高浜原発3・4号機は、今年4月に福井地裁が運転差し止めを命じる仮処分が下されていたが、その仮処分が24日に取り消され、再稼働に向けて準備が始められた。その司法判断については、余裕があれば「その2」として取り上げたいが、まず、その2日前の西川福井県知事が再稼働に同意した件について考える。
西川知事の判断の過程を検証する前に、同意したタイミングについて考えたい。
司法判断が下される直前の2日前に同意判断が為されたことに非常に大きな疑問を感じる。知事が言うように「すべての条件を満たした」として同意の判断を下したわけだが、とても“条件を満たした”と言える状況でない。司法判断が為される前に、強引に同意判断を表明したように思われる。
このタイミングに関して、勘ぐって考えると、
1.司法判断が出された後で、知事が同意の可否を下す場合(特に、差し止めの仮処分が取り消された場合)、知事の決定が最終判断になる。(本来この手順であるべき)
西川知事は、その判断の責任から逃れたのではないだろうか?
2.西川知事の同意が表明されれば、≪知事が同意したのなら≫と、司法は差し止めの仮処分の取り消しを下しやすくなる。
それに、“安全基準が適正かどうか”仮処分取り消しの論点で、総合的な原発稼働の是非という最終判断の趣きも小さい。
西川知事は司法判断が出る前に同意表明したことについて「理由はない。前か後かにこだわる性質のものではない」と述べたらしいが、最終判断を下すのは知事の責任であるので、当然こだわるべき性質の事案である。それに、別の意味で、こだわって、直前に判断を表明したとしか思えない。
さて、西川知事の提示していた再稼働の条件は、
以下は『朝日新聞デジタル』の
「高浜原発再稼働、福井知事が同意“すべて条件満たした”」(2015年12月22日14時46分 堀川敬部氏)
を参考、引用しています。
①原発への国民理解の促進
②2030年度の電源構成比率の明確化
③使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外立地に向けた国の積極的関与
④事故制圧態勢の強化
⑤地域経済と地元雇用への対応
注!福井、京都、滋賀の3府県や国との広域避難計画に基づく訓練が実施されないまま再稼働に同意。これについては「再稼働の条件ではない」と述べたが、国や府県と今後、実施について協議する意向を示した。
これらに対する、堀川氏の分析
政府は7月に原発を「20~22%」とする電源構成比率を決定し、10月には使用済み核燃料対策の「アクションプラン」を発表。関電も20年ごろに福井県外での中間貯蔵施設の建設場所を決め、30年ごろの操業を目指す計画を策定した。西川知事が最も重視してきた「国民理解の促進」も、安倍晋三首相が今月18日の原子力防災会議の場で「全国各地で国民理解のための説明会を行う」と明言。原発の40年超運転や廃炉、高速増殖原型炉「もんじゅ」の存廃など、福井県が抱える諸課題にも「国が責任を持って総合的な対策を進める」と約束した。知事は条件をすべて満たしたと判断した。
一方、高浜3、4号機の重大事故時に避難対象となる半径30キロ圏には福井、京都、滋賀の3府県が入り、約18万人が暮らす。原子力防災会議で広域避難計画は決まったが、避難手段の確保、経路となる道路の整備、交通渋滞対策などの課題が残されている。
高浜3、4号機は2月に原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格。現在、新たに設置された設備の検査が進んでいる。高浜町議会は3月に、高浜町の野瀬豊町長は今月3日に、県議会は17日に再稼働に同意していた。(以上、堀川氏記事)
【私見】(『日刊 県民福井』の記事を参考にしています)
①原発への国民理解の促進
ここで言う「国民」とは、「一般的全国民」を示ししているようだ。これまで西川知事は「国民理解が必要というのは地元というより、それ以外の消費地」という認識を示してきた。
“消費地”という言の裏には、「福井県が犠牲になって危険な仕事(原子力発電)を果たしてきた。それを踏まえたら“原子力反対”という言葉は容易に掲げられないはずだ」という意識が感じられる。
そもそも、「国民の理解」が得られたとしても、原発の再稼働に同意する理由にはならない。周囲がその行為を認めても、その善悪を判断するのは本人でなければならない。理解不能な西川知事の論理である。
では、地元の理解(地元の同意)はどこに行ったのだろうか?
これまで「地元の同意」=「立地自治体と県の同意」とされていて、高浜原発の再稼働に関しては、高浜町議会は3月20日に再稼働に同意の決議、高浜町長は12月3日に同意を表明、県議会は12月17日に同意を決議している。
町議会の決議から町長の同意表明まで間が空いたのは、地元産業振興への後押し、事故が起きた際の安全対策、広域避難体制の確立などの国の確約を待っていたためと思われる。地域振興の為の駆け引きとも思われるが、“同意”という決断をするには、地元住民が納得できる材料が欲しかったのだろう。
とにかく、“地元の同意”の手続きとしては、県知事の同意を残すのみとなっていた。
しかし、“地元”と言えるのは高浜町や福井県だけなのだろうか?
原発から半径30キロ圏内の自治体には避難計画の策定が求められているように、半径30㎞避難(事故の影響)の目安とされている。
「京都府舞鶴市は、高浜原発からはその圏内にあるが、舞鶴市の同意は必要ないのであろうか?」と書こうとしたら、舞鶴市が再稼働の容認(市長、市議会とも)したらしい。理由として「容認の理由としては、原発の必要性を理解したことに加え、原発の安全対策や避難計画の整備、住民理解が一定程度進んだ」ことを挙げている。そう言えば、林幹雄経済産業相は「舞鶴市長などの理解を得るべく動いている」と述べていたっけ。
ただ、容認と「同意(権)」は異なり、立地市町村や県以外は、原発稼働についての拒否権はない。
原発事故の被害(放射線)は市町村の区別をつけないというのに、おかしな話だ。
それに、議会や町長、知事の決定だけで、「地元の同意」と言えるのだろうか?
西川知事は、町議会、町長の同意がされたことで、「知事の同意以外の手続きは済んでいる」と考えているようだが、地元住民、福井県民の同意は関係ないと考えているのだろうか?
地元新聞紙のアンケート調査によると、福井県民どころか、高浜町でも反対意見の方が多いと報じている。西川知事は県民の声を聞こうとしない(聞いた結果が好ましくないとわかっている)し、県民に向けての説明をしたこともない。
②2030年度の電源構成比率の明確化
原発稼働の理由が欲しいだけ。
しかし、原発に依存しなければならない比率を算出したモノではなく、国がこういう比率で行きたいと計画しているだけで、原発稼働の何の理由にはなっていない。
③使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外立地に向けた国の積極的関与
原発稼働の大きな課題、いや“非常に大きな課題”に使用済み核燃料の処分がある。この処理の道筋が立っていないのが現状で、原発稼働して老朽化が進めば、“核のゴミ”と言うとんでもない厄介なお荷物を背負うことになる。
西川知事の持論として、先にも書いたが「福井県は原子力発電のリスクを追って電力を消費地に供給している。なので、そのごみの処理まで福井県が負うことはない」と言うような旨を、書く処理施設についての各県知事のアンケートで答えている。
そんな考えを公にしたら、もし、福井県の原発が事故を起こした時、誰も助けてくれないぞ。
そもそも、原発稼働で莫大な補助金を得ている地元自治体(敦賀市、高浜町、大飯町、美浜町)なので、犠牲になっているという考えは成り立たない。
それより、わずかの補償金しか得ていない近隣市町村は、リスクだけを背負わされただけで、迷惑この上ないのである。
使用済み核燃料の処理や事故対策を国や電力会社の仕事と思わず、有事の際の費用として補助金をプールしておくべきなのではないだろうか?
④事故制圧態勢の強化
西川知事は、原発に関する福井県が抱える諸課題にも「国が責任を持って総合的な対策を進める」という約束を得られたことで胸を張っている。
また、「発電所の安全確保は事業者の責務で、事業者の規制は国に責任がある。国や事業者を厳格に監視することで、県としての責務を果たしたい」と発言しているが、県がもっと責任を持って事業者を監督してほしいものである。
⑤地域経済と地元雇用への対応
原発関連産業による地域振興で、原発依存度が非常に大きい現状。≪原発はない方が良いのは分かっているが、原発に頼らざるを得ない≫というのが地元住民の本音。
理想論になるが、原発以外の産業の振興、あるいは、原発以外の太陽光、風力、潮力発電の開発に取り組んでもいいのではないだろうか(実用性は高くないが)
間近な潤いより、使用済み核燃料の処理問題、事故が起きた際の重篤な被害など、未来を見据えて考えてほしい。
西川知事の判断の過程を検証する前に、同意したタイミングについて考えたい。
司法判断が下される直前の2日前に同意判断が為されたことに非常に大きな疑問を感じる。知事が言うように「すべての条件を満たした」として同意の判断を下したわけだが、とても“条件を満たした”と言える状況でない。司法判断が為される前に、強引に同意判断を表明したように思われる。
このタイミングに関して、勘ぐって考えると、
1.司法判断が出された後で、知事が同意の可否を下す場合(特に、差し止めの仮処分が取り消された場合)、知事の決定が最終判断になる。(本来この手順であるべき)
西川知事は、その判断の責任から逃れたのではないだろうか?
2.西川知事の同意が表明されれば、≪知事が同意したのなら≫と、司法は差し止めの仮処分の取り消しを下しやすくなる。
それに、“安全基準が適正かどうか”仮処分取り消しの論点で、総合的な原発稼働の是非という最終判断の趣きも小さい。
西川知事は司法判断が出る前に同意表明したことについて「理由はない。前か後かにこだわる性質のものではない」と述べたらしいが、最終判断を下すのは知事の責任であるので、当然こだわるべき性質の事案である。それに、別の意味で、こだわって、直前に判断を表明したとしか思えない。
さて、西川知事の提示していた再稼働の条件は、
以下は『朝日新聞デジタル』の
「高浜原発再稼働、福井知事が同意“すべて条件満たした”」(2015年12月22日14時46分 堀川敬部氏)
を参考、引用しています。
①原発への国民理解の促進
②2030年度の電源構成比率の明確化
③使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外立地に向けた国の積極的関与
④事故制圧態勢の強化
⑤地域経済と地元雇用への対応
注!福井、京都、滋賀の3府県や国との広域避難計画に基づく訓練が実施されないまま再稼働に同意。これについては「再稼働の条件ではない」と述べたが、国や府県と今後、実施について協議する意向を示した。
これらに対する、堀川氏の分析
政府は7月に原発を「20~22%」とする電源構成比率を決定し、10月には使用済み核燃料対策の「アクションプラン」を発表。関電も20年ごろに福井県外での中間貯蔵施設の建設場所を決め、30年ごろの操業を目指す計画を策定した。西川知事が最も重視してきた「国民理解の促進」も、安倍晋三首相が今月18日の原子力防災会議の場で「全国各地で国民理解のための説明会を行う」と明言。原発の40年超運転や廃炉、高速増殖原型炉「もんじゅ」の存廃など、福井県が抱える諸課題にも「国が責任を持って総合的な対策を進める」と約束した。知事は条件をすべて満たしたと判断した。
一方、高浜3、4号機の重大事故時に避難対象となる半径30キロ圏には福井、京都、滋賀の3府県が入り、約18万人が暮らす。原子力防災会議で広域避難計画は決まったが、避難手段の確保、経路となる道路の整備、交通渋滞対策などの課題が残されている。
高浜3、4号機は2月に原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格。現在、新たに設置された設備の検査が進んでいる。高浜町議会は3月に、高浜町の野瀬豊町長は今月3日に、県議会は17日に再稼働に同意していた。(以上、堀川氏記事)
【私見】(『日刊 県民福井』の記事を参考にしています)
①原発への国民理解の促進
ここで言う「国民」とは、「一般的全国民」を示ししているようだ。これまで西川知事は「国民理解が必要というのは地元というより、それ以外の消費地」という認識を示してきた。
“消費地”という言の裏には、「福井県が犠牲になって危険な仕事(原子力発電)を果たしてきた。それを踏まえたら“原子力反対”という言葉は容易に掲げられないはずだ」という意識が感じられる。
そもそも、「国民の理解」が得られたとしても、原発の再稼働に同意する理由にはならない。周囲がその行為を認めても、その善悪を判断するのは本人でなければならない。理解不能な西川知事の論理である。
では、地元の理解(地元の同意)はどこに行ったのだろうか?
これまで「地元の同意」=「立地自治体と県の同意」とされていて、高浜原発の再稼働に関しては、高浜町議会は3月20日に再稼働に同意の決議、高浜町長は12月3日に同意を表明、県議会は12月17日に同意を決議している。
町議会の決議から町長の同意表明まで間が空いたのは、地元産業振興への後押し、事故が起きた際の安全対策、広域避難体制の確立などの国の確約を待っていたためと思われる。地域振興の為の駆け引きとも思われるが、“同意”という決断をするには、地元住民が納得できる材料が欲しかったのだろう。
とにかく、“地元の同意”の手続きとしては、県知事の同意を残すのみとなっていた。
しかし、“地元”と言えるのは高浜町や福井県だけなのだろうか?
原発から半径30キロ圏内の自治体には避難計画の策定が求められているように、半径30㎞避難(事故の影響)の目安とされている。
「京都府舞鶴市は、高浜原発からはその圏内にあるが、舞鶴市の同意は必要ないのであろうか?」と書こうとしたら、舞鶴市が再稼働の容認(市長、市議会とも)したらしい。理由として「容認の理由としては、原発の必要性を理解したことに加え、原発の安全対策や避難計画の整備、住民理解が一定程度進んだ」ことを挙げている。そう言えば、林幹雄経済産業相は「舞鶴市長などの理解を得るべく動いている」と述べていたっけ。
ただ、容認と「同意(権)」は異なり、立地市町村や県以外は、原発稼働についての拒否権はない。
原発事故の被害(放射線)は市町村の区別をつけないというのに、おかしな話だ。
それに、議会や町長、知事の決定だけで、「地元の同意」と言えるのだろうか?
西川知事は、町議会、町長の同意がされたことで、「知事の同意以外の手続きは済んでいる」と考えているようだが、地元住民、福井県民の同意は関係ないと考えているのだろうか?
地元新聞紙のアンケート調査によると、福井県民どころか、高浜町でも反対意見の方が多いと報じている。西川知事は県民の声を聞こうとしない(聞いた結果が好ましくないとわかっている)し、県民に向けての説明をしたこともない。
②2030年度の電源構成比率の明確化
原発稼働の理由が欲しいだけ。
しかし、原発に依存しなければならない比率を算出したモノではなく、国がこういう比率で行きたいと計画しているだけで、原発稼働の何の理由にはなっていない。
③使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外立地に向けた国の積極的関与
原発稼働の大きな課題、いや“非常に大きな課題”に使用済み核燃料の処分がある。この処理の道筋が立っていないのが現状で、原発稼働して老朽化が進めば、“核のゴミ”と言うとんでもない厄介なお荷物を背負うことになる。
西川知事の持論として、先にも書いたが「福井県は原子力発電のリスクを追って電力を消費地に供給している。なので、そのごみの処理まで福井県が負うことはない」と言うような旨を、書く処理施設についての各県知事のアンケートで答えている。
そんな考えを公にしたら、もし、福井県の原発が事故を起こした時、誰も助けてくれないぞ。
そもそも、原発稼働で莫大な補助金を得ている地元自治体(敦賀市、高浜町、大飯町、美浜町)なので、犠牲になっているという考えは成り立たない。
それより、わずかの補償金しか得ていない近隣市町村は、リスクだけを背負わされただけで、迷惑この上ないのである。
使用済み核燃料の処理や事故対策を国や電力会社の仕事と思わず、有事の際の費用として補助金をプールしておくべきなのではないだろうか?
④事故制圧態勢の強化
西川知事は、原発に関する福井県が抱える諸課題にも「国が責任を持って総合的な対策を進める」という約束を得られたことで胸を張っている。
また、「発電所の安全確保は事業者の責務で、事業者の規制は国に責任がある。国や事業者を厳格に監視することで、県としての責務を果たしたい」と発言しているが、県がもっと責任を持って事業者を監督してほしいものである。
⑤地域経済と地元雇用への対応
原発関連産業による地域振興で、原発依存度が非常に大きい現状。≪原発はない方が良いのは分かっているが、原発に頼らざるを得ない≫というのが地元住民の本音。
理想論になるが、原発以外の産業の振興、あるいは、原発以外の太陽光、風力、潮力発電の開発に取り組んでもいいのではないだろうか(実用性は高くないが)
間近な潤いより、使用済み核燃料の処理問題、事故が起きた際の重篤な被害など、未来を見据えて考えてほしい。