「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「ディア・ドクター」

2009年07月27日 21時05分53秒 | 映画

 前作 「ゆれる」 で 話題をさらい、

 数々の映画賞を獲得した 西川美和監督の作品。

 笑福亭鶴瓶が 田舎の “ニセ医者” を演じます。

 キャッチコピーは、 「その嘘は罪ですか。」

 半数が高齢者という 山村で、 ただ一人の医者・ 伊野は、

 村人たちから 神様のように崇められています。

 研修医として来た 相馬 (瑛太) も、

 初めは 伊野の力量に 疑問は感じるものの、

 村人たちのために尽くす 伊野の姿勢に 次第に感化され、

 自分もこの村で 医者を続けたいと 思うようになります。

(伊野は熱心に 医学書で勉強を欠かしません。)

 何が偽物で 何が本物なのか。

 何が善で 何が悪なのか。

 西川監督は 問いかけるようです。

 劇中で伊野は、 「自分には 医者の資格がない」 と口にします。

 でも 「医者の資格がない」 とは どういうことでしょう? 

 国家資格が ないということなのか、

 金のことしか考えず 患者を省みないということなのか。

 目の前の村人を 助けるために走り続けて、 止まれなくなってしまった 伊野。

 しかし それが行き詰まる 時が来ます。

 突然の 伊野の失踪。

 それもまた、 伊野の人間としての 良心の葛藤から、

 そうせざるを得なかった 選択です。

 そして、 取ってつけたとも言えるかもしれない ラストシーンも、

 また乙で 印象深いものでした。


 ある町で ニセのタクシー運転手が逮捕され、

 高齢者たちが病院へ行けなくなった というニュースから、

 西川監督はこの話を 思いついたと言います。

 「ゆれる」 で 脚光を浴び、

 国際的にも 極めて高い評価を 受けることになった 西川監督。

 「自分は本当は そんなすごい監督ではない」 という思いを、

 この作品に 重ねたというから、 監督のしたたかさを 感じます。

 因みに、 西川監督が事前に 取材を重ねる中で、

 医者でない者が 医者のふりを続けることは 現実にあり得るかどうか、

 現場の医師に 聞いて回ったそうです。

 その答は  「あり得る」 だったというのも、 恐い話ですね。
 
コメント
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