英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

NHK杯将棋トーナメント 松尾七段×丸山九段戦 その1

2014-11-19 20:37:57 | 将棋
 松尾七段の不出来な将棋だった。
 序盤の駆け引きと、パズル的な局面があり、書き留めるという意味はあるが、実は記事の後半部分がこの記事の趣旨である。この部分だけを書けばいいのだが、それだときつい記事になってしまうので、将棋のことを書いて和らげるという小細工である。

 松尾七段は丸山九段に3勝9敗(直近は1勝4敗)。丸山九段の強さを考えれば妥当と言えるかもしれないが、松尾七段も実力からすると、若干、星が偏っている気がする。
 解説の高橋九段の弁を借りると
「この二人の対戦では、(勝敗が)ちょっと離れているなという印象があります。実力が拮抗していますので。
 最近の対局では、ほとんど角換わりなんです。しかも、丸山九段の後手番。
 今日も(丸山九段の後手なので)、そんなふうになるかと思ったんですが。
 (一手損角換わりの)▲7六歩△3四歩▲2六歩に△8八角成と来るので、ここんとこ、松尾九段痛い目に遭居続けているんですよね。
 なので、今回は気分を変えてという所があったかなあと」

 そういう意図があったのか、最近はやりの指し方を試してみたかったかは分からないが、初手▲5六歩。
 先手番でのゴキゲン中飛車志向の手だが、この手に対しては飛車を振るのが得とされている。
 「相振り飛車戦においては中飛車は少し損である」というのが定説だからだ。
 丸山九段は居飛車党だが、躊躇なく飛車を振った。



 これに対し、先手は5筋に飛車を振るのは振るのだが、玉を左に囲い、居飛車対振り飛車模様の将棋に持ち込み、さらに穴熊に囲うのが“面白い”指し方とみられている。これで有利というわけではないが、飛車の位置の違いはあるとは言え、居飛車穴熊の変形と考えれば、自分の主張を通したとも考えられるからだ。
 案の定、松尾七段は玉を左に移動させた。対する丸山九段の指し手もよどみがない。研究充分なのかもしれない。


 局面は、穴熊に囲われる前に、3筋の交換に動く。2六、4六に歩を突いてあるので、何となく先手陣に隙がありそう。両方の歩を守るには▲3七銀しかないが、この形は2七と4七に空間が生じるのでやや不本意な銀の位置である。感覚的には▲4七に上がりたい。
 解説の高橋九段も「2七、4七の空間が気になるのと、3七の進路となるべき2六と4六に歩があるのも不満。本来は4七に銀が上がりたいが、△2六飛と歩を取られてしまう」(言葉の前後はありますが、こういう旨の解説をしていました)と。
 しかし、私は意地でも▲4七銀と上がりたい。△2六飛と歩を取られても、▲2八歩と謝っておけば、後手の飛車は中段の歩越しなので窮屈なので、うまくいけば飛車をいじめて有利に持って行ける(失敗すると無残になりそう)
 感想戦では、丸山九段もこの順を危惧していた。
 ▲4七銀△2六飛▲2八歩(変化図1)


 確かに難しい。
 丸山九段はこの局面になって考えてみて、まずければ△2五飛▲3六銀△2五飛▲3六銀…の千日手に持ち込むつもりだったと。
 ただ、△2五飛には▲3八飛もあるかもしれない。これに対し△3七歩なら▲5八飛と戻しておいて、△3五飛に▲3六歩と治めておき、▲3七桂と歩を取り除く。
 成否はともかく、考える価値はある変化だ。しかし、松尾七段は一瞬も考えなかったそうで、この局面は意図したモノではないのが分かる。さらに、予定外の進行だったとしても、歩を取られるマイナスはあるが本来指したいはずの▲4七銀が浮かばなかったというのは、この日は調子が良くなかったと言わざるを得ない。

 第2図で▲3七銀と上がり、△3四飛▲3六歩と松尾七段は局面を治めようとしたが、丸山九段は△5四歩▲同歩△7七角成▲同桂△4七角と追及を緩めない。


 仕方ない▲2八飛△5四飛▲2二角△3三桂▲1一角成△5七歩▲5九歩△5六角成と丸山九段は中央を制圧。その代り、先手の松尾七段は香得でバランスを取る。
 途中の▲5九歩では▲5九香と打った方が反発力もあった。底歩は固いが、5筋に歩が立たないのは攻撃の幅が狭くなる。他の筋はともかく、早い段階で5筋に底歩を打ってしまうと、後々、苦労することが多い。

 さて、第4図以下、▲6八銀△7四歩▲6六歩△2三馬と進む。


 第5図の△2三馬は、▲6七銀と上がられた時に予め避けておき、馬筋を5六~7八に睨みを利かしておき、先手の桂頭を攻める狙いだと思われたが……【続く】
コメント
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