「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「マン・オン・ワイヤー」 (1)

2009年07月10日 22時41分50秒 | 映画
 
 心子が亡くなった年の 9月11日に、

 テロによって崩落した 世界貿易センタービル (WTC)。

 1974年、 このツインタワーの 屋上の間に ワイヤーを張り、

 地上411メートルの空中を 命綱なしで 綱渡りした男がいます。

 フランスの伝説的 大道芸人、 フィリップ・プティ。

 この壮大な “犯罪” の、

 周到な計画から 実行までを描いた ドキュメンタリー映画です。

 当時の映像と 再現ドラマ、

 現在の関係者への インタビューで構成されています。

 子供のときから 学校に馴染めず 5回も退学させられ、

 独学で 幾多の技能や語学, スポーツを学び、

 各国で芸を披露して回った フィリップ。

 その情熱と 詩的な語り口は 人を引き付けます。

 パリのノートルダム寺院や オーストラリアのハーバー・ブリッジなど、

 数々の建造物の 中空を綱渡りし、 その逮捕歴は 500回以上に及ぶとか。

 彼の命知らずの  “犯罪芸術” に魅せられて、

 力を合わせる 同士が集まってきます。

 フィリップが WTCで空中散歩をする 夢を抱いたのは、

 WTCがこの世に生まれる 6年も前のことでした。

 高校生のとき、 こういうビルが建つかもしれない という新聞記事を見て、

 ここを綱渡りすると 瞬時に思い立ったのです。

 66年に WTCの建設が始まると、 フィリップは仲間と共に、

 フランスからアメリカまで 何度も往復して、 何十回となく下見を重ねます。

 監視の厳しいWTCに いかに侵入するか。

 百数十キロのワイヤーや そのワイヤーを設営する機器を、

 どうやって見つからずに 屋上に運ぶか。

 60メートルも離れた ふたつのビルの屋上に、

 どうやって 鋼鉄のワイヤーを渡すか。

 ワイヤーを引っかけるのは ビルのどの場所がいいか。

 様々な難題を ひとつずつ克服していくため、

 何年にもわたって 議論を交わし、 実験や練習を繰り返します。

 時には 決行をはやるフィリップを、

 まだ計画が杜撰すぎると 親友が引き止め、 大喧嘩になるほどでした。

(次の記事に続く)
 
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