時帰休が大きな問題となっており、こうした情勢も反映したものと見られます。今年は、他通貨に比べてドル及びリエルが増価しており、輸出競争力を勘案すると賃金の上昇幅を抑える必要もありました。他方、2022年8月から2023年8月までの1年間の消費者物価上昇率は3.2%であるのに対し、最低賃金は2.0%しか上昇していません。カンボジア経済回復のための国内需要を喚起する観点からは、すくなくとも物価上昇に見合う実質賃金が確保できるような最低賃金の見直しが必要です。こうした様々な要因の間でバランスをとりつつ上昇幅を決定していくことが重要なものと見られます。



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メルマガ「週刊カンボジア経済ニュース」今週号は本日発行です

2023年10月02日 | 一般
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シアヌークビルの現状 廃墟と化す不動産 中国系の犯罪蔓延 イメージ回復が急務

2023年10月01日 | 社会・風土
 9月10日、シアヌークビルに出張する機会がありました。
 最近の重大な問題は、中国系犯罪集団によるものと見られる人身取引、強制労働等の犯罪の蔓延です。高給の仕事がある等の甘言に騙されて、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア等から、シアヌークビルに連れてこられて監禁され、特殊詐欺等の犯罪行為に無理矢理従事させられるといったケースの摘発が続いています。こうした犯罪集団は、銃器犯罪、ドラッグや売春といった犯罪も引き起こしており、その摘発が急務となっています。この問題は、カンボジアの国際的な評判を著しく傷つけており、徹底的な対策が望まれます。また、今年に入って、特殊詐欺等の犯罪を行っていた日本人グループが拘束され、日本に送還されて逮捕される事例も出ています。
 シアヌークビルと言えば「中国化」の代表例と言われてきました。新型コロナ以前は、中国人の不動産投資に支えられて、カジノやホテル、リゾートマンション等が次々に着工されて活況を示していました。また、多くの中国人が移住・訪問して、町は中国語だらけとなり、シアヌークビルは第二のマカオであるとも言われました。しかし、中国の海外投資規制やカンボジア側のオンラインカジノ規制に加えて、新型コロナの影響も大きく、多くの中国人が引き揚げていきました。今回の視察でも、建設が途中で止まった建物(カジノやホテル、リゾートマンション)を多数確認できました。最近の中国の大手不動産会社の破たんも、中国人の海外不動産投資に更にネガティブな影響を与えるものと見られます。今後、建設工事が止まっている不動産をどうするかも重大な課題となりつつあるものと見られます。
 他方、観光客誘致のための努力は続けられているようです。空港近辺から海岸を通って、オーチュティルビーチまで行くことができる片側3車線の道路が新設されており、途中には展望台も整備されています。昔はアクセスが悪くバックパッカーしかおらず、良い意味で閑散としていたオターズビーチは、海岸道路や浜辺の遊歩道が整備されて、明るいリゾート地となっています。また、以前は何もなかった北部のプレックトレンビーチも、整備が進められています。
(写真は、オターズビーチから望む高層ビル群。未完成のものが多く含まれています)

廃墟化している不動産開発が多数あります。



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