しるしなき けぶりをくもに まがへつつ よをへてふじの やまはもえけり
しるしなき 煙を雲に まがへつつ 世をへて富士の 山は燃えけり
富士の噴煙が立ち上っても雲にまぎれてしまうように、私の恋は何のしるしもなく、愛しい人に通じないままに、それでも燃え続けているのであるよ。
富士の噴煙を燃え盛る恋心に喩えての詠歌。同じモチーフの歌が 553 にもありましたね。
この歌は新古今和歌集(巻第十一「恋歌二」 第1008番)に入集しており、そちらでは第五句が「やまともえなむ」とされています。