1月5日土曜日、築地恒例の初競りで、魚の王様である本マグロで、
1本(222kg)の国産の天然本マグロに、1億5,540万円(kg当たり70万円)
という馬鹿値が付いた!
なぜ、私が馬鹿値かというと、例えば、昨年11月時点で、
2~300万円(kg当たり9千円~1万3千円程度)の値段が付いていた
天然本マグロと、味はほぼ同じだと断言できるからである。
初競りの値段は、基本的にはご祝儀相場、縁起物相場となって、
通常の取引値の2倍、3倍になることは、業界では当たり前であるが、
ここ数年の初競値のように、本当のマグロの美味しさが
分かっているのかも怪しい(最近まで、多くの中国人は刺身は食べなかった)
香港の金満バブル成金連中に数十万円のコース料理として出す
寿司レストランチェーンの経営者の香港中国人と、
マスコミでの宣伝効果を狙った、回転寿司チェーンの日本人オヤジとの
意地の張り合いで、このような馬鹿値が付いてしまったようである。
食べてもいないくせに、なぜそんな事を私が言えるかというと、
昔話で恐縮ではあるが、何を隠そう、1997年秋~1998年1月当時、
私は、実は築地本マグロ市場で生の本マグロの価格を左右できる
最大の生の本マグロ供給者側の出荷責任者であったからである。
当時私は、スペイン畜養マグロプロジェクトを行っていた某日本企業の
現地子会社の取締役兼総支配人という運営責任者の立場にあり、
朝、港で私が決めたスペイン畜養マグロの出荷本数次第で、
築地の生マグロの市場価格が左右される立場にいたからである。
もっとも、所詮畜養マグロという人工飼育された本マグロであるから、
一本釣りされた日本産の天然物の本マグロが市場に出された場合には、
一番競りの本マグロとして並ぶことは中々の至難の業だったのである。
それでも、当時築地から打診された成長ホルモンやマグロの赤身成分である
アスタキサンチンなどの薬品類を一切使わず、高品質な天然餌にこだわり、
丁寧に育てあげた私の指揮したスペイン畜養本マグロは、一夜にして
市場で高い評価を受け、前年まで無名の会社であったその会社は、
一躍、生の本マグロ業界では、有名な存在となった経緯がある。
この様に、そもそも生の本マグロ業界は、冷凍マグロ業界と異なり、
一攫千金を目指す成り上がり系の可成り怪しい連中が今現在でも跋扈し、
そういった連中でさえも、この業界で成功を収める可能性を秘めた
特殊な世界なのだ。
と言う訳で、晩秋や初冬に築地で落札された国産天然物の生本マグロと
今回の1億5千万のマグロとの味はほぼ同じなのである。
と、元関係者である私が断言できるのである。
いや、下手をすると、2~300万円の国産天然本マグロ、
いやいや、それ以下の値段の生の本マグロの方が、
質や味が良い場合も十分にあり得るのである。
これが、生の本マグロ業界の実態なのである!