英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

「ぐう」の詳細 その2 ……2024順位戦 羽生九段-近藤七段戦

2024-10-19 17:25:36 | 将棋
「ぐう」の詳細 ……2024順位戦 羽生九段-近藤七段戦 の続きです。


 第4図は△5七歩▲同金△5六歩と歩の連打をしたところ。
 この手に対し、熟慮に沈む羽生九段。
 私の第一感は▲5六同金。▲5八金と引くても考えられるが、△5六に歩の拠点を残すのは、後々響きそうだ。他には……▲3四金と銀を取る手がある。もちろん、△5七歩成と金を取り返されるのも大きい。▲5七同角と後手を引くことにもなるし。いや、後手角にも当たりが掛かっているし、完全に後手を引くわけでもない。……考えていると、相当有力に思えてきた。
 しかし、羽生九段は▲5八金。34分の考慮には、▲3四金も選択肢にあり、相当読みを入れたと思うが、自重した。
 う~ん、△2四角▲同飛と角金交換にはなるが、際どく、拠点作りを入れられてしまったのは、損をしたように思える。それに、34分の考慮で、残り時間が55分になってしまった。(近藤七段は1時間3分)
 もしかしたら、▲2四同飛と角を取った手が、銀当たりの先手になるという点を評価したが、△2三銀と銀取りを受けた手が、飛車取りの逆先になるのを軽視したのかもしれない。


 第4図の△5六歩以下、▲5八金△2四角▲同飛△5七銀▲5九歩△2三銀▲2七飛△6八銀成▲同金右△3八角▲2五飛△4七角成▲5五角△5七歩成▲7三角成△6八と▲同金△6六歩▲4五飛△4二歩▲5八銀△6七歩成と進んで第5図。

 指し手が長くなったので要約すると…
 近藤七段は歩の拠点を利して、△5七銀と打ち込み、△6八銀成と角を手に入れる、その角を3八に打ち(△2三銀に▲2七飛と引いた飛車に当たりを掛けて)馬を4七に作り、△5七歩成と“と金”を作って先手玉に迫る。
 羽生九段は、後手の攻めを浴びながらも、飛車の活用を図る。さらに、△5七歩成を甘受する代わりに▲5五角~▲7三角成(飛車取り)と反撃。
 さらに、後手の近藤七段も自陣に手を戻さず、6筋を攻める。素直に取ると△6七歩と叩かれて厄介なので、一旦、▲4五飛△4二歩を利かせて、▲5八銀と補強した。
 第5図直前の▲4五飛が味の良い手で、歩合いをさせることで持ち歩を消費させると同時に、飛車を後手陣に利かせ、△4六馬も消している。

 近藤七段は、△6六歩を継承して△6七歩成(第6図)

 羽生九段は直前の▲5八銀で8分考慮していて、残りは21分(近藤七段は△6七歩成に8分使って、残り24分)。
 残り30分のうちの8分は大きく、ここで腰を据えたと思われる。当然、次の一手は……(その3へつづく)
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「全然辛いです」(『旅サラダ』ゲストの旅より)

2024-10-19 09:56:49 | 日記
テレビをつけた直後、「全然辛いです」という言葉が聴こえた。
思わず、ガクッと!(ちなみに、福井弁ではこういう状態を強いられることを、「はぐしをくらう」と言う。私は「はぐしをかく」だと思っていた)

 「全然」は、あとに続く打消しの語や否定的な表現を強調する時に使われる言葉だ。「全然、知らない」「全然、英語を話せない」など。
調べてみると、日本語学においては容認されていないが、《俗語として、肯定の強調として「とても」「非常に」と同様な使い方で用いられる》らしい。
 私見だが、「全然、大丈夫」「全然、平気です」という言い回しがよく使われていて、そこから、《肯定的強調》としても使われるようになったのではと。
 これも、推測だが、上記の「全然、大丈夫」というのは、「辛くないか?」「痛くないか?」という問いを受けて、「全然(辛くないです)。大丈夫です」という意味で、「辛くない」を省略して言ったのが、定着したのではないだろうか。

 『旅サラダ』の「ゲストの旅」コーナーで、岐阜・大垣市~養老町の観光・グルメを中村ゆりさんが紹介する旅レポートで発せられた言葉。
 続けてコーナーを見たが、観光・グルメを的確に伝えていた。偶々、辛さが強かったので発してしまった言葉だろう。

 グルメや旅のレポートは、その場その場の即時の感想を表現しなければならないので、大変だと思う。
 日頃気になるのは、以前も書いたが、「すごい」の使われ方。
 「すごい」は、“甚だしい”、“程度が大きい”という意味の形容詞。時には、“表現できないほど素晴らしい”というような意味で、「すごい!」「すっごい!」とか単独で感嘆詞的に使われることも多い。
 また、形容詞なので後に続ける名詞を“素晴らしさ”や“甚だしさ”を強調する用法もある。用例:「すごい景色」「すごい人」。

 なので、旅レポートやグルメレポートでは「すごい」が頻発する。実際、「ゲストの旅」の後の「海外の旅…バルト三国 ラトビア・リガ」コーナーでは、連発されていた。
 「すごい景色」「すごいオシャレ」とか。……この表現は《形容詞+名詞》なのでOKだと思われるが……
   ………「すごいオシャレ」はダメなような気がする。「オシャレ」は名詞として使われる(化粧などすること)が、形容動詞でもある(“気の利いた服装である”という物事の状態や性質を表現している)。「すごいオシャレ」の場合、「おしゃれだ」という形容動詞である(たぶん)。
 この形容動詞というのがくせ者でややこしい(まぎらわしい)。
 例えば「きれい」は形容動詞、「美しい」は形容詞。(”きれい”は「きれいだ」の語幹で、終止形は「きれいだ(きれいです)」で、“だ”を省略して語幹のみで使われている)
 形容動詞の大まかな見分け方は、「~だ」という表現が成り立つかどうか。
 (実は、「名詞+だ」と「形容動詞」の区別がつきにくいが、私もよくわからないので、説明は省略)

 で、問題なのは「すごいおいしい」「すごいきれい」だ。
 「きれい」は形容詞と思っている人が多い気がするが(私もそうだった)、形容動詞、形容詞のいずれも用言(自立語で活用があり、単独で述語と成れるモノ)である。用言を就職する場合、形容詞は連体形ではなく連用形にすべき。つまり、「すごくおいしい」「すごくきれい」というのが正しい。
 テレビでバラエティの芸能人が「すごいきれい」とか言うのは、これだけこの表現が氾濫している現在では仕方がないと思う(学者も“言葉は変化するモノ”と言っているし、新しい表現も続出している)。また、街角インタビューでは「すごいきれい」と発しても、字幕では「すごくきれい」と記されていることが多い。
 でも、最近では話のプロであるアナウンサー(キャスター)が誤用しているのが見られるようになったのは残念。

 《「全然」は否定的な強調のみ》という牙城は守ってほしいなあ。
コメント (4)
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