さよふけて なかばたけゆく ひさかたの つきふきかへせ あきのやまかぜ
さ夜更けて なかばたけゆく ひさかたの 月吹きかへせ 秋の山風
景式王
夜が更けて、なかば西に傾きかけた月を吹き戻しておくれ、秋の山風よ。
「たけゆく」は「長けゆく」で盛りを過ぎること。「ひさかたの」はいろいろな言葉に掛かりますが、ここでは「月」に掛かる枕詞ですね。隠し題は「なかばたけゆく」に詠み込まれた「かはたけ」です。
作者の景式王(かげのり の おほきみ)は第55代文徳天皇の孫にあたる人物。古今集には本歌と 0786 の二首が入集しています。勅撰集全体で見ても入集はこの二首のみのようです。