なきひとの やどにかよはば ほととぎす かけてねにのみ なくとつげなむ
なき人の 宿にかよはば ほととぎす かけて音にのみ なくと告げなむ
よみ人知らず
亡き人の家に通っていくのであれば、ほととぎすよ、私もお前が鳴くのと同じくあの人のことを心にかけて泣いてばかりいると伝えてほしい。
「なき人の宿」は亡くなった人の生前の住まいともとれますが、当時、ほととぎすは冥界に通う鳥と信じられており、死後の住まいを指しての詠歌ともとれます。「なく」は「鳴く」と「泣く」の掛詞ですね。なお、巻第十六「哀傷歌」の中で、この歌と次の 0856 の二首のみは、詞書が付されていません。