行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

米国E-1,E-2査証についての勉強会

2012-05-22 12:10:32 | 行政書士のお仕事

 昨日21日夕刻、イミグレーション・ロー実務研究会』(Immiken)にて、

 元米国大使館査証担当官であった船曳信行氏による

 第2回目のセミナー、「E-1、E-2査証について」が行われた。

 日本の外国人在留制度は、米国の移民・在留制度や

 査証制度を参考にしたと言われている。例えば、

 基本的には米国の国土安全保障省移民局(日本の入管に相当)

 が発行するPETITION(日本の在留資格認定証明書に相当)を

 先ず取得しないと、在日米国大使館では、査証が発給されない。

 ところが、日米通商条約に基づいて、例外的に移民局のPETITIONなしに、

 直接在日米国大使館が発給できる数少ない労働可能査証が、

 このE-1(駐在員)、E-2査証(投資家)らしいのである。

 一般的には、米国移民弁護士に高価な報酬を払ってPETITION

 を事前に取得する方法は費用的にも時間的にも面倒であり、

 その手間を嫌う日本企業が多いことから、E-1、E-2査証を

 在日米国大使館で直接取得したがる日本企業が多いようである。

 ところが、このE査証は、通商条約に基づく駐在員や、米国へ投資する

 日本企業の幹部職員などに対する査証であることから、

 申請人が日本人で、派遣される企業が50%以上の日本資本の

 企業でなければならないという条件が付く。

 つまり、在日外資系企業に勤務する日本人エグゼクティブは、

 企業が外国資本による企業である場合、このE査証は取得できない。

 更には、日本企業の資本構成者の中に、米国永住権を持つ者がいれば、

 これも日本資本とみなされないので、特に注意が必要だ。

 また、E-1では、派遣元日本企業と派遣先在米子会社又は関連会社との

 取引額が51%以上なければならないという厳しい要件もある。

 一方、E-2(投資家)査証では、子会社の米国での立ち上げ時の

 幹部職員等の中期滞在者には、便利な査証かもしれない。

 このE査証を日本の在留制度に、敢えて当てはめてみるならば、

 「人文知識・国際業務」、「技術」や「投資経営」の在留活動が認められている

 短期滞在的な性格をもった査証(日本には存在しない在留資格です。)、

 とでも説明すれば、理解して貰える同業者は多いのではないだろうか。 

 ちなみに、上記要件に該当しない場合には、米国移民弁護士等を通じて、

 事前にL査証(同系列内企業駐在員)発給為のPETITIONを

 移民局より取得しなければならないことになる。

 もう一つ注意すべき点として、米国は移民受入国家ではあっても、

 入国当時の在留資格から永住への変更申請は原則として認めない

 ことにも注意が必要である。

 つまり、永住(immigrant)なのか、非永住(non immigrant)なのかを

   当初から明確にしなければならないのである。

 従って、非永住系の在留資格(査証)を得た外国人は、

 最終的には本国へ帰国することを条件に在留許可されている為に、

 何年経過したとしても、原則として永住申請はできないようである。

 また、永住する疑義のある申請者は、査証発給や更新を拒否されるので、

 親兄弟や子供などの親族が既に米国に居住している日本人の場合や、

 L査証(同系列内企業駐在員)やB-1(商用)ビザを申請する

 中国系や韓国系の社員の場合には、特に注意が必要なようだ。

 次回、第3回目のセミナーでは、具体的なE査証事例による解説が行われる。

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【追記】上記の中で、「原則として永住申請はできない」と書いた部分で、

   ニュアンスが違う箇所あり! とのご指摘を船曳先生ご当人から

   ご連絡を頂戴致しましたので、下記に先生のご説明を記載させて

   頂きます。 

 米国移民・国籍法(Immigration and Nationality Act)第214条(b)の概念

として、アメリカ大使館領事は、「査証申請の時点で、アメリカへ入国後、

その在留資格を変更して永住の申請をすると思われるような申請者に

対しては、非永住査証を発行しない」、ということに注意する必要がある

との考えを持っているようです。従って、領事は、その状況証拠次第の

判断で、査証発給を拒否するそうです。

 また、非永住査証で入国後、何年か経過して、正当な理由があれば、

永住申請は可能だそうですが、その際にこの資格変更を認めたケース

について、移民局は、非永住査証を発行した当該大使館にこの変更

許可の通知を送るそうです。これは、法律上は、Section 245 にて、

非永住から永住への資格変更を認めているからだそうです。

 しかしながら、このような資格変更の通知を受け取った大使館は、

自分たちの仕事を非難されているような感じを受けて不快に思うのだ

そうです。

 例えば、F-1ビザという学生査証を受けた日本人の学生が、

学業終了後に、アメリカの企業に採用された場合、その後永住査証を

申請することは、正当理由として許されているのだそうです。

 しかし、ある留学ビザ申請者が、最初から留学後に、あるいは留学中に、

アメリカでの就職を予定しているような状況が見られる場合には、

領事は、その申請者に対して留学査証を発行しないのだそうです。

 また、申請者本人にはそういう就職の予定とか「意図」がなくても、

外見上、例えば、家族や親せき等が米国に居るという状況の場合、

留学査証取得は永住する可能性が排除できない以上、非永住査証

の発給が非常に困難になるのだそうです。

 更には、面接で、ふと、「アメリカが大好きですから、骨をうずめる

覚悟で勉強します」などと言ってしまうと、永住を目的としていると

誤解されて、非永住査証は拒否となるのだそうです。

 つまり、領事はすべての申請者を永住者とみなしなさい、と214(b)

に書かれてあるのでこのような発言を聞くと永住者と判断するだそうです。

 そこで問題なのは、一旦査証が拒否になった後でそういう予定や「意図」

が全く無かった、或いは、無いと、立証・証明して行くことは非常に困難と

なるのだそうです。これは日本の入管当局への申請も全く同様ですね!

 以上が、船曳先生からご指摘頂いた内容です。

 

コメント
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