かなり出遅れてしまったが、藤井聡太竜王・名人(七冠)が、王座戦第4局を制し、八冠制覇、独占した。
正直、羽生九段の七冠を超えられて、悔しい気持ちもあるが、ここは「おめでとう!」と言うしかない。
強い! 達成した偉業を讃えよう。
藤井八冠は、これまでタイトル戦を18回(挑戦8回、防衛10回)戦い、すべて勝利してきたが、“抵抗”という言葉は適切でないかもしれないが、永瀬王座が最も抵抗したのではないだろうか?永瀬王座も讃えたい。
………《きみも、ついに“九段”の仲間入りか》。羽生九段(藤井八冠にタイトルを奪われたわけではないが)、豊島九段、渡辺九段、そして永瀬九段………
それにしても……
報道やSNSを観ていると、「評価値」や「勝利確率」の弊害が出ているなあ
「勝率99%からの大逆転」という表現が氾濫した。
確かに、藤井玉に即詰が生じており、詰ませば勝ちなので「100%」と表現しても間違いではないのだが、実際は1分将棋、しかも、フレッシュな状態で1分読めるわけではなく、《5時間の持ち時間を考え抜く》《対局開始の午前9時から、休憩時間はあると言え、11時間以上藤井七冠と相対して対局する》という状況は、消耗が並大抵ではない。
その中で、藤井玉の詰みを読み切るのは相当な困難である。
安易に《《99%勝ち》を逃がした》と思って欲しくない。
そういう「大逆転」という言葉が飛び交う中で、Facebookのプライベートグループで、”決めつけ”のコメントがあった。
「あまりにも見っともない勝負でした
キツイ言い方すれば、ファンに特に応援してくれてた人に謝れと言われても仕方ない
それ程酷いと思いました」
(このコメントは《言い過ぎではないか》の反論に対して)
「プロの試合にはあまりにもお粗末だと言ってるのですよ
ここ3試合全部らしさがない
私はプロの試合としてみてるのです」
「級位者だからアマチュアだからプロを見たいんじゃないですか?」
「野球でもサッカー、ゴルフ、オリンピックアマチュア目線で見て応援もすればパッシングもして、歓喜憤怒するじゃないですか。
それを見せるのがプロだと思ってます。
なので、見っともないんですよ
級位者でも分かる詰み筋を今日だけじゃなく、ここ3局【おいおい】と言う場面で負けてます。
頑張れよ しっかりしろよ
っと言われるのは、プロなら当たり前だと思ってます。
それを見たいから、アマチュアな私はお金払うんですよ」
氏の言っていることが、すべて間違いだとは思わない。部分的には正しいとも言える。(言い過ぎではある)
彼の主張は
1.級位者でも分かる詰み筋を逃したのは、プロの試合としては、あまりにもお粗末である
2.同様な失敗を3局続けて犯した
《1.級位者でも分かる詰み筋を逃したのは、プロの試合としては、あまりにもお粗末である》について
その大逆転(笑)の一着を視てみよう
ABEMA テレビの解説者は「ここで▲4二金で詰むので、永瀬王座の勝利」とほぼ断定。
また、棋譜中継の解説も「控室は☖5五銀に☗4二金で「永瀬勝ち」と結論付けられている」と。
この局面は、藤井七冠が△5五銀と先手玉に詰めろを掛けたところ。
先手は、この詰めろを受けることはできるが、一旦、詰めろを解除しても、後手からの寄せを防ぐことはできず、一手一手の寄せになる。
つまり、後手玉を詰ますのが勝利の道。(詰まさなくても、後手玉に迫りながら5五の銀を排除する手段もある)
で、この局面で、級位者(アマチュア)でも後手玉を詰ますことができるのか?
……無理。
アマチュア有段者なら、運よく、詰ますことができるかもしれない。
アマチュアの高段者なら、▲4二金と着手した後、後手の指し手に対して、詰みまで指すことは可能であろう。しかし、フレッシュな頭でも1分で詰みを読み切ることは、難しいはず。
プロ棋士ならどうなのか?
控室や解説場では、すでにAI解析により、《▲4二金以下の詰みがある》と結論が出ていて、おそらく、それを知っているので、「▲4二金で先手勝ち」と解説したのかもしれない。
実は、私もABEMA 画面で示された▲4二金の一手だと思っていて、永瀬王座の▲5三馬を見て、《えっ?》と思った。そして、評価値(勝率確率)が暴落。《ああ、どうして▲4二金と指さないんだぁ?》となった。
この時は、《▲4二金以下簡単に詰む》と思っていたのだが、しばらくして読んでみると、意外に難しい。
まず、最初に読む順が、▲4二金△同金▲同成銀△同玉▲5二飛(変化図1)の順。
以下①△同玉なら▲5三銀と打って後は頭金の詰み。②△3三玉と逃げた時が難しい。△3三玉以下▲5五馬△同角成▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△同玉▲1七銀(変化図2)で
△3六玉と逃げるなら▲4七金と打ち、△4五玉なら▲4六歩△同馬(△3五玉なら▲5五飛成)▲同金以下詰み。
△3五玉なら▲2七桂△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△2四玉▲3六桂で詰み。
△2五玉なら▲2六歩△2四玉▲3六桂△3五玉▲2七桂△4五玉▲4六歩(変化図3)以下詰み。(他にも詰め方があるようだ)
上記の詰め手順で、②△3三玉の時、▲5五馬△同角成としてから▲2二銀と打たないと詰まない(ただし、先に▲2二銀と打っても、以下△2四玉▲5五馬△同角成▲同飛成で先手の勝ちは動かない。
永瀬王座は変化図の▲5二飛ではなく▲6二飛を読んだとのこと。▲6二飛だと5筋に飛車が利かないので詰みはない(ただし、▲6二飛でも勝勢)。
さらに、最初の▲4二金を取らずに、△2二玉▲3二金△1三玉と逃げる手も難しい(△1三玉で△1二玉なら▲2二金△1三玉▲2三金△同玉▲2二飛以下詰み)。△1三玉以下、▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2七飛△2六金(飛)▲1七桂△3六玉(1六玉)▲2八桂(変化図4)
△同角成▲2六飛以下詰み。
▲1七桂~▲2八桂はかなり難解。さらに、その前の△2四玉の時に▲2五歩△同玉としてから▲2七飛と打たないと詰まない(すぐ▲2七飛と打っても先手が勝つだろうが)。その上、変化図4の詰まし方も難解過ぎる!
と言う訳で、60秒でこれらの変化を読んで詰みを読み切るというのは、至難の業。
永瀬王座が不運だったのは、第1図で▲5三馬も有力に見えたこと。5三に馬を置いておけば、△1三玉と逃げられた時、▲2五桂△2四玉▲3五金の筋で詰む。しかし、実際は▲5三馬△2二玉と進んだ時(実戦もそう進んだ)、▲3一銀と打っても詰まない。
この手が見えなければ、▲4二金と指し、指し手を進めながら詰みに至ることも出来たはず。詰ませなくても、5五の銀を抜くなどできた。
さらに、運の悪いことに、▲5三馬が疑問手を通り越して、敗勢に陥る悪手だった。
《2.同様な失敗を3局続けて犯した》について
この件については、《相手が藤井七冠であったこと》……相手が悪かったのだ
王座戦挑戦者トーナメントの準々決勝の村田顕弘六段も、本当にあと一歩で勝ちまで藤井七冠を追い詰めた……しかし、勝てなかった。
これまでも、《勝ちかも?》という局面から、数回、藤井八冠(もう"八冠”と表記してもいいかな?)の繰り出す勝負手をかいくぐって、ようやく《勝った!》と思った局面に辿り着いても、勝てなかった棋士が何人いたことか……
藤井八冠相手に優勢になるのも大変だし、勝勢に持っていくのも大変なのである。《勝った》と思った局面に至るまでの消耗は計り知れない。消耗の上、時間切迫……本当に藤井八冠に勝つのは大変なのである。
この第4局の敗因を挙げるとしたら、中盤での2時間を超える大長考であろう。
大事な局面で、読み切ろうとする姿勢、そして、それに挑み頭脳をフル回転させるのは、棋士の性(さが)であるし、尊敬に値する。
しかし、ここで、もう少し時間の消費、脳の消耗を抑えておくべきだった。そもそも、羽生九段ではないが、70分を超える長考で良い手だったことは少ない(良い手であっても、その少し後、疑問手が出る)
今の藤井八冠相手に勝ち切るのは、寄せの段階で80分ぐらい残しておかないといけないように思う。
正直、羽生九段の七冠を超えられて、悔しい気持ちもあるが、ここは「おめでとう!」と言うしかない。
強い! 達成した偉業を讃えよう。
藤井八冠は、これまでタイトル戦を18回(挑戦8回、防衛10回)戦い、すべて勝利してきたが、“抵抗”という言葉は適切でないかもしれないが、永瀬王座が最も抵抗したのではないだろうか?永瀬王座も讃えたい。
………《きみも、ついに“九段”の仲間入りか》。羽生九段(藤井八冠にタイトルを奪われたわけではないが)、豊島九段、渡辺九段、そして永瀬九段………
それにしても……
報道やSNSを観ていると、「評価値」や「勝利確率」の弊害が出ているなあ
「勝率99%からの大逆転」という表現が氾濫した。
確かに、藤井玉に即詰が生じており、詰ませば勝ちなので「100%」と表現しても間違いではないのだが、実際は1分将棋、しかも、フレッシュな状態で1分読めるわけではなく、《5時間の持ち時間を考え抜く》《対局開始の午前9時から、休憩時間はあると言え、11時間以上藤井七冠と相対して対局する》という状況は、消耗が並大抵ではない。
その中で、藤井玉の詰みを読み切るのは相当な困難である。
安易に《《99%勝ち》を逃がした》と思って欲しくない。
そういう「大逆転」という言葉が飛び交う中で、Facebookのプライベートグループで、”決めつけ”のコメントがあった。
「あまりにも見っともない勝負でした
キツイ言い方すれば、ファンに特に応援してくれてた人に謝れと言われても仕方ない
それ程酷いと思いました」
(このコメントは《言い過ぎではないか》の反論に対して)
「プロの試合にはあまりにもお粗末だと言ってるのですよ
ここ3試合全部らしさがない
私はプロの試合としてみてるのです」
「級位者だからアマチュアだからプロを見たいんじゃないですか?」
「野球でもサッカー、ゴルフ、オリンピックアマチュア目線で見て応援もすればパッシングもして、歓喜憤怒するじゃないですか。
それを見せるのがプロだと思ってます。
なので、見っともないんですよ
級位者でも分かる詰み筋を今日だけじゃなく、ここ3局【おいおい】と言う場面で負けてます。
頑張れよ しっかりしろよ
っと言われるのは、プロなら当たり前だと思ってます。
それを見たいから、アマチュアな私はお金払うんですよ」
氏の言っていることが、すべて間違いだとは思わない。部分的には正しいとも言える。(言い過ぎではある)
彼の主張は
1.級位者でも分かる詰み筋を逃したのは、プロの試合としては、あまりにもお粗末である
2.同様な失敗を3局続けて犯した
《1.級位者でも分かる詰み筋を逃したのは、プロの試合としては、あまりにもお粗末である》について
その大逆転(笑)の一着を視てみよう
ABEMA テレビの解説者は「ここで▲4二金で詰むので、永瀬王座の勝利」とほぼ断定。
また、棋譜中継の解説も「控室は☖5五銀に☗4二金で「永瀬勝ち」と結論付けられている」と。
この局面は、藤井七冠が△5五銀と先手玉に詰めろを掛けたところ。
先手は、この詰めろを受けることはできるが、一旦、詰めろを解除しても、後手からの寄せを防ぐことはできず、一手一手の寄せになる。
つまり、後手玉を詰ますのが勝利の道。(詰まさなくても、後手玉に迫りながら5五の銀を排除する手段もある)
で、この局面で、級位者(アマチュア)でも後手玉を詰ますことができるのか?
……無理。
アマチュア有段者なら、運よく、詰ますことができるかもしれない。
アマチュアの高段者なら、▲4二金と着手した後、後手の指し手に対して、詰みまで指すことは可能であろう。しかし、フレッシュな頭でも1分で詰みを読み切ることは、難しいはず。
プロ棋士ならどうなのか?
控室や解説場では、すでにAI解析により、《▲4二金以下の詰みがある》と結論が出ていて、おそらく、それを知っているので、「▲4二金で先手勝ち」と解説したのかもしれない。
実は、私もABEMA 画面で示された▲4二金の一手だと思っていて、永瀬王座の▲5三馬を見て、《えっ?》と思った。そして、評価値(勝率確率)が暴落。《ああ、どうして▲4二金と指さないんだぁ?》となった。
この時は、《▲4二金以下簡単に詰む》と思っていたのだが、しばらくして読んでみると、意外に難しい。
まず、最初に読む順が、▲4二金△同金▲同成銀△同玉▲5二飛(変化図1)の順。
以下①△同玉なら▲5三銀と打って後は頭金の詰み。②△3三玉と逃げた時が難しい。△3三玉以下▲5五馬△同角成▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△同玉▲1七銀(変化図2)で
△3六玉と逃げるなら▲4七金と打ち、△4五玉なら▲4六歩△同馬(△3五玉なら▲5五飛成)▲同金以下詰み。
△3五玉なら▲2七桂△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△2四玉▲3六桂で詰み。
△2五玉なら▲2六歩△2四玉▲3六桂△3五玉▲2七桂△4五玉▲4六歩(変化図3)以下詰み。(他にも詰め方があるようだ)
上記の詰め手順で、②△3三玉の時、▲5五馬△同角成としてから▲2二銀と打たないと詰まない(ただし、先に▲2二銀と打っても、以下△2四玉▲5五馬△同角成▲同飛成で先手の勝ちは動かない。
永瀬王座は変化図の▲5二飛ではなく▲6二飛を読んだとのこと。▲6二飛だと5筋に飛車が利かないので詰みはない(ただし、▲6二飛でも勝勢)。
さらに、最初の▲4二金を取らずに、△2二玉▲3二金△1三玉と逃げる手も難しい(△1三玉で△1二玉なら▲2二金△1三玉▲2三金△同玉▲2二飛以下詰み)。△1三玉以下、▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2七飛△2六金(飛)▲1七桂△3六玉(1六玉)▲2八桂(変化図4)
△同角成▲2六飛以下詰み。
▲1七桂~▲2八桂はかなり難解。さらに、その前の△2四玉の時に▲2五歩△同玉としてから▲2七飛と打たないと詰まない(すぐ▲2七飛と打っても先手が勝つだろうが)。その上、変化図4の詰まし方も難解過ぎる!
と言う訳で、60秒でこれらの変化を読んで詰みを読み切るというのは、至難の業。
永瀬王座が不運だったのは、第1図で▲5三馬も有力に見えたこと。5三に馬を置いておけば、△1三玉と逃げられた時、▲2五桂△2四玉▲3五金の筋で詰む。しかし、実際は▲5三馬△2二玉と進んだ時(実戦もそう進んだ)、▲3一銀と打っても詰まない。
この手が見えなければ、▲4二金と指し、指し手を進めながら詰みに至ることも出来たはず。詰ませなくても、5五の銀を抜くなどできた。
さらに、運の悪いことに、▲5三馬が疑問手を通り越して、敗勢に陥る悪手だった。
《2.同様な失敗を3局続けて犯した》について
この件については、《相手が藤井七冠であったこと》……相手が悪かったのだ
王座戦挑戦者トーナメントの準々決勝の村田顕弘六段も、本当にあと一歩で勝ちまで藤井七冠を追い詰めた……しかし、勝てなかった。
これまでも、《勝ちかも?》という局面から、数回、藤井八冠(もう"八冠”と表記してもいいかな?)の繰り出す勝負手をかいくぐって、ようやく《勝った!》と思った局面に辿り着いても、勝てなかった棋士が何人いたことか……
藤井八冠相手に優勢になるのも大変だし、勝勢に持っていくのも大変なのである。《勝った》と思った局面に至るまでの消耗は計り知れない。消耗の上、時間切迫……本当に藤井八冠に勝つのは大変なのである。
この第4局の敗因を挙げるとしたら、中盤での2時間を超える大長考であろう。
大事な局面で、読み切ろうとする姿勢、そして、それに挑み頭脳をフル回転させるのは、棋士の性(さが)であるし、尊敬に値する。
しかし、ここで、もう少し時間の消費、脳の消耗を抑えておくべきだった。そもそも、羽生九段ではないが、70分を超える長考で良い手だったことは少ない(良い手であっても、その少し後、疑問手が出る)
今の藤井八冠相手に勝ち切るのは、寄せの段階で80分ぐらい残しておかないといけないように思う。
あれっ?永瀬前王座は、7冠にタイトルを挑戦された
唯一の棋士・・・・なの・・・・??
いやいやいや、今書いている最中に
急に気づいたんやけど、
とんでもない漢やったんやね。(笑)
そして、羽生さんの時の福崎前王座みたいに、
何年も語りつがれてしまうのかも・・・・。
いやぁ~~~~。これは・・・・。
ではではっ。
>永瀬前王座は、7冠にタイトルを挑戦された唯一の棋士
そういうことになりますね。
今後、その状況が実現するには、①藤井八冠がどれかタイトルを失冠して、その後、他のタイトルは防衛し続け、失冠したタイトルに挑戦する。②藤井八冠を凌ぐ最強棋士が現れ、藤井八冠から次々にタイトルを奪い、8つ目のタイトル挑戦を藤井一冠が受ける…というケースでしょうか。