「何やってんだよぉ~」の“その後”です。(「その2」ですが)

第1図が問題の局面。合駒の選択肢は香、桂、銀、金、飛の5つ。
合駒選択の考え方は、その局面によって異なり、難しい。
金合いは先手を取る意味もあり有力。後手玉には詰めろが掛かっており、金1枚使っても詰めろは消えないのも魅力。ただし、△3八金▲同玉△5八龍などで取られてしまうことがマイナス。
その意味では、安い駒の香を打ちたくもなる。歩がベストだが、あいにく二歩。香は後の△5七龍を防いでおり、桂は後に4六に駒を打たれる手を防いでいる。飛合いは後手玉を詰ますのに戦力低下になり、飛車を取られてしまう危険性もある。ただし、場合によっては、玉が右辺下段に逃げた時、防御になる可能性もある。
銀合いも有力そうだ。守備力もそれなりにあり、持ち駒に銀が3枚あるので1枚消費しても影響なさそうだ。
……正解は、金、または香。桂合は優勢から互角になり、あまりよくない。飛と銀は敗勢になる。
羽生九段は4分で銀をつまんだ……形勢を表す評価値の曲線は、東尋坊の断崖絶壁ごとく、急降下した……
上記の△3八金▲同玉△5八龍の筋で、後手が銀を手に入れると先手玉は詰んでしまうのだ(厳密には、詰まない逃げ方があるが、絶望的な局面になる)
評価値を知っている観戦者は、《銀合いは負けになる》と知っているので「何やってんだよぉ~」となるが、対局者が正着を指すのは非常に難しい局面だった。この記事を書くに当たり調べたが、相当難しい。選択肢が多かったのも不運だった。それでも、32分残していたのに、4分で指してしまったのは残念だ。
羽生九段も着手した暫く後、銀合いの非を悟っていたのが伺えたし、局後も悲痛な感情を隠せなかった。
(香合でも良いようですが、この記事では金合いに絞って述べます)

金合いに対しては、①△3八金と②△4七香がある。
①△3八金
第1図より△3八金▲同玉△5八龍と進んだ時、3六に利かせて▲4八桂と合駒をするのが正着。
この時、㋐△4七金と㋑△3六香がある。
㋐△4七金
△4七金には▲2七玉。

この時、もし4七に打った駒が銀ならば、△3六金▲同桂△同銀成と迫ることができる。この違いが大きい。この差は、最初の5八への合駒が金合いか銀合いで生じる。▲5八銀が大悪手である所以だ。
とは言っても、金合いしても“金合い図2”から△3六金▲同桂△3八龍▲2六玉△3六龍と迫る手があり、気持ち悪い。

だが、図から▲1五玉(金合い図4)で大丈夫。後手の1六歩がなければ簡単に詰むのだが…。
▲4八桂合に対して、㋑△3六香も有力。

△3六香には⒜▲3七歩△2八金▲同玉△4八龍と迫る手が怖い。
この手には▲3八飛が好守!
以下△1七金▲2九玉で逃れている。(▲1九玉と逃げると△1八金▲同飛△2七桂以下詰み)

また▲3八飛(金合い図6)の時

△1八金も▲2七玉で大丈夫(▲1八同玉は詰む)
”金合い図5”の△3六香に対して⒝▲2七玉とかわした方が簡明かもしれない。
以下△4七龍▲2六玉△1七龍▲1五玉(金合い図8)と追い込まれて絶体絶命のように思われる。

この局面、後手の持駒に金が2枚あるが、先手玉に詰みはない。歩が打てないのが痛い。持駒に香か桂などもう一枚あれば詰むのだが…
と言う訳で、▲5八金(金合い図)に①△3八金は詰まない。
では、②△4七香はどうだろうか?
②△4七香(△4五香と離して打つ手には▲4六歩で大丈夫)

図以下▲4七同玉△3六金▲4八玉△4七金打(金合い図10)と迫られるが、

▲3九玉と引き、△3八金▲同玉△5八龍▲4八歩と凌ぐ(実は“金合い図10”の△4七金打ですぐに△3八金と打っても同じになる)
ここで⑴△2七金打(金合い図11)は

▲3九玉でも▲2九玉でも詰まない。
また、⑵△4七金打も▲2九玉△4九龍▲3九香△3八金(金合い図12)

に、▲1八玉で詰まない。
と言う訳で、△6八同飛成(第1図)に金合いで詰まない。

実戦で羽生九段は4分で▲5八銀(銀合い図)と打った。何故、4分で指したのだろう?
森内九段は6分の考慮で△3八金。
……羽生九段、15分考えて投了…………

投了図以降の変化。
①▲3八同玉△5八龍▲4八桂△4七銀▲2七玉△3六金(銀合い図2)。

4七に打った銀と利いていて▲1六玉と逃げることになるが、△1五歩(銀合い図3)以下詰み。
②▲4七玉△3六金▲5六玉△4五銀(銀合い図4)。(▲5六玉では▲3八玉△5八龍▲4八飛とすれば詰みは逃れられるが、以下駒をボロボロ取られて絶望的な局面になる)

△4五銀が巧手で、以下▲4五同玉△6五龍▲3四玉△3三香(銀合い図5)▲同角成△同金で詰み。(▲4五同玉△6五龍に▲5五銀と合駒しても、△4四香▲3四玉△3三金で詰む)
羽生九段は第1図の直前の△6八飛打に対して、51分考えて▲6八同金と指している。おそらく、この時に金合いしても詰まないことは読み切っていたが、銀合いしても大丈夫と読んだのではないだろうか?
投了後のあの悲痛な表情は、歩詰めを読み切っていた金合いをしなかったことの後悔と、銀合い後の読み抜け(△4五銀をうっかりしたのでは?)を恥じたのだろう。
この記事を書くに当たって金合いの変化を検証したが、《「何やってんだよぉ~」というレベルではなかった》ことを強く言いたい。

第1図が問題の局面。合駒の選択肢は香、桂、銀、金、飛の5つ。
合駒選択の考え方は、その局面によって異なり、難しい。
金合いは先手を取る意味もあり有力。後手玉には詰めろが掛かっており、金1枚使っても詰めろは消えないのも魅力。ただし、△3八金▲同玉△5八龍などで取られてしまうことがマイナス。
その意味では、安い駒の香を打ちたくもなる。歩がベストだが、あいにく二歩。香は後の△5七龍を防いでおり、桂は後に4六に駒を打たれる手を防いでいる。飛合いは後手玉を詰ますのに戦力低下になり、飛車を取られてしまう危険性もある。ただし、場合によっては、玉が右辺下段に逃げた時、防御になる可能性もある。
銀合いも有力そうだ。守備力もそれなりにあり、持ち駒に銀が3枚あるので1枚消費しても影響なさそうだ。
……正解は、金、または香。桂合は優勢から互角になり、あまりよくない。飛と銀は敗勢になる。
羽生九段は4分で銀をつまんだ……形勢を表す評価値の曲線は、東尋坊の断崖絶壁ごとく、急降下した……
上記の△3八金▲同玉△5八龍の筋で、後手が銀を手に入れると先手玉は詰んでしまうのだ(厳密には、詰まない逃げ方があるが、絶望的な局面になる)
評価値を知っている観戦者は、《銀合いは負けになる》と知っているので「何やってんだよぉ~」となるが、対局者が正着を指すのは非常に難しい局面だった。この記事を書くに当たり調べたが、相当難しい。選択肢が多かったのも不運だった。それでも、32分残していたのに、4分で指してしまったのは残念だ。
羽生九段も着手した暫く後、銀合いの非を悟っていたのが伺えたし、局後も悲痛な感情を隠せなかった。
(香合でも良いようですが、この記事では金合いに絞って述べます)

金合いに対しては、①△3八金と②△4七香がある。
①△3八金
第1図より△3八金▲同玉△5八龍と進んだ時、3六に利かせて▲4八桂と合駒をするのが正着。
この時、㋐△4七金と㋑△3六香がある。
㋐△4七金
△4七金には▲2七玉。

この時、もし4七に打った駒が銀ならば、△3六金▲同桂△同銀成と迫ることができる。この違いが大きい。この差は、最初の5八への合駒が金合いか銀合いで生じる。▲5八銀が大悪手である所以だ。
とは言っても、金合いしても“金合い図2”から△3六金▲同桂△3八龍▲2六玉△3六龍と迫る手があり、気持ち悪い。


だが、図から▲1五玉(金合い図4)で大丈夫。後手の1六歩がなければ簡単に詰むのだが…。
▲4八桂合に対して、㋑△3六香も有力。


△3六香には⒜▲3七歩△2八金▲同玉△4八龍と迫る手が怖い。
この手には▲3八飛が好守!
以下△1七金▲2九玉で逃れている。(▲1九玉と逃げると△1八金▲同飛△2七桂以下詰み)

また▲3八飛(金合い図6)の時

△1八金も▲2七玉で大丈夫(▲1八同玉は詰む)
”金合い図5”の△3六香に対して⒝▲2七玉とかわした方が簡明かもしれない。
以下△4七龍▲2六玉△1七龍▲1五玉(金合い図8)と追い込まれて絶体絶命のように思われる。

この局面、後手の持駒に金が2枚あるが、先手玉に詰みはない。歩が打てないのが痛い。持駒に香か桂などもう一枚あれば詰むのだが…
と言う訳で、▲5八金(金合い図)に①△3八金は詰まない。
では、②△4七香はどうだろうか?
②△4七香(△4五香と離して打つ手には▲4六歩で大丈夫)

図以下▲4七同玉△3六金▲4八玉△4七金打(金合い図10)と迫られるが、

▲3九玉と引き、△3八金▲同玉△5八龍▲4八歩と凌ぐ(実は“金合い図10”の△4七金打ですぐに△3八金と打っても同じになる)
ここで⑴△2七金打(金合い図11)は

▲3九玉でも▲2九玉でも詰まない。
また、⑵△4七金打も▲2九玉△4九龍▲3九香△3八金(金合い図12)

に、▲1八玉で詰まない。
と言う訳で、△6八同飛成(第1図)に金合いで詰まない。


実戦で羽生九段は4分で▲5八銀(銀合い図)と打った。何故、4分で指したのだろう?
森内九段は6分の考慮で△3八金。
……羽生九段、15分考えて投了…………

投了図以降の変化。
①▲3八同玉△5八龍▲4八桂△4七銀▲2七玉△3六金(銀合い図2)。


4七に打った銀と利いていて▲1六玉と逃げることになるが、△1五歩(銀合い図3)以下詰み。
②▲4七玉△3六金▲5六玉△4五銀(銀合い図4)。(▲5六玉では▲3八玉△5八龍▲4八飛とすれば詰みは逃れられるが、以下駒をボロボロ取られて絶望的な局面になる)


△4五銀が巧手で、以下▲4五同玉△6五龍▲3四玉△3三香(銀合い図5)▲同角成△同金で詰み。(▲4五同玉△6五龍に▲5五銀と合駒しても、△4四香▲3四玉△3三金で詰む)
羽生九段は第1図の直前の△6八飛打に対して、51分考えて▲6八同金と指している。おそらく、この時に金合いしても詰まないことは読み切っていたが、銀合いしても大丈夫と読んだのではないだろうか?
投了後のあの悲痛な表情は、歩詰めを読み切っていた金合いをしなかったことの後悔と、銀合い後の読み抜け(△4五銀をうっかりしたのでは?)を恥じたのだろう。
この記事を書くに当たって金合いの変化を検証したが、《「何やってんだよぉ~」というレベルではなかった》ことを強く言いたい。
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