英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

藤井-豊島戦を観て、感じたこと その4

2021-10-29 20:48:56 | 将棋
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その1」
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その2」
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その3」
の続き

 今記事で取り上げるのは、王位戦第4局。
 実は、前記事の叡王戦第4局(豊島叡王の快勝)の三日前に指されている。前記事は豊島竜王の勝局を取り上げたかったので、時系列的に逆順になってしまいました。ご容赦ください。

 実は、本記事で2局ほど、両者の対局を(もう少し簡単に)取り上げ、できれば表題の“豊島将棋に関する仮説”について考察しようと思っていましたが、この一局の終盤、疑問が浮上してしまい、筆が止まってしまいました。
 文末に、その疑問点について触れますので、どなたか、疑問を解消してくださるようご教授願います。


王位戦 第4局
 本局を迎えた時点で、対戦成績は豊島8勝、藤井5勝。

 本局は角交換後、後手の藤井王位が角を打ち先手の豊島竜王の動きを牽制したが、後手の角を巡る攻防になった。

 第1図の銀取りに角を打ったところ。盤上の角と持駒の角は、一般的には持駒の角の方が価値が高いと言われている。隙を見せると馬を作られたり両取りを掛けられるので、角を持たれていると制約が多い。ただし、盤上の角が抜群の働きをすることもある。
 その有利さを手放して角を打つからには、豊島竜王には何らかの成算があるはず。実際、この銀取りへの後手の対応が難しいのではないかと言われており、豊島竜王の成算というよりは、藤井王位の成算が注目されていた。
 ▲5六角への藤井王位の対策は△3六歩だった。対して▲2八飛と引いて、△3五銀▲3六歩△4六銀▲2四歩△同歩▲同飛△2二歩▲4四飛と指すのも有力だったが、豊島竜王は▲3六飛。△3五銀で飛車が御用になってしまうが、これには▲4五歩のカウンターがあり大丈夫。実戦は▲3六飛に△3三歩。1歩を捨てて、銀取りを受けるだけの歩を3三に打つのでは、後手がやり損ったのではないかと思われるが、先手の飛角が窮屈で、釣り合いが取れているのだろう。


 第2図以降~第3図~第4図と、複雑で微妙な差し手争い(「指す」の誤字ではなく、相撲用語)みたいな小競り合いが続く。

 第4図はお互いの角が向かい合う局面が発生した瞬間。かなり珍しい図なので図面を起こしたが、この1手後の△5四銀打(第5図)の局面が、本局の分岐点となった。(記事を書くにあたって、この事に気づき、《なんだ、2手連続で局面図アップかと少し後悔)
【補足】44手目~47手目の局面でも、角が向かい合っていました。


 図で、豊島竜王は▲4八飛と飛車を回ったが、局後の感想では
代えて☗6五歩が有力だった。以下☖同桂☗同桂☖同銀☗4四歩☖同歩☗7五桂が進行の一例。
「これは攻めが切れない気が」(藤井)
「☗6五歩と突いたほうがよかったですか。手厚いところを攻めますけど、☗7五桂のキズがあるから成立するのか」(豊島)
と、棋譜中継の解説で記されている。

 また、▲6五歩の前に▲4四歩と突いてくのも有力だったようだ。
 ただし、これは検討陣目線の手で、当事者にとっては、△5四銀打(第5図)と打たれ6五の地点は後手の厚みを感じて、浮かびにくいと言う。

 実戦は▲4八飛以下、△7五歩▲同歩△9五歩▲同歩△6五歩▲同歩と3連続突き捨てを入れ△4五桂!
 桂捨ての強手。実際には「▲桂 対 △歩」交換か、「▲桂銀 対 △角歩」(ほぼ2枚替え)で、いずれにしても、後手の駒損。豊島竜王の飛車回りは後手玉のコビンを狙った手だが、4五の補強の意味もあったはず。
 当然の▲4五同角に△6六歩の叩き!

 ▲6六同金は△5七角成があるので▲6八金と引くが、急所に楔が入った。
 以下、△4五銀▲同飛に△5六歩(第7図)。

 この歩も3五の角と連動して厳しい。
 ▲5六同歩は△6八角成▲同金△6七角▲7八銀△5六角成で先手が悪そう。
 一見、▲5五飛の王手で5六の歩を抜けそうだが、△5四飛とぶつけられ手がある。
 そこで、▲7四桂と金取りに打って飛車の横利きを遮って△5四飛を消して▲5五飛の実現を狙ったが、当然、金取りを放置して△5七歩成(第8図)。

 図より▲5七同金に△7四銀と後手玉の危険度を下げられるのは悔しいが、▲6二桂成△同玉としてしまうと▲5五飛が王手にならないので仕方なしか。
 そこで、△7四銀に▲3五飛△同歩と切ってから▲7四歩と銀を取る。
 ちなみに、「△7四銀に▲7四同歩は、以下△5七角成▲5五飛△4一玉▲5七飛に△6七金で後手よし」とのこと。

 ▲7四歩に△5九飛(王手金取り)▲7九銀に△7四飛と手を戻す(第9図)。

 第9図は、金取りが残っており(場合によっては△2九飛成と桂を取る)、6六歩の拠点もあり、先手陣の7六の桂頭のキズもある。対して、後手陣は敵影すらない。
 豊島竜王は▲7五歩△8四飛▲6六金と飛車を追いながら拠点の歩を除去したが△5四桂(第10図)が急所に食い込む桂打ちで、以下は端を絡めるなど着実に先手玉を寄せた。



 さて、冒頭に述べた疑問点がこの第9図の局面です。
 ここで豊島竜王は▲7五歩△8四飛▲6六金と進めたが、

 第9図で▲6八銀打(変化図1)と固められた局面がよく分かりません。

 普通は△2九飛成と桂を取る手だが、▲6四歩(変化図2)と伸ばされてみると、後手の玉と飛車と龍の位置が悪く、指し手が難しい。

 △6四飛と歩を払う手には▲7四歩が悩ましい。
 ▲6四歩(変化図2)に手筋の△5六歩も浮かぶが、そこで▲6六金と歩を払う手がじっと後手の飛車にプレッシャーを掛けている。先手はやや戦力不足だが、何しろ9筋以外は固い。先手の飛車を攻めれば、両取りの角打ちの筋が生じたり、飛車を攻めるうちに玉にも迫ることができたりと、相当難しい形勢になっているように思える。第6図から第9図まで後手の思い通りに指したように思われるのに、不思議だ。
 特に2九の龍の位置は▲1八角がクリーンヒットになってしまうおそれがあるので、変化図1では△2九飛成ではなく、他の位置に飛車を成った方がいいのかもしれない。



 第9図の形勢判断や最善手など、ご教授くださると有難いです。

「その5」に続く
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする