漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0769

2021-12-07 19:53:51 | 古今和歌集

ひとりのみ ながめふるやの つまなれば ひとをしのぶの くさぞおひける

一人のみ ながめふるやの つまなれば 人をしのぶの 草ぞおひける

 

貞登

 

 長雨の中、わたしは古い家で独り物思いにふける妻なので、軒先にしのぶ草が生い茂るように、あなたを偲ぶ思いが沸き起こってきます。

 「長雨」と「眺め」、「降る」と「古る(家)」、「端(軒先の意)」と「妻」、「忍(草)」と「偲ぶ」と掛詞が多用された複雑な構造です。前者の意味だけを拾っていくと「長雨の降る中、一人で暮らす家の軒先には忍草が生い茂っている」となりますし、後者だけ拾えば「わたしはたった一人、古い家で物思いにふける妻なので、あの人を偲ぶ思いが沸き起こってくる」となりますね。

 作者の貞登(さだ の のぼる)は平安時代前期の貴族で、第54代仁明(にんみょう)天皇の子。名前は「みのる」と読まれることもあるようです。勅撰集への入集は、古今集のこの一首のみです。

 

 



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