英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第72期名人戦 第2局 その2

2014-05-04 21:30:35 | 将棋
「その1」の続きです。


 封じ手の局面、候補手は①△1三角、②△9二角、③△7四角、④△3三銀。
 ①の△1三角が本命視されていたが、森内名人の封じ手は②の△9二角だった。
 本譜を進める前に、△1三角について少し。以下▲2八飛にA△9二角とB△5五銀が有力。
 A△9二角には▲5六銀でどうか。B△5五銀には▲5八銀△7四角(参考図1)が考えられる。

 この参考図1は後手の2枚の角と5五の銀がグングン先手陣に迫ってきており、封じ手前の▲2三歩が甘くなっているように思うが、この変化については感想戦でも『週刊将棋』にも触れられていない。(『将棋世界』に期待しよう)

 封じ手の△9二角には①▲4八金や②▲2八飛などが考えられたが、▲4八金は△1三角と打たれると飛車の引き方が難しい(飛車の引き場所によって△3九銀や△3八銀が生じる)。また、②▲2八飛には△5五銀が悩ましい。この形は迂闊に▲2二歩成とできない(△3八角成▲同飛△2二飛がひどい)。
 実戦は▲4八金打。駒損なので攻め駒不足の心配があるが、実際打たれてみると、一気に先手陣が引き締まった。
 ここで36分の考慮で△4五歩(第5図)

 この手は▲4五同歩と取らせれば、後に△3三桂と跳ねた時の桂の道が開けることになる。また、手抜きで▲2二歩成には、△3三銀▲2三飛成△2二飛の決戦を辞さないという手だ。
 ところが、66分後、堂々と▲4五同歩!……一番驚いた手だ。
 放置して、後に歩切れを解消しながら△4六歩と取り込まれるのは大きい。それなら、利かされたようだが、歩を補充しながら歩を4五に進める「出入りの得」が大きい。4五に桂を跳ねられる可能性が生じるが、4四に空間が生じたので先手も▲4四銀と打つ手が生じている。
 『相手の言い分を聞くが、その言い分は無理がありますよ』と咎める(逆用する)。突き捨てた歩を取って良ければ、これが一番いい。
 森内名人も▲4五同歩と取られて、後悔したそうだ。この△4五歩では、△7四角打や△3三銀が有力だった。しかし、この2手も難解ながらも先手が十分とのこと。

 実戦は▲4五同歩に△7四角打▲3九金に△3八銀! (△4七角成が予想されていた)

 鈍い音がしそうな銀打ち。
 重いハンマーパンチで、私が先手ならノックアウトだ。
 しかし、暴発だった。
 戻って、▲4五同歩に△4六銀が勝負手だった。以下▲5八銀△3三桂▲2二歩成△3八角成▲同金△4五桂▲2三飛成△3五角▲3九角△2八歩▲同竜△5六金▲4八金(変化図2)。

 凄い図だが、先手が凌いでいるとのこと。

 実戦は第6図以下▲3八同金直△同角成▲同金△同角成▲4四銀△3三金▲同銀不成△同桂▲4四銀△4七馬▲5三銀成△6九銀▲7九銀△6五銀▲6四飛△7六銀(第7図)と進む。

 先の△4五歩による4四の空間に銀を打つ展開になった。
 森内名人も△6九銀~△6五銀と迫るが、羽生三冠は▲7九銀といったん受けてから▲6四飛が間合いを読み切った指し手。
 △7六銀(第7図)では、この銀を抜く手もあるが、詰みがあるなら詰ませたい。
 もちろん、プロならこの局面になれば詰ますことができるだろう。
「最初は▲4一金を読んでいて、なかなか詰まない」は局後の感想戦での羽生三冠の言葉。
 しかし、どの段階で詰みを読んでいたのだろうか。図の1手前の▲6四飛の時は当然として、おそらく、△4七馬に▲5三銀成と攻め合いを決めた時だろう。
 この段階で詰みを読み切るのは凄い。羽生三冠も言っていたが▲4一金を読んでしまい、なかなか詰まない。読み切れず、△4七馬に▲5八金と受けに回る棋士も多いのではないだろうか。


 再掲載7図の局面となれば、もちろん羽生三冠は詰まして収束。
 でも、▲4二角△同飛▲同成銀△同玉▲4四飛以下の詰みは見えにくいよね。(大盤で考えにくいこともあるが、BS中継の解説の山崎七段も苦労していた)

 結果的に羽生三冠の快勝となったが、森内名人の僅かなミスを咎め切った羽生三冠の指し手の正確さを讃えるべきであろう。
 それにしても、『これで勝てるのなら一番いい』という▲4五同歩は森内名人好みの手で、露骨に打ち込んだ△3八銀は羽生三冠好みの手ではないのかな?
コメント (6)
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