http://the-liberty.com/article.php?item_id=12388
1956年の日ソ共同宣言から60周年であることを記念して、モスクワで22日、専門家が集う「日露国交回復60周年フォーラム」が行われた。
この席上で、元駐日ロシア大使で、現在はモスクワ国際関係大学教授を務める知日派のアレクサンドル・パノフ氏が、先の日露首脳会談を総括するスピーチの中で、重要な発言を行った。
写真説明:スピーチを控える神武氏(中央の女性)と武川氏(その左手前)。
モスクワ国際関係大学で行われたフォーラムでは、同大学学長のアナトリー・トルクノフ氏や上月豊久・駐露日本大使などのスピーチの後、宗教法人・幸福の科学の武川一広・国際広報局長と、幸福実現党の副党首(兼)広報本部長の神武桜子氏がスピーチを行ったことは昨日の本欄で報じた( http://the-liberty.com/article.php?item_id=12384 )。
このフォーラムで、元駐日ロシア大使のパノフ氏が、「プーチン大統領の日本訪問についての総括」と題し、約30分間のスピーチを行った。以下は、パノフ氏のスピーチの要旨。
「日本にとって、ロシアは理想的なパートナー」
「日本が北方領土を買いたいと思っていることは知っている。しかし、プーチンは売らない。2島返還したら、3島目、4島目と領土を取られてしまうことを懸念しているからだ。私見だが、戦略的な解決策や最後の道筋が見えるまで、交渉において日露のどちらかが一方的に上の立場になることはない。日本にとって、ロシアは極東における経済的に理想的なパートナーではないだろうか」
この指摘からは、ロシア側に、積極的に日本との関係を深めていきたいという考えがある一方で、2島返還や北方領土の共同管理を行えば、領土を日本に取られるのではないか、という懸念があることがうかがえる。
「中国と組んでいるのは、経済的な利益のため」
パノフ氏は、ロシアの中国へのスタンスについても赤裸々に語った。
「ロシアには、『孤立からの脱却』というテーマがある。日本がロシアと平和条約締結を目指しているのは、増大する中国の脅威に対抗するためだと理解している。日本は中国市場に依存するのをやめて、ロシアにも新しい市場の可能性があると知るべきだ。日本のエネルギーは限られており、農業は伸び悩んでいる。
追い込まれた状況の中、日本の最良のパートナーとなるのが、ロシアだ。極東地域では日露が農業分野で協力するという計画も始まっている。ロシアが中国と組んでいるのは、あくまでも経済的な利益のためである。日本の新市場開拓は極東での日露共同開発が端緒になるだろう」
2014年のクリミア併合で、欧米がロシアに経済制裁を行い、日本もそれに追随した。その後、ロシアは中国との協力関係を深めていったが、パノフ氏の言によれば、それは「あくまでも経済的な利益のため」ということになる。
「安倍政権下での平和条約締結は難しい」
そして、後半で、パノフ氏は平和条約の締結について衝撃的な見通しを語った。
「安倍政権下での平和条約締結は難しいと思っている。安倍首相は北方領土の共同管理・開発を提案して、今の膠着状態を改善すると言っているが、共同管理についてロシアの国内世論は反対だ。
平和条約が締結できないのは、根本的には信頼がないから。信頼があれば、ロシアは北朝鮮の水爆実験の問題解決にも貢献できる。ロシアは日本に対して軍事的脅威を感じていない。長期的に見れば、日露間に壁(前線)を作るべきではない。ロシアの日本研究家はネガティブな情報を強調する傾向があるが、積極的な方向を見出すことが大事だと思う」
安倍首相はプーチン大統領とこれまでに16回も会談を行っているにもかかわらず、目立った外交成果を得られていない。それどころか、どんどん関係が後退している。決断の速いプーチン氏が、安倍首相を「信頼できない」と考えてもおかしくない。
これに対し、今回モスクワでスピーチした幸福実現党は日露会談直後の今月17日、以下のような党声明を発表している。
「北方四島はわが国固有の領土であり、あらゆる機会を通じて、引き続き領土交渉の進展を図るべきです。その一方、地域の安全保障上、最大の不安定要因である中国を牽制するうえで、ロシアとの関係強化は重要であることから、領土問題をいったん棚上げしてでも、経済や安保両面での関係強化、平和条約締結を目指すべきだというのが、わが党の考えです」
いま、安倍政権に必要なのは、欧米に追随するだけの外交から脱却し、大きな世界の潮流の中で、日本の発展・繁栄を実現する「国家戦略」を描くことだろう。そうでなければ、戦後の世界のあり方を変えようとしているプーチン氏と、互角に渡り合うことはできない。
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