いよいよあと1日で2016年という年が終わる。世界ではイギリスのEU離脱やアメリカ大統領にドナルドトランプが決まり、韓国でも大統領の弾劾が連日報道されていた。国内ではリオオリンピックで盛り上がり、大隈教授がノーベル賞を取るなどのうれしいニュースの反面、災害で熊本地震が起こり、事件では障害者施設で19人が刺殺されるなど数々の出来事があった。そんなニュースも時間が経てば、自分の中での記憶は薄れていき、やがては忘れ去っていくのであろう。それは直接自分に関わった事柄ではないからかもしれない。
では自分に関することで、長く記憶に留まるようなことがあっただろうかと振り返ったとき、鮮烈な出来事や記念にすべき事項も特にはなかったようだ。やはりこの1年も平々凡々と過ぎ、「1年の経つのは速いなぁ~」と感じることになるのだろう。これを良しとすべきなのか、もう少し何とかすべきことなのか、と考えてしまう。先日読んだ脳学者 茂木健一郎の本に下記のような文章があった。
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近頃、1年の経つのが速いと感じている人は、はっきり申し上げて、ドパーミン(脳内活性物質)がでていません。どういうことかというと、脳は初めてのこと、サプライズのことを経験しているときには、その時間を長く感じるという実験結果があります。つまりそれだけ起きていることを細かく見ているからです。これを「デビュー効果」と言います。人生で初めてのことを経験する、つまりデビューしたことは、とても長く感じられます。だから子どもの脳は毎日デビュー効果でいっぱいなのです。だから小学生時代は長く感じられたはずです。小学校一年生で、ひらがなを覚えて、数字を覚えて、足し算引き算・・・・。もうエブリデイサプライズです。2年になると初めて掛け算を習います。九九なんて、「なにこれ!全部覚えるの!?」とびっくりしませんでしたか?新しいことに挑戦すると、その時の時間は長く感じます。
最大のドパーミンというのは、初めてのことをしたときに出ます。初めて行く美術館で絵を見たときに出るドパーミンは多いのです。2回目、3回目に行った時には、1回目ほど出ません。だから旅をして初めての場所に行くとか、初めての人に会うということは脳にとってはうれしいことなのです。ドパーミンがでると、その時のことが強化されます。それを強化学習といいます。ところが、人生が進んでいくとだんだん初めての経験が減ってきてしまいます。ある程度大人になって完成されてくると、あえてそういうことをしなくても生きていけるようになってしまいます。それが脳のアンチエイジングにとっては一番問題なのです。何歳の人でもびっくりしてドパーミンを出すと、前頭葉が元気になるという性質があるのです。この1年間、なにか初めてのことがありましたか?「私はもう、人生わかりすぎたから。これから変わることもないし」と言う人はドパーミンを出す気持ちが足りないのです。
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確かに小学校時代の時間は長かったように思う。授業が終わって一旦家に帰り、それから友達と誘い合わせて又学校に行く。校庭で三角ベースボールや缶けりをして夢中で遊ぶ。夕暮れになって家に帰って宿題をし、それから夕食風呂そして就寝である。1学期が終わり、40日間の長い夏休み、夏休みが終わると暑さが残る中、何度も繰り返した運動会の練習や退屈な授業が続く、そんな2学期は長く長く感じたものである。季節が変わり寒くなり正月が近づくと、大掃除と障子の張替えと餅つきが待っている。そして母親が新しい下着などそろえてくれ、それを着て新年を迎える。冬休みが終わり今度は短く感じた3学期を終えて、新しい学年になる。先生が変わり、クラス替えがあり、新しい友達が出来る。そんなことの積み重ねで成り立っていた1年々は、今思えば長く充実した1年だったように思える。
今起こる自分の身の回りの出来事は、ほとんど過去の経験則で対応できるものばかりである。リスクを負わない、恥をかかない、波風を立てない、いつも無難な大人の対応である。これでは茂木健一郎が言うようにドパーミンは出てこないであろう。では脳のアンチエージングのために何をするか、これが来年の課題である。恥をかいても「絵を展覧会に出品してみるか」、もう少し気合を入れて練習して「ギターリサイタルを開催するか」、それとも昔の夢である「自伝を書いて自費出版するか」、それとも昔考えた「四国八十ハヶ所を歩くか」、「奥の細道を歩くか」、「タクラマカン砂漠の真っ只中に1人で立ってみるか」、やろうと思えばまだまだ考え付くことはある。後はやる気と勇気である。人生の時間もあまり残ってはいない。来年自分の気持ちに火がつけられるかどうかが問題である。
絵の構図がいいですね!