monologue
夜明けに向けて
 



わたしはテープレコーダーの仕様書を読んで今度は入力端子をラジオのスピーカーの端子に接続して音楽番組など様々な番組を録音し始めた。音楽を聴くにはそれで十分で依然としてわたしの家にはレコードプレーヤーはなかった。

 そしてうちに母の母であるオバアチャンが遊びに来たとき、テープレコーダーに録音するからなにか歌って下さい、と頼んだ。すると少しはにかみながらなにやら娘時代に歌ったらしい歌を歌ったが再生してみせるとこんなはずはない、とがっかりしていた。だれでも日頃、自分の声は骨伝導で聴いているのでいい響きと思っているのだがテープレコーダーで再生された音はそのままの音を空気伝導でありのままに聴くのでひどいように思ってしまうのだ。それで録音された歌手の声はリバーブやエコー、ボーカルエンハンサーなどなど多くの機材で聴きやすく処理されるのだ。せっかく、歌に自信を持っていたオバアチャンに悪いことをしたような気がした。
fumio


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )