60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

趣味はバラ

2009年05月19日 09時05分18秒 | Weblog
ゴールデンウイークが明けてから、通勤途中にある一軒の家の庭に色とりどりのバラが咲いている。
この家は駐車場のスペース以外は庭全体にバラが植えてあり、鉢植えのバラも所狭しと置いてある。
通勤で6時半ごろこの家の前を通るのだが、ほとんどいつもバラの手入れをするご主人を見かける。
年齢は私ぐらいだろうか、毎朝起きてからバラの面倒を見ることは、彼には至福のときなのであろう。
こういう人がバラキチと言いわれ、バラの魅力に取りつかれた人なのであろう。

3年ぐらい前、鎌倉の散歩で鎌倉文学館に行ったことがある。丁度庭園に秋のバラが咲いていて、
それを手入れしていた庭師さんに、バラについて色々と教えてもらったことがある。
バラは春と秋の2回花を咲かせてくれる。春は5月中旬から、秋は10月中旬から花を付ける。
やはり植物は春の方が生命力があり、花の数も多く、また大きな花をつけてくれるそうである。
秋は力がたりず、開花までの時間は長くなるが、そのぶん蕾がゆっくりふくらみ、 花色も鮮やかで、
花姿もしまりがあり香りも強いそうである。そして花としての寿命も長いそうである。
バラは「植えつけや植え替え」「肥料」「剪定」「病害虫対策」を中心に、1年中手がかかる。
仕立て方を工夫し面倒を見て、いかに美しい花を咲かせるか、それがバラを育てる楽しみ、
美しい花を咲かせるかどうかは環境次第、言ってみれば育てている人間次第なのですよ。
そんな話を聞かせてくれた。

今朝この家の前を通ると、ご主人がデジカメで、花一輪一輪を慈しみを込めてカメラに収めていた。
丹精こめて育てたバラ、バラに注ぐ愛情は子供や孫のに対するものにも似ているのかもしれない。

最近、人が物や人に対してかける愛情について思うことがある。
このご主人のようにバラに注ぐ愛情、人が犬や猫のペット等に注ぐ愛情、子供や家族に対する愛情、
どれもみんな根源は同じものではないだろうか、と思うのである。
人が人に対しての愛情で、友人への友情や家族に対する家族愛も、恋人に対する恋愛感情も
その対象が違うだけで、基本的には人が持っている一つの感情に起因しているように思うのである。
簡略に言えば「愛」というより「興味」と言うことなのだろうか?その興味が人に向かえば「愛」になる。
それがペットなどの生き物に向かったり、植物を育てるこことに向かったり、物や仕事に向かっていく。
言ってみれば人の中の「興味」というベクトルがどこに向かうか、どれだけのエネルギー量があるかで
愛情が深かったり、興味の対象が変わったりするだけの問題なのではないだろうか、と思うのである。

なぜそう思うのか、
もともと人間も動物である。愛情とか興味と言うものが、始めから多様にあったとは思えない。
動物の世界であれば「生存する」「子孫を残す」と言うことだけが最大のテーマであったはずである。
しかし人間社会はその「生存」はある種保障されたものになり、「子孫を残す」という本能的使命も、
地球上に人があふれている現代では、もう強いモチベーションにはならなくなってきたのであろう。

そして「生存」という本能がしだいに「興味」というベクトルに変容し多様化したのではないだろうか。
若い人が結婚しない。夫婦が子供を作らない。仕事一辺倒から、生活をエンジョイする人生へ。
そういうことからすれば、人間の動物的な本能は徐々に希薄になり退化してきているのであろう。
なにか、うがった見方のようだが、今の世の中の大きな流れからそう推察するのである。

毎朝庭に出てバラを育てるご主人、たぶん今から先、死ぬまで庭のバラを慈しみ育てるのだろう。
しかし、このご主人も思春期には同級生の女の子に恋心を抱き、失恋したのかもしれない。
そして結婚し、家庭を持ち、子供を愛し育てていくことにエネルギーを注いできたはずである。
今はその愛情はバラに向かっている。人が持つ「興味」のエネルギーはある時は「愛」になり、
ある時は「友情」になり、ある時は「仕事」に向かい、ある時は「趣味」に形を変えていく。
人が内包する「エネルギー」の源はただ一つ、人により年代によりその形は様々に変化していく。
最近はそんな風に思うようになった。そう思う方が、自分も人も理解しやすいと思うからである。

このバラを育てるご主人に比べ、私の興味の向く先はまだまだ揺れており何も定まっていない。
女房はもちろん、子供たちに対しての愛情も、仕事に対する興味も次第に薄れてきている。
かといって、動物や植物を育てることに興味は起きない。物に対する執着も薄いようである。
まだまだ私の中では俗世界に対しての未練が強いようである。今からさらに歳を経るに従って、
自分の中の興味の対象がバラを育てるご主人のように定まっていれば良いと思うのだが。

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