「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

MBTを支える理論

2011年12月09日 12時38分13秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 メンタライゼーションは 普通、 幼少期に徐々に 学んでいくものです。

 子供は 自分の気持ちや考えを、

 ミラーリング (鏡のように映し出すこと) の過程で 学びます。

 例えば 子供が泣いていると、

 親は 「悲しいの?  どうして悲しいの?」 と聞きます。

 親の質問と 子供への感情の関心によって、 子供の感情は 鏡に映し出され、

 認められ (承認され)、  泣くことは悲しいことを意味すると 理解します。

 感情を表す言葉が 与えられ、

 誰かが 理解や関心を示してくれることを 理解するようになります。

 子供が メンタライゼーションを完全に習得するには、 ふたつの初期段階を踏みます。

 ひとつは 「心理的等価」、 もうひとつは 「見せかけモード」 です。

 「心的等価」 の段階では 子供は、

 他者は自分と同じで、 同じことを感じると 信じています。

 他者や世界を、 自分の直接的な経験の 延長として感じます。

 全てのことが 自分のこととして感じられるので、

 圧倒されてしまうという 問題があります。

 (そのために 次の段階があります。)

 「見せかけモード」 の段階では、

 自分の心理状態は、 外界や自分以外の心理状態と 完全に切り離されます。

 全てのことが 非現実的に感じられます。

 基本的には解離と同じで、 不快で孤独な体験です。

 自分が実際に悲しくなくても、 悲しさがどういうことか 話すようなもので、

 悲しさを 「試着」 することができます。

 メンタライゼーションは、 このふたつの段階の バランスを保ちます。

 自分の世界と外の世界は 繋がっていながら、 別のものでもあるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メンタライゼーションに 基づく治療 (MBT)

2011年12月07日 20時52分12秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 MBT (メンタライゼーションに基づく治療) は まだあまり知られていませんが、

 将来的に有効な治療として 期待できるものです。

 アンソニー・ ベイトマンと ピーター・ フォナギーが 開発した治療法で、

 弁証法的行動療法に 似た部分もありますが、

 BPDとは何かという点で かなり異なります。

 MBTは、 自分が何者かという  「自我」 に焦点を当てます。

 BPDは、  「自我構造」 の弱さと 不安定な自己,

 自己理解の浅さによる 障害だとしています。

 MBTは 精神分析的治療法であり、

 弁証法的行動療法よりも  「会話療法」 なのです。

 治療者と話をして、 自己理解,

 他者との関係についての理解力 (メンタライゼーショ ン) を 深めていきます。

 メンタライゼーションとは、

 自分や人の行動は 心理状態, 考え, 気持ちや願望から起こる ということを

 理解する能力です。

 それぞれの行動は、 不意や任意に起きるのではなく、

 感情や考えに基づいて 起こるのです。

 BPDの人は、 心理状態がどのように 行動に繋がっているのかを、

 理解するのが困難だということです。

 衝動的に行動するとき 自分の気持ちや考えに 気付けなかったり、

 心理状態と行動の関係が 理解できないでしょう。

 MBTでは、

 他者の行動が どういう心理状態によって起こるかを 理解することも重要です。

 また、 心理状態と行動は 関係はあるけれども別個のものである、

 ということを 理解することも含まれます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脱おむつ

2011年12月06日 18時12分47秒 | 介護帳
 
 多くの介護施設で、 おむつを外す取り組みが 進んでいるそうです。

 負担の大きい排泄介護に 正面から向き合うと、

 介護の質全体が変わってくるといいます。

 A子さん (80) は病院で おむつを付けた 生活を続けるうち、

 尿意や便意が薄れていきました。

 ある特養に入所すると、  「おむつを外しましょう」 と言われ、

 不安を感じましたが、 施設の取り組みによって、

 排尿や排便の感覚が戻り、 1週間でおむつが外れました。

 排泄のパターンを調べたり、 そわそわする仕草などから、

 尿意や便意を読み取ったりし、 トイレでの排泄を繰り返すうちに、

 おむつが不要な人が 出てきます。

 これに加えて 同施設では、 ハイテク機器の活用しました。

 「ノム・ ダス・ ハカル調査」 と呼ぶ 3日間の調査です。

 食事や水分量の他、

 おむつの中や トイレで出した 尿の量や、便の重さを 細かく記録します。

 さらに超音波測定器で、 排尿前と後に 膀胱内の尿量を 48時間連続して記録。

 データを元に、 その人に応じた トイレへの案内時間を決めていきます。

 おむつを外す過程で、 高齢者がベッドから離れることが リハビリになり、

 自尊心も回復します。

 そのことが 職員のやる気にもつながるのです。

 排泄を見直すことで、 高齢者の食事の様子や 表情,仕草に 目が向くようになり、

 利用者との会話も増えました。

 加えて、 年間600百万かかった おむつ代や廃棄費用も 200万に減りました。

 快適性を追求することで 高齢者の意欲が高まり、 感染予防にも繋がります。

 排泄は 尊厳に関わる問題なのです。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

例年より遅い 外苑の黄葉

2011年12月04日 21時19分15秒 | 心子、もろもろ
 
 今年は 夏がいつまでも暑く、 秋も暖かかったので、

 神宮外苑銀杏並木の黄葉は 例年より遅めでした。

 去年は 見頃を逸してしまいましたが、 今年は 情報をよく見て行ってきました。

 (運動も兼ねて 今年から自転車で。)

 ある程度 葉が落ちていましたが、

 色づいた銀杏の木の葉が、 日の光を浴びて 黄金色に輝いていました。

 でもまだ 青い木もありましたね。

 やはり 個体差が大きくなっています。

 (もみじも まだ緑色でした。)

 今日は日曜日だったからか、 銀杏並木に挟まれた車道が 車両通行止めになっていて、

 車道も人ごみで溢れていました。

 車道の真ん中に立つと、 銀杏並木の向こう正面に 絵画館を望むことができ、

 いつもは見られない 真正面からのアングルで、

 絵画館と銀杏の景観を 堪能することができました。

 いちょう祭りは 年々盛大になり、

 各地のB級グルメやエスニックなど 露店の看板も華やかです。

 長い行列が できている店もあります。

 外国人の観光客も 多く目に付きました。

 銀杏の見事な黄葉は 近年覚束なくなってきていますが、

 反して 人足やお祭りムードは 高まっているようです。

 そんな光景を、 心子はどんな心境で 見ているでしょうね。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

口から食事の実践 -- 胃ろうを考える (5)

2011年12月03日 22時11分29秒 | 介護帳
 
 脳出血で倒れたB子さんは 胃ろうを作り、 特養に入所しました。

 当時は寝たきりで、 栄養は全て胃ろうからでした。

 この特養では  「胃ろう外しプロジェクト」 を行なっています。

 日中は ベッドから車椅子に移り、 胃ろうからの水分量も増やして、

 意識や体の状態の 改善を図ります。

 口からの食事は バナナから始めました。

 経口摂取は3年半ぶりのB子さんは、

 もぐもぐと噛んで飲み込み、 誤嚥もありませんでした。

 食べる量を増やし、 今では昼食と夕食は 口から取っています。

 意識がはっきりし、 言葉も出るようになりました。

 他の入所者も 普通の食事を食べられるようになったり、

 胃ろうを外せる見通しが ついたりしました。

 胃ろうを外せるようになるのは、 せいぜい10%とされます。

 でも プロジェクトに取り組んだ 9人全員が、 胃ろうを外せた施設もあります。

 それらの人は、 元々不要な胃ろうだったと 考えられます。

 急病で入院し、 回復に時間がかかりそうだったり、

 認知症があって 食が細かったりという理由で、 作られたケースです。

 前者は 退院時には外せるし、 後者は 元々必要がない場合が 多いといいます。

 胃ろうにすると 重症に見えるため、 外す努力もされないのだということです。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

栄養状態から 効果を予測 -- 胃ろうを考える (4)

2011年12月02日 20時00分38秒 | 介護帳
 
 脳梗塞で 口から食べられなくなり、 点滴をしていた男性 (85) は、

 鼻のチューブから 胃に栄養を補給し、 約1ヶ月後に 栄養状態が向上しました。

 胃ろうにした場合の 全身状態の改善が、 期待できる水準と 判断されました。

 胃ろうにする判断の根拠は、  「予後推定栄養指数」 と呼ばれ、

 元々は がんなどの外科手術に 耐えられるかどうかを予測するものです。

 タンパク質の濃度を示す 血中アルブミン値と、

 体の抵抗力を示す リンパ球から算出します。

 この指数が一定以上だと、 その後の生存期間が 長いことが分かったのです。

 胃ろうを作る前から、

 医師, 看護師, 管理栄養士, 薬剤師などによる チームを作り、

 栄養や水分量を調節し、 言語聴覚士による 嚥下リハビリも行ないました。

 男性は 胃ろうを付けて1ヶ月たたずに 口から少し食べられるようになり、

 退院して 自宅に戻りました。

 今は 刻み食とおかゆを 自分で食べています。

 胃ろうで状態が改善しても、

 いずれは意思疎通ができず、 寝たきりなどになる 可能性があります。

 そうなってからの生存期間は、 胃ろうにしなかった時より長い など、

 胃ろうの短所も 説明することが必要です。

 可能な限り適応を考え、 家族にも納得してもらい、

 「患者や家族を 幸せにする胃ろう」 が望まれます。

 将来食べられなくなった時に どうするか、 医師と相談しておくといいでしょう。

 終末期に食べられなくなり、

 老衰のような形で亡くなっていくのは 自然なことだというのも、 ひとつの認識です。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寝たきり認知症には 効果が薄い -- 胃ろうを考える (3)

2011年12月01日 19時08分03秒 | 介護帳
 
 胃に直接 栄養を補給する胃ろうは、 栄養状態を改善する効果は 高いとされます。

 鼻から胃に通したチューブや、 血管からの点滴より、

 充分な栄養が取れ、 苦痛が少ない、 口からの食事と併用できる、 などが利点です。

 肺がんで、 誤嚥性肺炎を起こして 入院した女性 (86) は、

 全身が衰弱し、 看取りのために 自宅へ戻りました。

 ところが、 鼻のチューブの栄養によって 状態が改善し、

 入院して胃ろうにしたところ、 床ずれも治り、

 会話もできるようになって 退院したのです。

 自宅で1年以上、 有意義な時間を過ごし、 家族に看取られました。

 胃ろうは 食事の誤嚥も減り、

 長期入院も抑えられるなどの 社会的要因もあって急増。

 現在、 約26万人が使っていると言われます。

 しかし 胃ろうが適切でない ケースもあります。

 鼻のチューブか胃ろうを 使ったあとに亡くなった、

 寝たきり認知症高齢者の調査によると、

 胃ろうなどにしなかった人より 早く亡くなったり、

 肺炎や感染症で死亡する 確率が高くなりました。

 認知症のある寝たきりの人には、 栄養を改善して 延命する効果は薄いうえ、

 亡くなるときは 全身のむくみや肺炎などで 苦しむことが多いのだといいます。

 以前は年に80~90件あった 胃ろうの造設は、

 10年度は50件台になっています。

 欧米では、 「胃ろうに 誤嚥性肺炎の予防効果はない」 というのが 定説です。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする