(前の記事からの続き)
患者さんたちの話を聞くと、
やはりそれぞれ 壮絶な体験をしてきています。
こんな のんびりした田舎でも、
これほど多くの人が 心を病んでいるのかと思ってしまいます。
また、 働けないために 経済的な問題も抱えています。
折しも 映画の撮影時は、 障害者自立支援法が成立する時で、
患者の自己負担が増えて 困惑する、 社会の矛盾も 浮き彫りにしていました。
( 心子が通院していたころは、
精神保健法32条の規定で 外来診療は無料でしたが、
2003年の 自立支援法成立によって、
患者は治療費の1割を 支払わなければならなくなりました。
収入のない障害者にとっては、 1割負担でも死活問題です。 )
しかし 様々な困難を 抱えた中でも、 本を読み 思索を深め、
趣深い 心に沁みる言葉を 語る患者さんもいます。
詩人であり、 賢者であり、 ユーモアもたっぷりです。
こういう人たちがいるのも、
診療所の “赤ひげ” 山本医師の 存在があるからでしょう。
ナースやヘルパーよりも 低い給料で、
自分は年金と 安い講演料で暮らしています。
( 他の先生が断るような 安い講演 )
無骨なじいさんですが、
患者さんの話に 耳を傾け、 親身な言葉を投げかけます。
それによって 患者さんたちは落ち着き、 人を信頼することができるのです。
患者さんたちが 映画撮影を承諾したのも、
山本医師に支えられているからでしょう。
精神障害者の素顔を 映すことなどに、 批判的な意見も あるかもしれません。
精神障害者と健常者の 間のカーテンは 容易にはなくならないとはいえ、
こうした一歩が 積み重ねられていくことが 大切でしょう。
その試みこそが 評価されるべきだと思います。
カーテンを開けたいという 想田監督の想いは、
我々に何かを 投げかけてくれるのではないでしょうか。