「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「精神」 (1)

2009年07月06日 22時03分50秒 | 映画
 
 久々に 映画の感想。

 想田和弘監督の  “観察映画” 第二弾です。

 前作では、 日本の選挙の実態を ありのままに映し出した ドキュメント

 「選挙」 が、 世界的な評価を受けました。

 今回は、 タブー視されてきた 精神病にカメラを向けました。

 岡山の片田舎の 精神科診療所の様子を、

 一切のナレーションや 説明などを排し、 ひたすらカメラに収めます。

 登場する人は全て 撮影を承諾してくれた人で、

 実名で モザイクもかけません。

 想田監督は 精神障害者と健常者との間にある、

 “カーテン” を 取り外したいと願うのです。

 モザイクは 相手のプライバシーを 守ると言いながら、

 実は 撮る人間の立場を 守っていると言います。

 クレームや訴訟を免れることで、 撮る方が楽になるというのです。

 しかし想田監督は、 それらのものも悉く引き受け、

 撮影が終わったあとも 患者さんたちと 一生の付き合いをしていく

 と言っています。

 そこまで覚悟を決めた 監督の姿勢には、 全く感服するばかりです。

 舞台は 診療所と言っても、 古ぼけた大きな民家。

 普通の和室が 診察室や受付、 薬局になっています。

 白衣やユニフォームを 着た人はおらず、 誰が何なのか分かりません。

 待合室は隣の棟で、 幾つかの畳の部屋に

 患者さんたちが 好き勝手にしています。

 机には ペットボトルや食べ物, 煙草などが散在し、

 ただの家に お客さんたちがたむろしている ようにしか見えません。

 ソファで寝ている人も、 よもやま話に 花を咲かせる人たちもいます。

 それらを見ていると、 障害者と健常者の 区別はつきません。

 誰もが 対等な人間です。

 患者さんの一人が 語っていたように、

 健常者にも 完璧な人間などいない、 誰しも欠陥を持っている、

 そこから自らも 偏見を取り除いていったといいます。

(次の記事に続く)
 
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