英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒 season14』の低視聴率に関する記事についての反論

2015-12-18 23:34:48 | ドラマ・映画
 『相棒 season14』の視聴率が低調で、その原因があれこれ言われている。
 批評記事目当てで検索していたわけではないが、目についたのがこの記事。

『「相棒」8年ぶり低視聴率は反町の「法務省出向」が全く活かされてないから!?』『Asagei plus』
 記事を書いたのは、白根麻子という記者。

「12月9日放送の「相棒season14」(テレビ朝日)第8話で、視聴率が12.9%と低迷した。相棒シリーズで視聴率が12%台まで落ち込んだのは、「相棒6」の第7話で12.5%を記録して以来、実に8年ぶり」

 この事象についての考察記事だが、ある芸能ライター(氏名は不明)の言葉を取り上げている(下記)
「前回から2%も数字を下げた第8話ですが、強力な裏番組があったわけでもなく、単に視聴者が離れたと言えそうです。この影響で平均視聴率も15.5%と低迷。それでも立派な数字ですが、『相棒』はここ2シリーズ連続で平均視聴率17.4%の超優良コンテンツですし、今作の低迷ぶりが目につきます」

 一見、事実を基にした考察に思える。第8話の放送時に強力な裏番組がなく、第7話の14.9%から2%も下がったのは、「視聴者が離れた」ことを示していると言及。
 さらに、「12.9%の数値の影響で平均視聴率も15.5%と低迷」とも言及。

 これについて検証すると、7話までの平均視聴率・15.87% ⇒ 15.5%(8話を含めた平均視聴率)で、0.37%の降下である。これが急降下かどうかは主観の問題だが、この2シーズンの平均視聴率17.4%と比較すると15.87も15.5%も大差がないように思える。
 そもそも、この主張のおかしな点は、「第8話の影響で平均視聴率が低迷」というのなら、この第14シーズンは問題がないことになる。ところが、「今作の低迷ぶりが目につく」と言及している。(“今作”が第8話を刺している可能性もあるが、文脈からすると“14シーズン”を指すと考えられる)

 さらに、「強力な裏番組がないこと」と「第8話の低視聴率」から、「視聴者が離れた」と結論付けている。
 しかし、これは早計で、第8話の低視聴率の原因として、①「前話が面白くなかった」、②「今シリーズは面白くないと判断して、見切り時と視聴者が判断した」が考えられる。(②は第9話が15.0%と回復しているので、根拠としては薄い)
 なお、この論理はkiriyさんも、相棒14「第9話 秘密の家」の記事で論及している。(先を越されてしまったが、私も常々、視聴率に齟齬があると感じている)


 白根麻子氏はさらに、
「ネットでは新たに主人公・水谷豊の相棒となった反町隆史を槍玉にあげる意見が多い。見た目は格好いいものの、どうしてもヤンキーっぽさが抜けず、相棒にはそぐわないという声もある」
 と、巷の声を紹介するが、「前出のライターは、反町以上の戦犯がいると指摘するのである」と、再び芸能ライターの言葉を引用。

「今作は脚本がダメですね。警察ものとしての面白さや緻密さに欠けています。第8話は車椅子の漫画家を巡る話でしたが、今どきアシスタントなしで手描きの漫画家なんていませんよ。反町の使い方にしても、法務省から出向してきた官僚という設定がまったく活かされていないのですから、むしろ可哀想なものです」


 ………………まず気になるのは、ここまで白根麻子氏の意見が全くないこと。芸能ライターの言葉と、ネットの声と数値(視聴率)だけ。
★芸能ライターの言葉への反論
 「今どきアシスタントなしで手描きの漫画家なんていませんよ」……現代の状況にはマッチしていないかもしれないが、第8話の漫画家・咲良の天才性のひとつとして「すべてひとりで描き上げる」ことがあるとしており、この点を取り上げて、「脚本がダメ」と結論付けるのは乱暴。
 脚本としてダメというのは、第7話の「死んでしまった姉の人格が発生し、長年二重生活をしていた」「生存不明の父親と歳の離れた弟の存在」のご都合主義な設定や、「娘・幸子の遺体を竹藪に埋めてしまい、妹に生じた幸子の人格を認め、本当の幸子はないモノとした」という、理解し難い母親の行動ではないだろうか?

 また、冠城(反町隆史)については、「したたか」で「軟派」で「ひょうきん」で捉えどころのないキャラであるが、したたかさはともかく、ひょうきんなおどけ振りには魅力を感じない。
 それに、法務省の官僚という設定を活かす云々より、反町が出向してきた目的がはっきりせず、今のところ“暇つぶし”。右京と行動を共にする理由もはっきりしない。
 つまり、冠城がどういう意思で右京と行動を共にしているのか示されず、冠城の過去も明かさず、正義感などの人生観の表現も薄い。つまり、冠城の意志がほとんど感じられない。これでは、魅力を感じる訳がないのである。


 そして、ようやく、白根麻子氏の意見らしきものが示される。
「そんな脚本のマズさは第7話でも露呈していた。双子の姉が5歳の時、風呂で妹を溺死させたことについて、「殺人は時効」と説明していたのである。だが、5歳児の行為を殺人として扱うことはあり得ず、事故として処理されるはず。これこそ法務省官僚の反町が指摘すべき点なのだが、脚本家にはそういった配慮もなかったようだ」

 そうなのかもしれないが、ストーリーの核とは外れた末端をつついて悦に入っているだけのように感じる。
 そして、また引用。
「ただ、今シリーズの脚本家はこれまでのシリーズでも活躍してきた人ばかり。決して相棒テイストのわからない人が参入してきたわけではありません。だからこそ余計に不思議なんですよ」(テレビ誌ライター)

 まず、ここ数シーズンは古参の脚本家の割合が減ってきている。
 特に「今シリーズの脚本家はこれまでのシリーズでも活躍してきた人ばかり」とい指摘には疑問を感じる。初期よりずっと携わってきている輿水泰弘氏は第1話と第7話を担当しているが、私は相当出来が悪かったと感じている。

 私の独善的考察だが、古参の脚本家たちは疲弊してきており、新規参入の脚本家は育ちすぎた“相棒世界”をこなし切れていない。
 ここ数シーズンは、事件の展開、登場人物の心情・行動などに不合理さや不可解さが目立つようになってきている。それでも、視聴率が取れていたのは、惰性で視聴しているだけである。“ダークナイトという暴発事故”があっても、『相棒』を信じて、惰性で視聴しているのだ。
 相棒の再放送を観ることが多い。一度、あるいは数度見ていて筋を覚えていても、過去の作品の方が面白い。

 「何を偉そうに語っているんだ!」という声が聞こえてきそうだが、初期からずっと視聴してきており、さらに、“シーズン10”からは毎話レビューを書くようになってからは、楽しむだけでなく、記事を書くために事細かに観るようになった。
 1度目はドラマを楽しむために観て、記事を書くときは時々再生を止めて、更に、気になる部分を確認……。この私に免じて、偉そうに語らせてほしい。もう一度言おう。

 最近の相棒は面白くない!


白根麻子氏は、記事を下記のようにまとめている。
「ここに来て露呈しつつある脚本のマズさ。この謎こそぜひ、水谷が演じる右京に解いてもらいたいものだ」

 「露呈しつつある脚本のマズさ」は同意。(でも、なぜ「マズさ」と片仮名なんだ?)
 しかし、白根氏は自分の意見をほとんど言っていない。右京に語りかける前に、あなたに言いたい。
「引用ばかりしないで、自分の考察を述べよ!」
コメント (6)
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