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《本記事のポイント》
- 元駐日イスラエル大使は、日本に「中東和平」を期待
- 「イスラエル建国の父」は、日本でシオニズムに目覚めた
- 日本は、ユダヤ人との共通点も多い
ユダヤ教徒の丸い帽子をかぶり、エルサレムにあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」で祈りを捧げるトランプ米大統領の姿が、世界中で報じられた。現職のアメリカ大統領として初めて同地を訪問したことは、中東和平にかける情熱の強さを伺わせる。
トランプ氏は今回の外遊において、紛争状態にあるユダヤ教国のイスラエルとアラブ系のパレスチナを歴訪。イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス自治政府議長と会談した。
同氏は中東和平交渉について、「最も困難な取引の一つだが、最終的に合意にたどり着ける感触がある」と自信を示している。
中東和平に日本は協力できる
とはいえ、アラブ諸国からの反発が強いアメリカだけで和平を仲介するのは、何かと困難が伴う。
実は、元駐日イスラエル大使のエリ=エリヤフ・コーヘン氏が仲介役として期待を寄せるのは、日本だ。コーヘン氏は大の日本好きで、空手の名人でもある。コーヘン氏は、日本が中東和平に貢献できる理由として、3つを挙げている。
1つ目は、イスラエルもパレスチナも日本に敬意を示していること。日本は、イスラエルとアラブ諸国に対して、中立の立場を取っているためだ。
2つ目は、日本は中東から遠い位置にあるため、政治的な利害関係がないこと。
3つ目は、日本は中東に対して、宗教的な対立関係にないことだ。
さらにコーヘン氏は、「日本がイスラエルと良い関係を結ぶならば、他のアジア諸国もイスラエルと良い関係を結ぶようになるのではないか」と期待している。
「イスラエル建国の父」は日本でシオニズムに目覚めた
日本人にとって、イスラエルやユダヤ教はなじみがないように感じる。だが、実は日本は、イスラエルの建国に影響を与えていた。
ヨセフ・トルンペルドール(1880~1920年)は、「イスラエル建国の父」として、ユダヤ人なら誰でも知っている人物だ。
トルンペルドールはユダヤ人だが、ロシアに生まれたため、ロシア人として生きようと努力していた。日露戦争が始まると、ロシア兵に志願。片腕を失いながら勇猛に戦ったが、日本の捕虜になってしまう。そして大阪の収容所で1年間生活したことをきっかけに、ユダヤ人としての自覚が強まっていった。
当時ロシアではユダヤ人への差別があり、ユダヤ教の礼拝や習慣を行なえば、迫害を受けた。だが日本では、捕虜を親切に扱っており、礼拝なども自由に行うことができた。トルンペルドールは日本で暮らすうちに、率先してユダヤ教の礼拝を行うようになった。
収容所から出ることが許されると、トルンペルドールはイスラエル建国前のパレスチナに帰還し、ユダヤ人の軍隊を組織した。これが、現在のイスラエル国防軍の創設につながっている。
当時、ユダヤ人たちは各国からパレスチナに帰還し、各地に小さな集落をつくって細々と暮らしていた。アラブ人たちは、ユダヤ人たちに執拗に攻撃を繰り返しており、トルンペルドールも銃弾を受け、ついに「国のために死ねて本望だ」という言葉を遺して亡くなった。
そしてトルンペルドールの志を受け継いで起こったのが、ユダヤの若者たちによるイスラエル建国運動(シオニズム)だったのだ。
ユダヤ人と日本人の類似点
また、ユダヤ人と日本人には、類似点も多い。
例えば、ユダヤ民族は、神に選ばれて十戒を授けられた"神選民族"と呼ばれているが、日本人も天孫の末裔、つまり"天孫民族"と呼ばれている。神話体系が似ているのだ。
またイスラエルは、荒れ果てた砂漠から国をスタートさせ、今では野菜を輸出したり、世界最先端の技術力を持つまでになっている。日本も天然資源が乏しく、第二次大戦では廃墟と化したが、今では世界第3位の経済大国だ。共通するのは、資源の乏しい国のために働いた、優秀な人々がいたという点だろう。
さらにイスラエルはアラブ諸国という仮想敵国に囲まれており、日本も北朝鮮や中国という独裁国家が近隣にある。最大の同盟国アメリカが、どれだけ頼りになるのかを心配している点も共通する。日米間には日米安全保障条約があるが、イスラエルとアメリカの間には、安全保障条約はない。
日本こそ、イスラエルとパレスチナの仲介役としての役割を果たす条件がそろっている。後は、日本の自覚次第だ。
(山本泉)
(参考書籍:エリ=エリヤフ・コーヘン、藤井厳喜著『ユダヤ人に学ぶ日本の品格』)
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