monologue
夜明けに向けて
 



気が付かないうちに音楽界は進み、レコードがモノラル録音からステレオ録音になったことに伴い、かつての蓄音機は「セパレート型ステレオ」という大きなステレオフォニック再生装置に変貌を遂げていた。時代に遅れまいと父が買ってきたのはトリオという音響メーカーの家具調ステレオでレコードプレーヤーとアンプ、チューナーが一体化したセンターユニットと、大きな左右のスピーカーがあった。そしてその上にエアチェック用にナショナルのステレオテープデッキを置いた。

  父はクラシックの「新世界交響曲」を買ってきてたった一度聴いた。それだけであとはわたしがその装置をずっと使用することになった。蓄音機はずいぶん様変わりしていた。それは箱ではなく時代の先端を走る装置だった。友達の聴かせてくれたレコードプレーヤーに感じたチャチさはなく、音は低音から高音まで美しく迫力があり立体感、臨場感があった。それからわたしも小遣いでレコードを買う羽目になったのであった。
fumio

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