漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

初めての合格のために その3 「過去問と四字熟語」

2014-04-16 16:06:08 | 初めての合格のために
 前回、「過去問と四字熟語で143点取れる」と書きました。もちろん回によってばらつきはあるでしょうが、現在の出題傾向からして、過去問と四字熟語(前回の分類A~C)で取れる問題がおよそ140点分、その他(分類D・E)が60点分と考えておけば大きく外れることはないでしょう。とすると、前者で140点近い得点をきっちり取れれば、残りの60点分は20点ほど、つまり3分の1程度取れば合格に到達するということになります。前者を完璧に全問正解というのはなかなか難しいとしても、9割取れれば126点で残りは34点。後者の60点分は6割で良いことになります。

 さてそこで、9割を目指すべき分類A~Cについて、もう少し詳しく見てみましょう。

 分類A~Cとは、以下の通りでした。

分類A   「平成21年度以降の過去問」 「漢検1級 完全征服」 「漢検1級 分野別精選演習」 にある問題。

分類B   Aとまったく同一ではないが、Aを勉強していれば正解できる問題。

分類C   A・Bには含まれないが、1級配当の四字熟語の知識で正解できる問題。


分類A・B

 ここは、とにかく最近の過去問と書籍を入手して、ひたすらその問題にあたるということになります。その際、もちろん出てくる漢字や熟語の意味をひとつひとつ確認するとか、読み問題は読むだけでなく書けるようにするとかの取り組みをするに越したことはありませんが、最初からそうしたやり方で取り組むことは個人的にはお勧めしません。読み飛ばしでも丸暗記でも良いので、とにかく繰り返し問題をこなして「正解」できるようにするのが良いと思います。2度目、3度目、4度目と繰り返すうちになんとなく意味が分かってくる漢字や熟語も必ずありますし、何より正解数が増えていくことが勉強のモチベーションになるでしょう。乱暴なことを言いますが、特に読み問題などは意味がわからなくても書けなくても、読めれば正解で得点になります。1度目は5%だった正答率が2度目は15%、3度目は35%と上がって行き、習得済み問題の増加(=実力の向上)が実感できることが大切と考えます。


分類C

 「漢検 四字熟語辞典」で1級配当とされているものを網羅的に学習することになります。学習開始当初は見たこともない熟語がほとんどのはずで、こちらは読めるだけでなく、書けることも意味を理解することも重要ですからなかなかにボリュームがあり、根気のいる勉強になります。もちろん、四字熟語は分類Aに属するものだけに絞ると割り切って勉強し、結果、合格を勝ち取られている方も少なくないと思いますが、それでも私がこれを重要と考える理由と留意すべき点を繰り返しも含めて列挙します。

★ 配点が大きい
 四字熟語が直接問われる本試験(五)には30点という大きな点数が配分されています。合格のためには全体で40点分しか間違えられないことを考えると、ここで10点以上も失点するようなことはなんとしても避けなければなりません。また、配点30点のうち10点分は問われた意味に該当する四字熟語を記号で答える選択問題であり、消去法で正解にたどり着くことも可能ですが、これが書き取りと同じく1問2点ですから、絶対に落としたくないところです。書き取りも含め、合格に向けて(五)はぜひ得点源としましょう。

★ 出題範囲が限定されている
 覚えるべき四字熟語が1,000語と考えると始めは途方に暮れるかもしれませんが、他の分野との比較で言えば、1,000語覚えればほぼ確実に満点に近い得点が取れるというのは、国字の書き取りに次いでかなり「おいしい」分野と考えるべきでしょう。

★ 学習対象の四字熟語
 「漢検 四字熟語辞典」には、1級配当の熟語が約1,100語掲載されています。このうち、漢検配当外の漢字を含む約50語は覚える必要はないでしょう。次いで、人名が含まれているもの約20語もほぼ外して良いでしょうし、意味内容が余りに貧弱ないし下世話なものも覚える必要はないと思います。(実際にどれを学習対象から外すかは、結局は主観の問題ですが・・・。学習するかどうかを判断するのを止めてとにかく全部覚える、というのも、逆に効率的かもしれません。) などなどで学習対象は約1,000語。すでに分類Aに含まれているものが200ほどありますから、分類Cとしては800語ほどとなります。

★ 「●●之●」
 上記800個の熟語には、「●●之●」という形のもの約100語が含まれています。これらの熟語が(五)で直接四字熟語として問われることはないと思いますが、このブログでも何度か書いているように、このタイプの四字熟語の学習は絶対に省略すべきではありません。(九)の故事・成語・諺問題としてここ数年に出題されたものだけでも、
  【イツボウの争い】 22-2  ←  【鷸蚌之争】 (「漢検 四字熟語辞典」P.90)
  【シボクの信】 22-3  ←  【徙木之信】 (240)
  【ヒニクの嘆】 23-1  ←  【髀肉之嘆】 (401)
  【トソウの人、何ぞ算うるに足らんや】 23-1  ←  【斗筲之人】 (367)
  【テンダイの筆】 23-2  ←  【椽大之筆】 (353)
  【カンポウの交わり】 24-1  ←  【管鮑之交】 (141)
  【イモンの望】 24-2  ←  【倚門之望】  (92)
  【スイキョウして天下治まる】 24-2  ←  【垂拱之化】 (276)
  【ケンロの技】 25-2  ←  【黔驢之技】  (185)
といった状況ですし、(九)以外でも 「在野」の類義語として【草莽】、【咫尺(しせき)】や【邯鄲(かんたん)】の書き取り、【棣鄂(ていがく)】の読みなど、出題事例は枚挙に遑がありません。

★ 準1級以下配当の熟語について
 本試験では、準1級以下に配当されている四字熟語も出題されます。ここ数年の出題数は本試験1回に1問というところですが、私はこれはできなくても仕方がないと考えています。4級、5級といった下位級配当のものも、使われている漢字はなるほど易しいですが、四字熟語としては馴染みのないものがたくさんあります。本試験で1問正解するためにこれをすべて追いかけるのは、初回合格を目指す上ではさすがに効率が悪いと思います。ただし、「完全征服」「分野別」に出ているもの(すなわち分類Aに属するもの)は当然ながら覚えておきましょう。25-2 で5級配当の 【断章取義】 が出題されましたが、「分野別」で学習していたので無事に正解することができました。


 今回も長くなりましたのでこの辺で。

 次回は(一)~(十)の設問ごとに、思うところを書いてみます。