前日、筆記試験に受かった仲間で試験場にやってきた。
まず日本で運転免許を持っている生徒が実地試験を受けた。日本でも運転経験があるからきっと大丈夫と幸先良い報せを期待して待つ。試験場から街路に出て行くのをみんなで見守っていると途端に停まった。どうしたのかと思っていると、それでテストは終わりらしかった。みんなのところへ帰ってきて落ちた、という。反対車線に入ってしまったのだ。日本で運転に慣れていたのが徒(あだ)になった。車は右側通行なのに左に入ると対向車と正面衝突してしまう。その時点でテストはうち切られるのだ。どうなることかと思う。次の生徒は無事に進行していった。帰ってくるまでどきどきして待つ。しばらくして帰ってくると試験場の横に静かに停まった。採点表をもらって見せてくれた。手書きでfと書かれ落ちていた。安全確認でかなり減点されていた。わたし以外はそれぞれ運転経験がある男達だったのにと不安が大きくなる。もう一人がテストを受けているときわたしの番がきた。昨日稽古した車で待っていると横に試験官が乗り込んできた。東洋系のアメリカ人だった。タイかな、と思った。日本人に対して好感情をもっているようで態度が丁寧だった。とにかくこれから初めて街に出るのだ。おそるおそる進行して行くと当たり前だけど他の車が走っていた。なにも知らないということは強いもので試験官は平気でわたしに指図する。わたしはとにかく安全確認の動作をこれでもかと大きくアピールした。なににもぶつからず試験官のいうままに進んでいると大きな信号にやってきた。多くの車が停車している。汗が吹き出る。命知らずの試験官は「ターーン・レフト」と命ずる。ここを大きく廻って車の流れに入るのだ。わかっていてもあせった。小さく廻りすぎて後ろのトラックにあおられてびびったけれど試験官は「オーケー・オーケー、ゴー・ストレイト」とあまり気にしてないようで機嫌よさそうだった。縦列駐車もなんとかこなし試験場にたどり着くと試験官はその場で採点してくれる。「76点、あまりうまくないけれど、ぎりぎり合格。事故を起こさないように運転してね。わたし日本大好き、Have a nice day!」。
おかげで車に乗れることになった。たった数ドルの費用で運転免許証が手に入ったのだ。
待っていた先輩はわたしが受かったことに驚いて「半年ぐらい運転するなよ」と言った。
fumio
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