竜王戦、挑戦者の藤井三冠が先勝した。
これで両者の対戦成績は9勝9敗の互角となった。しかし、風は完全に藤井三冠に吹いている。初対戦から豊島竜王が6連勝したが、その後は藤井三冠の9勝3敗(直近の6局では藤井三冠の5勝1敗)、豊島竜王の挑戦を受けた王位戦は4勝1敗で防衛、叡王戦は3勝2敗で藤井三冠(当時は王位・棋聖の2冠)が奪取している。
ここ数局の対戦を観ていると、《将棋とは“結局、藤井君が勝つゲーム”なんだなあ》と、思ってしまう(少し前までは、羽生九段が例えに上がっていたのに……)
竜王戦第1局もまさにそんな一局だった。
図だけ挙げさせていただくが、非常に難解な将棋を、豊島竜王が巧妙に指し進め優勢に進めた。
最近の将棋は、「飛車先の歩の交換を優先しない」「横歩を取る、取らせるの駆け引き」「後手の角道を開けるタイミング」など本当に複雑だ。
第1図の△2四飛に対して▲2七歩と打たされて、藤井三冠にとって思わしくない将棋となったようだ。
第2図では藤井三冠の歩得ではあるが、先手の飛車が窮屈。
第3図は両者の大駒が絡み合う局面だが、豊島竜王は精密に指し進める。
第4図は▲6六角打と飛車取りと▲2二角成を見た手に対して、強く△7六歩と応じる。藤井三冠はしかたなく▲8八角と譲歩したが、この歩が入ったのは大きそう。以下。△8五飛▲7四歩の桂取りに対し、△8七歩▲9七角を利かせて△6五桂と跳ねだし、快調そう。
以下少し進んで
桂打ちに対し、1時間19分の長考をしたが、▲6六金とよろけるしかなかったようだ。局後、藤井三冠は「☖4四桂を打たれて、けっこう痛い気が…」という感想。
確かに、下段に居た方が良いとされる金(支配力を発揮する中段金になる場合もある)が4段目に誘い出され、7七の角の利きを遮ってしまう悪形になってしまった。
▲6六金以下、☖8八歩成☗8八同銀☖7八飛☗4七玉(第6図)と進め、傍目には豊島竜王が決めに行ったように思えた。
ここで、豊島竜王は△7七飛成▲同銀△8九飛成。
飛角交換のやや駒損ながら、もう一方の飛車を成り込む‥‥部分的には第一感で、アマ初段以上なら、まず、考える手であろう。
しかし、直後に▲7一飛(第7図)と打たれてみると、先手の7四の歩と9七の角と打った飛車が、後手陣の7三と5三の急所を捉えていて、予想以上に厳しい(さらに、その両地点を捕捉する6五へ打つ桂も持駒にある)
対する先手陣には、厳しい攻めがない。一見、△6九角が好点の角打ちに見えるが、▲5八桂と合駒をされると、二の矢がない(持ち駒の桂を使わせるという利点はあるが)。
形勢は逆転。ただ、決定的な差ではなく、実際、第8図で△8一歩と打てば、ほぼ互角だったらしい(図の▲7九歩が疑問手で▲7一龍が正着)。
とは言え、そういう紆余曲折はあったが、第7図の▲7一飛と打たれてからは、後手が勝てない流れだったようだ。
投了図では、後手の龍も馬も働かず悲しい情況。
やはり、分岐点は第6図の局面。
【棋譜中継の解説】
☖7七飛成に代えて☖3六桂が有力と見られていた。☗3六同玉は☖8七歩(変化図1)が狙い。
以下☗6五桂☖8八歩成☗9五角には☖同飛で後手よし。☖3六桂に☗7六金は☖4八桂成☗同金☖8八飛上成☗同角左☖3六銀(変化図2)が厳しい。
☖3六桂に☗7三歩成☖同銀☗7九歩は、☖7七飛成☗同銀☖2八桂成でこれも後手がいい。以下☗8八歩には「☖8一飛の形が堅いので」と藤井(変化図3)。
豊島は「先が長そうなのでよくわからないですけど、本譜よりはよかったですかね」という。
【引用 終】
上記の☖8一飛と引かれる手を避けて、☗8八歩とせずに▲7一飛と打ち込む手も考えられるが、以下△8二銀▲2一飛成△3一金▲同龍△同銀▲5四桂と絡む手には△6九角で後手勝勢に近い。
図以下▲5八桂なら△5四歩と桂を取り、▲3一角成に△3五桂でよい。
叡王戦を4勝1敗で制し、3冠目を獲得した藤井三冠が、返す刀で豊島竜王を斬るか(豊島竜王は、3連続で斬られることになる)……4冠獲得、竜王位に就くことになれば、「藤井聡太が覇権を握った」と言及しても異論を唱える者はいないだろう。
その第1局を藤井3冠が制した。
本記事冒頭の繰り返しになるが、《結局、藤井三冠が勝つのか》という印象が強い。
これも繰り返しになるが、豊島6連勝の後は、藤井の9勝3敗(タイトル戦も藤井の2連勝)。
羽生ファンとして言わせていただくと、
「“史上最年少の四冠達成!(羽生九段の記録を破る)”というフレーズを見たくない。
豊島くん、頑張れよ!」
羽生九段は豊島竜王に7連敗中。正直、あまり(←“全く”ではなく“あまり”と言わせて)勝てる気がしない。
そんな豊島竜王が藤井三冠にぼろぼろ負けるのは、ちょっと……
そんなことを考えつつ、第一局の終盤を観ていた……そんな中で、豊島将棋について一つの仮説が浮かび上がった
「その2」に続く
これで両者の対戦成績は9勝9敗の互角となった。しかし、風は完全に藤井三冠に吹いている。初対戦から豊島竜王が6連勝したが、その後は藤井三冠の9勝3敗(直近の6局では藤井三冠の5勝1敗)、豊島竜王の挑戦を受けた王位戦は4勝1敗で防衛、叡王戦は3勝2敗で藤井三冠(当時は王位・棋聖の2冠)が奪取している。
ここ数局の対戦を観ていると、《将棋とは“結局、藤井君が勝つゲーム”なんだなあ》と、思ってしまう(少し前までは、羽生九段が例えに上がっていたのに……)
竜王戦第1局もまさにそんな一局だった。
図だけ挙げさせていただくが、非常に難解な将棋を、豊島竜王が巧妙に指し進め優勢に進めた。
最近の将棋は、「飛車先の歩の交換を優先しない」「横歩を取る、取らせるの駆け引き」「後手の角道を開けるタイミング」など本当に複雑だ。
第1図の△2四飛に対して▲2七歩と打たされて、藤井三冠にとって思わしくない将棋となったようだ。
第2図では藤井三冠の歩得ではあるが、先手の飛車が窮屈。
第3図は両者の大駒が絡み合う局面だが、豊島竜王は精密に指し進める。
第4図は▲6六角打と飛車取りと▲2二角成を見た手に対して、強く△7六歩と応じる。藤井三冠はしかたなく▲8八角と譲歩したが、この歩が入ったのは大きそう。以下。△8五飛▲7四歩の桂取りに対し、△8七歩▲9七角を利かせて△6五桂と跳ねだし、快調そう。
以下少し進んで
桂打ちに対し、1時間19分の長考をしたが、▲6六金とよろけるしかなかったようだ。局後、藤井三冠は「☖4四桂を打たれて、けっこう痛い気が…」という感想。
確かに、下段に居た方が良いとされる金(支配力を発揮する中段金になる場合もある)が4段目に誘い出され、7七の角の利きを遮ってしまう悪形になってしまった。
▲6六金以下、☖8八歩成☗8八同銀☖7八飛☗4七玉(第6図)と進め、傍目には豊島竜王が決めに行ったように思えた。
ここで、豊島竜王は△7七飛成▲同銀△8九飛成。
飛角交換のやや駒損ながら、もう一方の飛車を成り込む‥‥部分的には第一感で、アマ初段以上なら、まず、考える手であろう。
しかし、直後に▲7一飛(第7図)と打たれてみると、先手の7四の歩と9七の角と打った飛車が、後手陣の7三と5三の急所を捉えていて、予想以上に厳しい(さらに、その両地点を捕捉する6五へ打つ桂も持駒にある)
対する先手陣には、厳しい攻めがない。一見、△6九角が好点の角打ちに見えるが、▲5八桂と合駒をされると、二の矢がない(持ち駒の桂を使わせるという利点はあるが)。
形勢は逆転。ただ、決定的な差ではなく、実際、第8図で△8一歩と打てば、ほぼ互角だったらしい(図の▲7九歩が疑問手で▲7一龍が正着)。
とは言え、そういう紆余曲折はあったが、第7図の▲7一飛と打たれてからは、後手が勝てない流れだったようだ。
投了図では、後手の龍も馬も働かず悲しい情況。
やはり、分岐点は第6図の局面。
【棋譜中継の解説】
☖7七飛成に代えて☖3六桂が有力と見られていた。☗3六同玉は☖8七歩(変化図1)が狙い。
以下☗6五桂☖8八歩成☗9五角には☖同飛で後手よし。☖3六桂に☗7六金は☖4八桂成☗同金☖8八飛上成☗同角左☖3六銀(変化図2)が厳しい。
☖3六桂に☗7三歩成☖同銀☗7九歩は、☖7七飛成☗同銀☖2八桂成でこれも後手がいい。以下☗8八歩には「☖8一飛の形が堅いので」と藤井(変化図3)。
豊島は「先が長そうなのでよくわからないですけど、本譜よりはよかったですかね」という。
【引用 終】
上記の☖8一飛と引かれる手を避けて、☗8八歩とせずに▲7一飛と打ち込む手も考えられるが、以下△8二銀▲2一飛成△3一金▲同龍△同銀▲5四桂と絡む手には△6九角で後手勝勢に近い。
図以下▲5八桂なら△5四歩と桂を取り、▲3一角成に△3五桂でよい。
叡王戦を4勝1敗で制し、3冠目を獲得した藤井三冠が、返す刀で豊島竜王を斬るか(豊島竜王は、3連続で斬られることになる)……4冠獲得、竜王位に就くことになれば、「藤井聡太が覇権を握った」と言及しても異論を唱える者はいないだろう。
その第1局を藤井3冠が制した。
本記事冒頭の繰り返しになるが、《結局、藤井三冠が勝つのか》という印象が強い。
これも繰り返しになるが、豊島6連勝の後は、藤井の9勝3敗(タイトル戦も藤井の2連勝)。
羽生ファンとして言わせていただくと、
「“史上最年少の四冠達成!(羽生九段の記録を破る)”というフレーズを見たくない。
豊島くん、頑張れよ!」
羽生九段は豊島竜王に7連敗中。正直、あまり(←“全く”ではなく“あまり”と言わせて)勝てる気がしない。
そんな豊島竜王が藤井三冠にぼろぼろ負けるのは、ちょっと……
そんなことを考えつつ、第一局の終盤を観ていた……そんな中で、豊島将棋について一つの仮説が浮かび上がった
「その2」に続く