monologue
夜明けに向けて
 



 そろそろ子供達の楽しい夏休みが近付いてきた。わたしが蓄音機なるものを初めて見たのは小学校の夏休みだった。毎朝、広場に集まると町内の人が蓄音機を運んでくる。そしてグルグルとハンドルを回転するとレコードを乗せた。すると「ラジオ体操第一」という声が聞こえピアノの伴奏が流れた。わたしたちはその音楽に合わせて体操をして首に提げた出欠表にハンコを貰って帰った。わたしは蓄音機という箱を不思議な気持で見た。時たま今日は蓄音機が動かないからといってかけ声だけで体操した時楽しみが半減したような気がしたものだった。毎年夏休みが来ると蓄音機というマジックボックスに対する甘い憧れの気持を懐かしく思い出す。
fumio

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