「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「精神」 (2)

2009年07月07日 20時08分22秒 | 映画
 
(前の記事からの続き)

 患者さんたちの話を聞くと、

 やはりそれぞれ 壮絶な体験をしてきています。

 こんな のんびりした田舎でも、

 これほど多くの人が 心を病んでいるのかと思ってしまいます。

 また、 働けないために 経済的な問題も抱えています。

 折しも 映画の撮影時は、 障害者自立支援法が成立する時で、

 患者の自己負担が増えて 困惑する、 社会の矛盾も 浮き彫りにしていました。

( 心子が通院していたころは、

 精神保健法32条の規定で 外来診療は無料でしたが、

 2003年の 自立支援法成立によって、

 患者は治療費の1割を 支払わなければならなくなりました。

 収入のない障害者にとっては、 1割負担でも死活問題です。 )

 しかし 様々な困難を 抱えた中でも、 本を読み 思索を深め、

 趣深い 心に沁みる言葉を 語る患者さんもいます。

 詩人であり、 賢者であり、 ユーモアもたっぷりです。

 こういう人たちがいるのも、

 診療所の “赤ひげ” 山本医師の 存在があるからでしょう。

 ナースやヘルパーよりも 低い給料で、

 自分は年金と 安い講演料で暮らしています。

( 他の先生が断るような 安い講演 )

 無骨なじいさんですが、

 患者さんの話に 耳を傾け、 親身な言葉を投げかけます。

 それによって 患者さんたちは落ち着き、 人を信頼することができるのです。

 患者さんたちが 映画撮影を承諾したのも、

 山本医師に支えられているからでしょう。

 精神障害者の素顔を 映すことなどに、 批判的な意見も あるかもしれません。

 精神障害者と健常者の 間のカーテンは 容易にはなくならないとはいえ、

 こうした一歩が 積み重ねられていくことが 大切でしょう。

 その試みこそが 評価されるべきだと思います。

 カーテンを開けたいという 想田監督の想いは、

 我々に何かを 投げかけてくれるのではないでしょうか。
 
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