英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

なんで負けた?(2018竜王戦第4局)【追記あり】

2018-11-25 22:09:30 | 将棋
難解な中盤を精密な指し手で必勝近くになったはず……


 将棋は今期竜王戦で4度目(全局とも)の角換わり将棋。
 複雑で微妙な玉や金の動きで互いに間合いを計っていたが、羽生竜王が△4四歩と突くのを待っていたのか、8分の考慮で▲4五歩と開戦。
 これに対し羽生竜王は、先手の攻めを斜にかわす応手で、2筋を屈服する代わりに3筋に成銀を作り対抗。ならばと、広瀬八段が7筋の桂頭を攻め桂得を確保した(第1図……封じ手局面)。


 後手は桂損だが、先手は歩切れと玉が成銀に近いという玉の不安さがあり、バランスが取れているらしい。


 その後も4五の地点を中心とする25升のスクエアで複雑な応酬(角打ちや銀の動き)があり、△4六角と角を打ったのが第2図。

 打ち込まれた6二の銀が後手陣の脅威となっており、5三への飛車の成り込みと、7三の金取りにもなっている。その両狙いを防ぐ△6三金は▲7二角の追撃がある。
 後手ピンチかと思われたが、△4六角(王手)が巧妙だった。
 5七に合駒をすると飛車利きが消え、▲6八玉とかわすのは、飛車利きを遮って打つ△5五桂がピッタリ。なので▲5七角と打ち、4六の角を消そうとしたが、△同角成▲同飛に再度△4六角が飛車の活躍を許してくれない。


 ならばと広瀬八段は▲5三銀不成として△3三玉に▲6二角と絡みつくが、

△5五銀が中央を押さえる好手で後手の優位がはっきりしたように思う。


 第5図以下、▲7八玉△5七角成▲同金寄△6三金▲5一角打△3四玉▲5六歩と進む(第5図)


 後手陣にある先手の角2枚と銀に重複感があるうえ、歩切れも辛そう。事実、図から△2八飛と打たれると対処に悩みそうだ。

 ただし、後手玉も危うさがあり、例えば△2八飛に▲5八金寄に喜んで△5六銀と踏み込むと▲4四銀成の1手詰み!
 △2八飛には他に▲3八桂(ここに桂を打つのは辛そうだが、後に▲4六桂と跳ねる含みもある)や▲58金寄もあり、優勢なのは間違いないが、それほど簡単ではない。(でも、△2八飛が最善で間違いのない指し手だったと思う)

 実戦は△6二金と角を取る。取られそうな金が角と交換になったのも魅力。さらに、▲6二角成とさせることによって2四への角の利きを失くして自玉の安全度が増した。
 そうしておいて△8六桂!

 ▲8六同歩に△同歩と桂を犠牲に先手玉に一気に迫った。
 確かに、一理も二理(2利?)もある指し方だが、私は何となく嫌な予感がしていた。

 広瀬八段は△8六同歩に▲8四桂と飛車利きを遮って頑張る。
 これに対し△7六歩!………なな ろく 歩??

 意図は分かる…▲7六同歩に△7七歩▲同桂△7五歩▲同銀△7六歩が狙いで“羽生竜王の大好きな歩の連続叩きの手筋”だ。
 しかし、“藪をつついて蛇を出す”という感が強く、やり過ぎで危険としか思えない(狙い通りに進んでも寄っているかは怪しい)


 実戦は広瀬八段が歩の叩きを取らず▲6八銀と辛抱した。これは大きな利かしのはずだが、銀を引かせたため△8七角▲6七玉に△7九飛と打てなくなってしまった。
 △7六歩では普通に△8七角と打ち▲6七玉に△7九飛で良かったはずだ。もちろん、これで簡単な勝ちではないが、優勢は維持できていたはずだ。

 しかし、しかし……△7六歩▲6八銀に△8七歩成▲同玉△6九角!

 確かに、▲8七玉と呼び込んで△6九角と打つのは寄せのひとつの形ではある。しかしそれは、上部に抑えがある場合である。
 本局の場合、8一に飛車はいるものの、先手の6二の馬が強力、苦し紛れに打った桂も働いてきそうで、先手の支配エリアといって良い。しかも、後手の持ち駒に入玉戦で必須の金がない。


 この瞬間、羽生竜王の勝利の目は限りなく小さくなった。
 以下は詳しく語る気力もない。

 羽生竜王も何とか寄せようと頑張るが敗色が強くなっていった。
 飛車を8筋に打って勢力を強め、その飛車で桂を取り(桂得)、強力な先手の馬と刺し違えたが、代わりに強力な龍が誕生。しかも、7三は絶好の位置。3段目に利いて後手玉の脅威となり、7筋の防御も果たし、6四へ出て後手玉を寄せる含みもある。
 さらに…

 当たりになっていた5三の銀が4四へ成り返る手が絶好となった。(△4四同玉は詰む)

 ………………………………………………以下省略
 明日、辛い月曜日だなあ。


 痛い敗局だが、まだ2勝2敗の五分。
 それでも、第3局の重すぎる▲5二金の寄せ。さらに、△7五歩(第9図)に対する▲同歩(却って後手玉を寄せにくくしてしまった)……寄せの感覚に狂いが生じている。

 まず、終盤の感覚を取り戻すのが先決であるように思う。


【追記1】
※局後の感想※
羽生は総括として「82手目の△2五銀では△4五角と打ったほうがよかったですかね」と話し、感想戦が終了した。

とあり、棋譜のコメント欄では
問題となった局面。羽生はこの局面を迎えると、開口一番「もう1回打つんでしたかね」とつぶやいた。しかし、(1)△4五角に▲5六金と出られるのを気にして打てなかったと話している。
「かなり迷いました。しかし、打つなら(▲5六金と)出ますよね」(羽生)
「その読みでした」(広瀬)
ほかに(2)△6二銀も検討されたが、羽生は自信を持てなかったようだ。
「△6二銀も考えましたが、清算が持てませんでした」(羽生)



 しかし、ある将棋ソフトの解析によると(私は持っていません)
最善手は△3六角と解析している。それに本譜の△2五銀も△4五角よりも高評価らしい。

【追記2】
 △6二金~△8六桂は攻め急ぎで、コメント欄には
代えて△2八飛がまさったか。以下、▲3八桂△5三金▲5五歩△4二銀と進んだ。角を手にすれば△4五角が厳しい。
とある。


【追記3】

 △8七歩成~△6九角は玉を上部に逃がした変調手順だったが、厳密にはまだ羽生竜王が残していたようで、

 図より△5二歩▲5五歩△8五歩▲7六玉に△8六歩と桂を取ったが、△8六歩では△6三桂と打つ手があったようだ。

 以下▲7四金△7五歩▲同金△同桂▲同飛成△9三角が想定さ、本譜の進行よりかなり有望のような気がする。

【追記4】
 以降は後手が勝てない将棋となってしまったが、▲3四銀と縛られた手に対しては、ニコニコ生放送の解説でも推奨していた△3三桂と踏ん張る手があったようだ。

 とにかく、▲2五歩と打たれて玉を1三に押し込まれては勝ち目はない。

 “決め損なった感”“疲労”“時間切迫”など悪条件の中で踏みとどまるのは困難であっただろうが……
コメント (2)
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