けぶりたち もゆともみえぬ くさのはを たれかわらびと なづけそめけむ
煙立ち もゆとも見えぬ 草の葉を たれかわらびと 名づけそめけむ
真静法師
煙が立って燃えているようにも見えない草の葉を、一体誰が最初に「わらび」と名付けたのだろうか。
本歌は、植物名としての「わらび(蕨)」が「藁火」と同音であることに着目してその面白みを詠んだもので、手法としては掛詞に他なりませんが、物名歌に分類されています。隠し題以外の歌では、0439 で折句の歌が物名歌として採録されていますが、本歌も物名歌の範囲を広くとらえた編纂と言えるでしょうか。
作者の真静法師(しんせいほうし)は、手元の解説本によると河内国に存した人物。0556 の安倍清之の歌の詞書に小野小町とともに記載がありますので、この両者と同時代の人物でしょう。古今集では、0921 で再度登場します。