(前の記事からの続き)
WTCの外観が 屋上まで完成したとき、
フィリップたちは 夢を実行に移します。
ビルに内通する人物を 仲間に引き込み、
入館証を偽造し、 警備員の目を盗んで 屋上へ向かう。
最上階で 警備員の巡視に出くわし、
梁の上で 何時間も身じろぎもせず 身を隠したり。
そして、 深夜の間に ワイヤーを設営。
( 何十メートルものワイヤーは、
自重でたわんだり、 揺れたり、 ねじれたりします。
それを防ぐため、 補助のワイヤーを 取り付けなければなりません。
通常の綱渡りでは、 主ワイヤーの中央に 2本の細いワイヤーを繋げ、
その一方の端を 地上に固定するのですが、
400メートル以上の高さでは それは不可能です。
そこで WTCの屋上の 別の場所に
細いワイヤーを 固定することにしましたが、
映画では それをどうやって設営したのかの 説明がありませんでした。
主ワイヤーを ピンと張るところの 描写もなくて、
それがとても残念で 見たかったことです。 )
やがて 日が昇り、 地上を歩く人が 見上げる遥か上空に、
綱を渡っている フィリップの姿がありました。
直ちに逮捕しようとする 警官の目の前で、
悠々と 綱を8往復もする フィリップの姿は痛快です。
その警官自身、 内心では感動しているのです。
もちろんこれは 犯罪に間違いありません。
でも卑劣ではないし、 誰も傷つけず、 むしろ夢を与える。
綱渡りをするという たったそれだけの筋立ての映画が、
観る者を 引き付けてやまない所以でしょう。
アカデミー賞はじめ、 英米の映画賞を 総なめにしたのでした。
「 何故 あんなことをしたのか? 」
必ず聞かれる質問に、 フィリップは いつもこう答えます。
「 理由なんてない 」