「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

無期囚10年目の反省 -- 矯正の現場 (2)

2011年12月27日 21時06分20秒 | 罪,裁き,償い
 
 旭川刑務所で 30回目の冬を迎える 無期懲役囚の男性は、

 金欲しさに 顔見知りの女子高生を絞殺しました。

 毎晩寝る前に、 被害者遺族のいる方角に向かって 正座し、

 「ご冥福をお祈りします」 と唱えます。

 入所当初は、 先が長すぎて 何をしたらいいか分からず、

 毎日を 惰性で過ごしていたといいます。

 同房者が  「こんな所に閉じ込められた 俺たちも被害者だ」 と語るのを聞き、

 自分も そう思うようにしたそうです。

 入所から約10年、 男性は図書係になりましたが、

 注意されると すぐ顔色を変え、 口をとがらせていました。

 指導役の刑務官は、 彼が 被害者のことを忘れてしまっている と感じました。

 「自分の家族が 殺されたと考えてみろ。

 加害者を許せるのか」

 刑務官は何度も問いかけました。

 多くの受刑者は 事件を振り返るとき、

 「自分にとって 損になることをしてしまった」 と、 自分本位の後悔しかしません。

 彼もそうでした。

 男性は独房に移り、 消灯後の2時間、 天井を見ながら考えました。

 離縁した幼い娘が 被害者と同じように殺されたら……。

 殺した女子高生の 悲鳴が聞こえてきました。

 「自分は許されるわけがない。

 本当は命で償うべきでした」

 男性は 次第に顔の表情が 穏やかになっていきました。

 それから20年近く、 反則行為は1度もありません。

 刑務官は語ります。

 「彼は変わることができた。

 ただ、 彼のようなケースは 極めて稀です」

〔 読売新聞より 〕

(次の記事に続く)
 
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