「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

頑張る心子(2)

2005年12月19日 20時42分31秒 | 「境界に生きた心子」

 そして心子は、そんな自分を抱き締めることができませんでした。

 心身打ちひしがれて息も絶え絶えのときでも、心子は這うようにバイトに行こうとしました。
 自分自身がコンディションを崩していても、知人から悩みの相談があるとカウンセリングの約束をしてしまいます。
 我が身の苦境より相手の急場を放っておけないのです。
 自分自身が誰より苦しみを知っているからです。

 不調なときは休養してくれと、僕は再三心子に伝えました。
「激しい運動をすると筋肉はボロボロになるでしょ。
 でも充分休息を取ることで、筋肉は『超回復』といって元よりも強くなるんだよ」
「心もそれと同じだって……?」
「休むことも『仕事』なんだよ」
「休むことも仕事……休むことも仕事……」
 心子は何遍もつぶやきながら、その文言を聖書の裏表紙に書き込みました。

「マー君が教えてくれた」
 そうして心子はようやく休むことを覚えていったものでした。

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