英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

法廷の常識は世間の非常識 ~危険運転致死罪~

2024-11-06 14:08:02 | 時事
(以下の説明記述は、『大分 NEWS WEB』(NHK)「時速194キロ死亡事故 弁護側“危険運転致死罪にあたらず”」より、紺色部分
3年前の2021年2月、大分市の当時19歳の被告は法定速度が時速60キロの市内の県道で、車を時速194キロで運転し、交差点を右折してきた車と衝突して、運転していた小柳憲さん(当時50)を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われている当時19歳の被告の初公判が大分地方裁判所で開かれ、弁護側は「危険運転致死罪にはあたらない」と主張し、争う姿勢を示した。

《事故状況と起訴やそれ以降の経過》
【発生:21年2月9日】。
事件が起き、順調な調整ぶりをは3年前の2月、現場となったのが大分市大在の県道の交差点でした。
起訴状によりますと、当時19歳で会社員だった被告が時速194キロで車を運転して衝突事故を起こし、相手の車を運転していた小柳憲さん(当時50)が亡くなりました。

《以後、見出しの後の句点「。」に違和感を感じるので削除。文体も敬体から常体に変更》
【危険運転致死で書類送検:21年5月26日までに】
警察は5月までに「進行を制御することが困難な高速度の運転」だったとして危険運転致死の疑いで書類送検。

【過失運転致死で起訴:22年7月22日】
しかし、翌年の7月、検察は「衝突するまでまっすぐ走り、走行を制御できており、危険運転にはあたらない」としてより罪の軽い過失運転致死罪で起訴。

【遺族が署名提出:22年10月11日】
これに対し、遺族は危険運転致死の罪に変更するよう署名活動を実施し、10月には2万人を超える署名を大分地検に提出した。

【検察の再捜査:22年11月15日】
翌月には検察が事故が起きた時間帯に現場付近の通行を規制した上で、警察と合同で当時の状況を再現して改めて詳しく調べた。

【訴因変更:22年12月1日】
そこから2週間あまりで地検は起訴の内容を、危険運転致死罪に変更するよう大分地方裁判所に請求。
車のコントロールができない速度で運転したことに加え、相手の車の通行を妨害する目的で著しく接近させていたなどと判断しました。

【公判前整理手続き】
以後、地裁は裁判員裁判に向けて証拠や争点などを絞り込む公判前整理手続きを行って5日の初公判から合わせて6回の期日を経て今月28日に判決が言い渡されることになった。

 検察は、起訴する際、“危険運転致死“をそれより軽い”過失運転致死罪”に変更して起訴。
 常識的に考えて、時速194キロで走行することは、命を奪う(落とす)事態に直結する危険極まりない行為である。
 なのに、それを”過失運転致死罪”で起訴したのはは、なぜか?(“危険運転致死“で起訴しなかったのは、なぜか?)……検察は過去の判例を考えると、裁判で“危険運転致死“という判決が得られない可能性が高いと考えたからだという。
 (過去の判例が問題なのですが、それを挙げると非常に長くなり、私の仕事ができなくなるので、後回しにします。余裕があれば触れます)

《昨日(11月5日)の初公判での被告の陳述、検察側や弁護側の主張など》
 初公判で、被告は起訴された内容について「よくわかりません」と述べた上で、「小柳さんと遺族に心より謝罪します」と話した。
 また、被告の弁護士「危険運転致死罪にはあたらない」と主張し、争う姿勢を示した。
 検察は冒頭陳述で「現場の道路を194キロで走行した場合、路面の状況から車体に大きな揺れが生じるなどしハンドルやブレーキ操作を誤るおそれが高まる」などとして制御困難な高速度だったと主張した。
 そして、「道路の構造上、対向する右折車両が来ることが想定される」などとして車両の通行を妨害することが確実という認識があったと述べた。
 一方、弁護側「被告は車線から逸脱することなく直進することができていた。自分の生命や身体の危険を冒してまで通行を妨害する目的を積極的に抱く動機はない」などとして「危険運転致死罪は適用できず、成立するのは過失運転致死罪だ」と反論した。


 
 私が不可解に思ったのは
「衝突するまでまっすぐ走り、走行を制御できており、危険運転にはあたらない」《検察が最初の起訴で“危険運転致死”ではなく”過失運転致死罪”とした理由》
「車のコントロールができない速度で運転したことに加え、相手の車の通行を妨害する目的で著しく接近させていた」《検察が“危険運転致死”と変更した理由》
「現場の道路を194キロで走行した場合、路面の状況から車体に大きな揺れが生じるなどしハンドルやブレーキ操作を誤るおそれが高まる」などとして制御困難な高速度だった《検察の冒頭陳述…“危険運転致死”で起訴した理由》
「《道路の構造上、対向する右折車両が来ることが想定される》などとして車両の通行を妨害することが確実という認識があった」《検察の冒頭陳述…“危険運転致死”で起訴した追加理由》
「被告は車線から逸脱することなく直進することができていた。自分の生命や身体の危険を冒してまで通行を妨害する目的を積極的に抱く動機はない」《弁護側の“危険運転致死”起訴への反論》
というように、
①走行が制御できる状態であったかどうか? 
②相手の走行を妨害する意図があったかどうか?

で、「時速194㎞の猛スピードで走行していても、走行が制御できれば“危険運転”には該当しない」。
 また、「時速194㎞の猛スピードで走行していても、他者の走行を妨害する意志がなければ、“危険運転”には該当しない」という理屈
らしい。
 『時速194㎞で走行すること自体が、“殺人行為”に該当する」というのが世間の常識だと思うが……


 不思議なのは、検察が「妨害する目的」「妨害する認識」という理由を付け加えたこと。
 これに関しては、“危険運転致死傷”の法律が関係していると思われる。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(危険運転致死傷)
第二条次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
 一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
 二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
 三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
 四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
 五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
 六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
 七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
 八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為


 この条文の「四」「五」「六」は、いわゆる“煽り運転”を意識しての項目だと思われる。(確か、「《高速道路で車を停止した》ことが、“危険運転”に該当するのか?が焦点になったと記憶している。車を停止しただけに過ぎない。状態としては運転していないじゃないか?」とか…)

 (法律の専門家でないので、自信はないが)上記の危険運転に該当する項目は、「且つ」ではなく「もしくは」だと考えられるので、検察はわざわざ“煽り運転”に関する条件を付加する必要はないと思うのだが……
 その結果、「被告は車線から逸脱することなく直進することができていた。自分の生命や身体の危険を冒してまで通行を妨害する目的を積極的に抱く動機はない」と弁護側に反論の余地を与えている


 この条文の改定が考えられているという話もあるらしい。
 だったら、もっと、常識に一致するような条文に変えて欲しいものだ。

 最近、政治資金パーティーをめぐる収支報告書の不記載問題(会計責任者が起訴され、議員は不起訴)や、「特急あずさ事件の裁判所や検察の横暴」や(検索してみてください)、個人的には料亭破産関連の裁判所の対応の杜撰さ(私は「債権者」)など、“裁判所の非常識”を痛感している。

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