最近の輿水氏の脚本を考えると、“頑張った”と言える(巨匠に対して、何という上から目線!……申し訳ありません。ご容赦ください)
前篇での謎を復習すると、
・白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)がなぜ、銃撃されたのか?(当然、犯人は不明……ビルのボルダリングで落下、死亡した万津幸矢が使用された拳銃を所持していた)
・万津はどのようにして拳銃を入手したのか?
・万津のボルダリングの目的は
・事件とVRゲームネオ・ジパングの関係は?
・静(日南響子)は本当に万津の恋人なのか?(たくさんの二人のスナップ写真があり、彼女は万津のことをいろいろ知っていたが、何らかの目的で万津に接近したのでは?)
真相は、《IT長者・加西(石丸幹二)が金にものを言わせて、倫理から外れた行動を強いていた》というものだった。
①1億円を恵んでやった者(女性)に、更に1億円の餌をちらつかせ、公園を全裸で走らせる(公然わいせつ罪で逮捕)
②静(日南響子)には、白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)の射殺を指示(拳銃も加西が用意)。未遂に終わった(重体に放ったが一命をとりとめた)ので、褒美は無し
③万津(櫻井圭佑)には、ビルのボルダディングを指示。失敗し、死亡
④麗音を標的に選んだのは、彼女の交通取り締まりが鬱陶しかったから
①は後出しで分かった事実だが、加西の傲慢さによる②③④で、ほぼ謎が解消。
金で人の心をもてあそび、金で人を支配する快感に浸る。金でできないことはない。……極めて傲慢な男。しかも、金の力で上層部、あるいは政治家に圧力を掛け、逮捕を逃れてしまった。
上記のIT長者の傲慢さが事件の元凶だったとは、思い及ばなかった。ジグソーパズルのピースがぴったり嵌った感じだ。
ただし、不満な点がいくつかあった。
Ⅰ.冴えなかった特命係
・6億円にも心を動かすことなく、「我々は 一体 なぜ、そんな大金を頂けるのでしょう?」と加西に問いかけたことぐらいで、真相にたどり着くまでモタモタしていた(やたら、入国ログインエラー云々に時間をかけていた)。前後篇拡大スペシャルなどせずに、70分枠ぐらいで、さっさと解決しろよ!
・加西を追及・糾弾し、《追い詰めた》という感じはほとんどなかった(実際、逮捕できなかった)……右京の激高もなかった。
そもそも、静の供述と状況証拠ぐらいで、決定的な証拠を掴んでいないので、追及に厳しさがない。と言うより、真相にたどり着くのが精いっぱいで、確固たる証拠をつかむ意思を全く感じられなかった(前後編合わせて、2時間40分枠だったというのに)。おまけに、逮捕できなかったし。
静の逮捕に関しては、捜一コンビが主体ではあるが、彼女の自白と拳銃の存在とVR関係の状況証拠ぐらいで、証拠不足。ログインミスや拳銃所持に関する推理はさすがだと思ったが、少し時間をかけすぎ。
Ⅱ.右京と冠城…『相棒』シリーズのコンビとしてどうなのか?
冠城がシリーズを重ねるごとに、刑事の技量が進歩し右京の考えを理解するようになった。さらに、性格がクールなので、右京の犯罪に対するシビアさに異を唱えることも少ない。
今話では、ずっと二人が同一視線で一緒に捜査していた(組対5課の課長に対する裏切り行為も二人とも躊躇なく即実行など)。《別行動するのが良い》と言うわけではないが、“右京と右京モドキのコンビ”でいいのだろうか?
Ⅲ.無理がある静の設定や行動
今話の重要キーの静。いろいろ、混乱させてくれたが、かなり無理がある設定や行動だった。
・万津のどこが良かったんだ?
静が逆ナンパしたらしいが、どんなインスピレーションだったのだろうか?そもそも、万津への愛情なんてなかったのだろう。葬儀にも出なかったし。
(銃撃したのに未遂で6億円をもらえなかった静の代わりに)「ビルのボルダリングに挑戦しようとする姿が好き?で、コスチュームも用意した」と供述していたが、えっ、何それ?。
万津のボルダリングも、6億円もらい損ねたことが悔しいだけで、静を思いやっての行動ではない。
しかも、失敗したらほぼ死亡と言うのに、ボルダリングの経験もなく、練習もせず、フィジカルの強さの素養もなく、イメージトレーニングだけでできると思うとは、馬鹿としか思えない。
普段の言動や性格も惹かれるような要素は感じられなかった。暴力団員に喧嘩は吹っ掛けるし。恋人同士らしかったのは、残された写真(画像)だけ。
・白バイ警官・麗音を銃撃したが、目撃者や画像なし、というのは運が良かっただけなのか?計画を練っての結果なのか?
それにしても、「拳銃は用意してもらった」「もともと被害者と加害者の接点は無し」という容疑を掛けられる要素は少ないという点を考慮しても、捕まる可能性はあるし、人の命を奪うという罪の重さを感じないのだろうか?確かに、6億円は巨額だが。
まあ、取り調べで「6億>殺人の罪の大きさ」とハッキリ言っていたが(笑)
万津を銃撃犯に仕立て上げ、彼の母親まで罪を逃れるための道具として利用(ログインミスや万津の拳銃所持の嘘)……非道な女だ
・出頭したのは麗音に恐怖を感じただけで、罪の意識は感じていない。逃亡しようとは思わなかったのだろうか?
・ログインミスによる国外追放も、万津の母親を利用したが、彼女がログインしようとするかは不確定な部分が大きい。
・静が銃撃失敗してから、万津がボルダリングに挑戦するまでに時間が経過しすぎ
Ⅳ.捜一コンビは意地の悪さと無能さが増した
・やたら特命係を邪険に扱い、麗音に対しても意地が悪い態度(麗音をいびろという命令は受けたが、根っから意地悪のようだった)
・拳銃所持の件も、あの状況(拳銃は万津の物、二人は拳銃の存在を知らなかったと思われる)で、二人を逮捕するものだろうか?
・結局、万津を銃撃犯として送検してしまい、その直後、真犯人が発覚したが、その不始末について捜一コンビも警視庁も責任を追及されなかったようだが
Ⅴ.その他の疑問
・あれだけ怒っていた組対5課課長は今回は特命と普通に接していた……大人だなあ(笑)
・1億円で講演をストリーキングした女だが、既に1億円もらっているのに、もう1億円もらえるとは言え、公然わいせつ罪で捕まるようなことをするのだろうか?
第1話
【ストーリー】番組サイトより
迷宮入り寸前の銃撃事件に新たな展開が
VRに隠された巨大な謎に特命係が挑む!
白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)が銃撃された事件への関与を疑われていた男の所持品から拳銃が見つかり、被疑者死亡のまま送検されることになった。
ただ、男の恋人だった静 (日南響子) の不自然な行動に疑問を持った右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は捜査を続行。彼女もまた、VRの世界に作られた仮想国家『ネオ・ジパング』の“国民”であったことを突き止める。その中にこそ、手掛かりがあると踏んだ2人は、再びVRの世界に入り込み、小さな疑問点を見つける。その発見を、『ネオ・ジパング』の生みの親であるIT長者・加西(石丸幹二)にぶつけるが、のらりくらりとかわされてしまう。
しかし、加西がVR内で行っていた、数億円もの大金をプレゼントするという企画に話が及ぶと突然、風向きが変わって…!?
警官銃撃事件の手掛かりは仮想現実の中に?
右京と亘は真相を求め、再びVRの世界へ!
リアルとバーチャルが複雑に交錯する難事件を
特命係は解き明かすことができるのか!?
ゲスト:石丸幹二 日南響子
脚本:輿水泰弘
監督:橋本一
前篇での謎を復習すると、
・白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)がなぜ、銃撃されたのか?(当然、犯人は不明……ビルのボルダリングで落下、死亡した万津幸矢が使用された拳銃を所持していた)
・万津はどのようにして拳銃を入手したのか?
・万津のボルダリングの目的は
・事件とVRゲームネオ・ジパングの関係は?
・静(日南響子)は本当に万津の恋人なのか?(たくさんの二人のスナップ写真があり、彼女は万津のことをいろいろ知っていたが、何らかの目的で万津に接近したのでは?)
真相は、《IT長者・加西(石丸幹二)が金にものを言わせて、倫理から外れた行動を強いていた》というものだった。
①1億円を恵んでやった者(女性)に、更に1億円の餌をちらつかせ、公園を全裸で走らせる(公然わいせつ罪で逮捕)
②静(日南響子)には、白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)の射殺を指示(拳銃も加西が用意)。未遂に終わった(重体に放ったが一命をとりとめた)ので、褒美は無し
③万津(櫻井圭佑)には、ビルのボルダディングを指示。失敗し、死亡
④麗音を標的に選んだのは、彼女の交通取り締まりが鬱陶しかったから
①は後出しで分かった事実だが、加西の傲慢さによる②③④で、ほぼ謎が解消。
金で人の心をもてあそび、金で人を支配する快感に浸る。金でできないことはない。……極めて傲慢な男。しかも、金の力で上層部、あるいは政治家に圧力を掛け、逮捕を逃れてしまった。
上記のIT長者の傲慢さが事件の元凶だったとは、思い及ばなかった。ジグソーパズルのピースがぴったり嵌った感じだ。
ただし、不満な点がいくつかあった。
Ⅰ.冴えなかった特命係
・6億円にも心を動かすことなく、「我々は 一体 なぜ、そんな大金を頂けるのでしょう?」と加西に問いかけたことぐらいで、真相にたどり着くまでモタモタしていた(やたら、入国ログインエラー云々に時間をかけていた)。前後篇拡大スペシャルなどせずに、70分枠ぐらいで、さっさと解決しろよ!
・加西を追及・糾弾し、《追い詰めた》という感じはほとんどなかった(実際、逮捕できなかった)……右京の激高もなかった。
そもそも、静の供述と状況証拠ぐらいで、決定的な証拠を掴んでいないので、追及に厳しさがない。と言うより、真相にたどり着くのが精いっぱいで、確固たる証拠をつかむ意思を全く感じられなかった(前後編合わせて、2時間40分枠だったというのに)。おまけに、逮捕できなかったし。
静の逮捕に関しては、捜一コンビが主体ではあるが、彼女の自白と拳銃の存在とVR関係の状況証拠ぐらいで、証拠不足。ログインミスや拳銃所持に関する推理はさすがだと思ったが、少し時間をかけすぎ。
Ⅱ.右京と冠城…『相棒』シリーズのコンビとしてどうなのか?
冠城がシリーズを重ねるごとに、刑事の技量が進歩し右京の考えを理解するようになった。さらに、性格がクールなので、右京の犯罪に対するシビアさに異を唱えることも少ない。
今話では、ずっと二人が同一視線で一緒に捜査していた(組対5課の課長に対する裏切り行為も二人とも躊躇なく即実行など)。《別行動するのが良い》と言うわけではないが、“右京と右京モドキのコンビ”でいいのだろうか?
Ⅲ.無理がある静の設定や行動
今話の重要キーの静。いろいろ、混乱させてくれたが、かなり無理がある設定や行動だった。
・万津のどこが良かったんだ?
静が逆ナンパしたらしいが、どんなインスピレーションだったのだろうか?そもそも、万津への愛情なんてなかったのだろう。葬儀にも出なかったし。
(銃撃したのに未遂で6億円をもらえなかった静の代わりに)「ビルのボルダリングに挑戦しようとする姿が好き?で、コスチュームも用意した」と供述していたが、えっ、何それ?。
万津のボルダリングも、6億円もらい損ねたことが悔しいだけで、静を思いやっての行動ではない。
しかも、失敗したらほぼ死亡と言うのに、ボルダリングの経験もなく、練習もせず、フィジカルの強さの素養もなく、イメージトレーニングだけでできると思うとは、馬鹿としか思えない。
普段の言動や性格も惹かれるような要素は感じられなかった。暴力団員に喧嘩は吹っ掛けるし。恋人同士らしかったのは、残された写真(画像)だけ。
・白バイ警官・麗音を銃撃したが、目撃者や画像なし、というのは運が良かっただけなのか?計画を練っての結果なのか?
それにしても、「拳銃は用意してもらった」「もともと被害者と加害者の接点は無し」という容疑を掛けられる要素は少ないという点を考慮しても、捕まる可能性はあるし、人の命を奪うという罪の重さを感じないのだろうか?確かに、6億円は巨額だが。
まあ、取り調べで「6億>殺人の罪の大きさ」とハッキリ言っていたが(笑)
万津を銃撃犯に仕立て上げ、彼の母親まで罪を逃れるための道具として利用(ログインミスや万津の拳銃所持の嘘)……非道な女だ
・出頭したのは麗音に恐怖を感じただけで、罪の意識は感じていない。逃亡しようとは思わなかったのだろうか?
・ログインミスによる国外追放も、万津の母親を利用したが、彼女がログインしようとするかは不確定な部分が大きい。
・静が銃撃失敗してから、万津がボルダリングに挑戦するまでに時間が経過しすぎ
Ⅳ.捜一コンビは意地の悪さと無能さが増した
・やたら特命係を邪険に扱い、麗音に対しても意地が悪い態度(麗音をいびろという命令は受けたが、根っから意地悪のようだった)
・拳銃所持の件も、あの状況(拳銃は万津の物、二人は拳銃の存在を知らなかったと思われる)で、二人を逮捕するものだろうか?
・結局、万津を銃撃犯として送検してしまい、その直後、真犯人が発覚したが、その不始末について捜一コンビも警視庁も責任を追及されなかったようだが
Ⅴ.その他の疑問
・あれだけ怒っていた組対5課課長は今回は特命と普通に接していた……大人だなあ(笑)
・1億円で講演をストリーキングした女だが、既に1億円もらっているのに、もう1億円もらえるとは言え、公然わいせつ罪で捕まるようなことをするのだろうか?
第1話
【ストーリー】番組サイトより
迷宮入り寸前の銃撃事件に新たな展開が
VRに隠された巨大な謎に特命係が挑む!
白バイ警官・出雲麗音(篠原ゆき子)が銃撃された事件への関与を疑われていた男の所持品から拳銃が見つかり、被疑者死亡のまま送検されることになった。
ただ、男の恋人だった静 (日南響子) の不自然な行動に疑問を持った右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は捜査を続行。彼女もまた、VRの世界に作られた仮想国家『ネオ・ジパング』の“国民”であったことを突き止める。その中にこそ、手掛かりがあると踏んだ2人は、再びVRの世界に入り込み、小さな疑問点を見つける。その発見を、『ネオ・ジパング』の生みの親であるIT長者・加西(石丸幹二)にぶつけるが、のらりくらりとかわされてしまう。
しかし、加西がVR内で行っていた、数億円もの大金をプレゼントするという企画に話が及ぶと突然、風向きが変わって…!?
警官銃撃事件の手掛かりは仮想現実の中に?
右京と亘は真相を求め、再びVRの世界へ!
リアルとバーチャルが複雑に交錯する難事件を
特命係は解き明かすことができるのか!?
ゲスト:石丸幹二 日南響子
脚本:輿水泰弘
監督:橋本一
今回の前後編スペシャルは、間延び感は否めませんでしたが、必要以上に話を複雑にしなかったのはよかったのではないでしょうか。
今回逮捕されなかった加西は、最終回スペシャルあたりで、伏線回収されるのではないかと予想しています。出雲麗音がレギュラーに加入するとは全く予想していませんでしたが。
さて、いわゆる「バディもの」については、違う性格・価値観の相棒がぶつかり合いながらも、最後は力を合わせて事件を解決するというのが醍醐味だと思っています。
しかし、時間が経過すれば関係も成熟・安定してきますし、よくも悪くも緊張感は薄れてきます。そういう意味では「バディもの」は長期シリーズには不向きなのかもしれません。
ちなみに、今年の夏に放送された『MIU404』を見ていたのですが、すごく面白かったと思いました。
>間延び感は否めませんでしたが、必要以上に話を複雑にしなかったのはよかったのではないでしょうか。
>しかし、(バディものは)時間が経過すれば関係も成熟・安定してきますし、よくも悪くも緊張感は薄れてきます。
ええ、私もそういう考えも持っています。
ただ、今回の比較的単純なストーリーが前後編モノの宿命の間延び感を増幅させてしまったように思います(それでも、いつもの前後編モノよりも間延び感は少なかったです)
それなら、特命二人の多少の食い違い(暇か課長への対応とか、捜査手法の違い)を掘り下げてもいいと思いました。
あと、本文で書き忘れましたが、ログインエラーの真相に拘るのも良いのですが、「万津がなぜボルダリングに挑戦したのか?」という疑問を、皆がほとんど持たなかったのか、それが不可解でした。
右京は静が銃撃の真犯人と当たりを付けて、真相に迫ろうとして、ログインエラーに拘ったのだと思いますが。
あと、刑事部長と暴力団組長が懇意にしているのが明かされましたが、もしかすると今シーズンで退場するのかなと余計な想像までしてしまいます。
>今年の夏に放送された『MIU404』を見ていたのですが、すごく面白かったと思いました。
これは、同感。『半沢直樹』より面白かったです(最終回は不満でしたが)。あ、『半沢直樹』ももちろん面白かったです。
余裕があれば、『MIU404』のレビューも書きたかったのですが、書き出すと、長くなりそうなので、やめました。