ヨーロッパへの重要な海上路であるスエズ運河の入口手前にあるソマリアの沖合とアラビア半島南端のイエメンの沿岸との間の海域で、ここ数年、世界中の船舶を狙ったソマリア人海賊による船舶略奪事件や、船員誘拐人質事件が新聞を賑わすことが、昨今特に多くなった。
日本政府も、海上保安庁の巡視船ではなく、海上自衛隊の護衛艦やら哨戒機を派遣するらしい。憲法問題はともかくとして、海運に頼る日本としては、既にヨーロッパ各国や中国、韓国までもが自国船舶保護の目的で海上警備活動していることから、この際派遣もやむなしかと思っていたところである。
ところが、どうもその海賊達はそもそも、ソマリア海域で密漁したり、産業廃棄物を不法投棄していた外国船を追い払っていた漁民だったのだという。例えて言うならば、例は悪いが東京湾の魚介を密漁に来る外国船や東京湾沿岸に産業廃棄物を不法に棄てに来る外国船を追い払っていた東京や千葉、神奈川の漁民達の一部が、海賊になってしまったようなものらしい。
勿論、海賊行為で海運品を略奪し、人質を捕って身代金を要求する海賊行為を何ら正当化する理由になる筈もないのであり、彼等による海賊行為は断罪されてしかるべきである。
しかしながら、海賊発生のそもそもの原因が、我々先進国工業側にあり、更にはブッシュ、小泉(竹中)政権時代に拍車が掛かったグローバリゼーションにより、南北経済格差が拡大し、経済的に弱い国がもたらした貧困が、事態をより深刻化させたという事実には何ら疑いはなく、何とも後味の悪い話なのである。
更には、この貧困が、無政府状態のソマリアの漁民や内線による戦争孤児の青年達に結果として海賊行為を助長させるのみならず、その海賊達の武器調達をしている国際的な過激派組織への資金源にもなっているらしいのである。
遙か遠い所で起こっている、昨今の海賊事件の裏側に隠された事実を知って、暗澹たる気持ちにさせられてしまったのである。