60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

退職後

2015年01月23日 09時18分00秒 | Weblog
 彼とは昔の麻雀友達でもう40年の付き合いである。彼は1月21日が65歳の誕生日、1月末で42年勤めた会社を退社する。昨年の11月は仕事の整理と引き継ぎ、12月は得意先と仕入先へのあいさつ回り、そして1月は身の回りの整理と退職に当たっての年金や健康保険等の諸手続き、そんな風に自分でスケジュールを決めて淡々と実行していった。「老兵は消え去るのみ」そんな言葉を発しながらも、やはり寂しさと先への不安は覆い隠せない雰囲気である。
 
 彼は常々「豊かな老後は月額30万円」、そんなことを言っていた。しかし年金は20万弱、あと10万円が不足する。今は奥さんがコンビニでパートタイマーをやっていて年100万円を稼いでいる。しかし彼としては女房の稼ぎを当てにするのも口惜しい。かといって65歳の再就職やアルバイトはなかなか難しいのも現実である。「とりあえず知り合いの伝手を頼って仕事を当たってみたり、近場でマンションや駐車場などの管理の仕事を探してみたい」、どちらにしても一息ついてから考えたいと言っている。「しかし仕事が見つからなくても自分の小遣い程度はなんとかしたい」ということから、「手元資金で株を買うことにした。できればこれで月5万程度は稼ぎたい」、そんなことを言っていた。
 
 もう一つの悩みは仕事が見つからなければ日常をどう過ごすかということである。今までは年365日の7割は仕事で3割がプライベートな時間であった。それが今後は10割がプライベートの時間となる。「さて何をするか?」それが彼の最大の憂鬱である。一般的なサラリーマンは仕事にかまけてあまり趣味を持っていない。彼も典型的で、プランターで少しの野菜を育てているぐらいで他になにも趣味は持っていない。しかし今さら取って付けたように何かを始めたとしても、それはなかなか身に付きづらいものである。学生時代にサキソフォンやトランペットを吹いていたという仲間は、地元の市民オケや私的なクラブに入って演奏活動をしているという話を聞く。若い頃、山に登っていた仲間は近くの低山を歩いて楽しんでいる。そんなふうに焼けぼっくりには火はつきやすいが、生木に火を点けるのは難しく、趣味の炎は燃えずらいものがあると、彼自身も自覚している。
 
 いずれにしても、彼がこの1月で辞めることはもう何年も前から決まっていたことである。しかし辞めた後に何をするかは、ほとんどの人が彼と同じように準備不足のように思うのである。これから先10年も20年もあるだろう人生、何故みんな前もって準備できていないのだろうと考えてみる。サラリーマンとして働くということは、組織の中で職務分担しチームとして動くことに慣れていて、単独での活動が不得意なのである。そのためリタイアして単独の行動をしなければいけなくなると、途端に臆病になり億劫になってしまうのだろう。何かのサークルに属すことができれば上手くいくのだろうが、今度はそこで新参者として扱われるかもしれない、それも気が進まない。だから次の人生が退屈なものになってしまうように思うのである。彼は私に「一緒に畑を借りて家庭菜園をやらないか」とか、「1ヶ月に1度麻雀をしよう」とか、「定期的に散歩に行こうよ」と誘ってくれる。それはやはり複数を前提での活動しか思いつかないからかもしれない。
 
 私はどちらかといえば「群れる」のが苦手だから単独の行動を考える。以前に何度かこのブログにも書いたことがあるが、ある老齢の女流作家(名前は不明)がラジオのトーク番組で高齢者の心得として言っていたことを、今でも念頭に置いている。それは1、.自分のことは自分でできるようにする。2、ネットワークは大切にする。3、自己表現の手段を持つ。というものである。これを言い換えれば、「人に頼らず、孤立せず、自分の楽しみを持つ」ということであろう。このことは60歳頃から意識はしてきた。①、掃除や.洗濯も自分でやり、極力女房には頼らない。②、交友関係を億劫がらず、それを最優先にする。③、このブログもそうだが、散歩写真の編集とメールでの配信、水彩画、クラシックギター(まだほとんど進んでいない)など、自己表現手段の習得を試みている。どこまで準備すれば退職後に軟着陸できるかは分からない。が、そろそろ私の番も近づいているように思っている。







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2 コメント

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よくわかります (55歳リーマン)
2015-03-18 08:26:54
ちょこちょこ、貴殿の哀愁と黄昏感あるブログを拝見させて頂いています。人物描写といいますか、人間観察の分析には敬服します。
さて、今回のブログ記事の退職後ですが、まじめに仕事してきたリーマンの定年退職後のご褒美は、無限大に広がる夜の空を想起してしまいます。あるいは時間軸のブラックホールなのかもしれません。自分がリーマンを終わる前に、準備を臆病、億劫がらずにすることは必要なのでしょうね。
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Unknown (ひろし)
2015-03-27 18:06:04
周りを見ていると、退職後の過ごし方は「散歩」「読書」「テレビ」の比重が圧倒的に大きいように思います。それでは第二の人生としては物足りなさを感じるのです。「何か打ち込めるものを見つける」、これが退職前にやっておかなければいけないことなのでしょう。
我々は社会に出る前にあれほど勉強したわけです。第二の人生に当たり、やはりそれなりの準備をしてスタートしたいものです。お互い良い時間を過ごすために頑張りましょう。
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