いでてゆかむ ひとをとどめむ よしなきに となりのかたに はなもひぬかな
出でて行かむ 人をとどめむ よしなきに 隣の方に 鼻もひぬかな
よみ人知らず
私には、出て行く人をとどめるすべもないのに、隣の家では、くしゃみもしてくれないのだな。
第五句の「鼻をひる」はくしゃみをする意。当時、くしゃみは思いを寄せる人に合える前兆とされていたとのことで、出て行こうとする人を引き留めるすべもなく、また会える前兆もないという悲しい歌ですが、「鼻をひる」という、歌に詠み込まれることのあまりない表現が使われているので諧謔歌に分類されたというところでしょうか。