龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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先輩、山田耕一郎の訃報をきいて

2012年09月20日 23時05分16秒 | 大震災の中で
尊敬していた先輩の訃報を聞いた。

普段会うことはなくても、私なんかよりもずっと高い能力を駆使し、どこか遠いところで世界を支えて頑張ってくれている……

勝手にそんな風に決めつけて自分は隅の方で遊んでいればよい……

そんな妄想の中で甘えられる人はそう多くない。

何かの折にふと、彼ならばどう読んでくれるだろうか、と考えてしまうような、「想像上の読者」の一人だった。

意見が合った、というのとは違う。
「文学的」な趣味もだいぶ違っていたし、政治的な振る舞いという意味では遠く離れてもいた。

でも、たとえば大澤真幸の『ナショナリズムの由来』を紹介したときは、「おい、長えな、これ」とかいいながらしっかり買って読んでくれていたし、逆に、廊下でふとすれ違うときに「この本おもしれえぞ」といって『直筆でよむ坊ちゃん』を紹介してくれたりした。

彼に教えてもらった本で印象深かったのは平出隆『遊歩のグラフィスム』だった。

ベンヤミンと正岡子規は、それをきっかけとして読み直すようになった。

そういう先輩を失うのは辛い。
たとえもう、そんな風にさりげなく会話を交わす機会などないとしても、どこかで元気に活躍していてほしかった。

元福島県立橘高校校長 山田耕一郎。

ガンを患いながら震災後の相馬の地で教育長を引き受け、復興に尽力されていた、と聞いている。
そういう社会に関わって行く身振りは、私にはとても縁遠いものだし、彼があえて何かを語ろうとしないときにむしろ「政治」を感じたりもした。

そして、個人的にそう親しくしたわけでもない。
彼が退職し、上司でなくなってから一度泊りがけで飲み、話をしただけだ。

でも、それらの距離と違和も含めて貴重な先輩だった。

ご冥福を祈る。