あるIT企業に勤める中国人の方の個人的な相談に乗っています。数年前に、そのIT系企業から、新卒者として採用したいと依頼され、私が手続きした中国人の方です。
ところが、一昨年、就職したばかりなのに、癌に冒され長期休養を余儀なくされた、まだまだ若い中国人の方です。年齢で言えば、私の娘のような方です。その方のお母様(私よりも若い)が、来日する為の査証を中国で申請したところ拒否されたというのです。
「一体どのような申請をしたのですか?」
提出した申請書類や添付書類の写しを見て、その原因が即座に分かりました。
「日本でのお母さんの滞在スケジュール表、全部嘘のように見えますが・・・」と私。
「会社の人達が、みんなで考えてくれて書いた内容なのですが・・・」
「でも、この滞在スケジュール、どう見ても嘘に見えますよ!それが原因だと思いますが・・・」
「お母さんは、あなたの病気のことが心配で、日本でどのように働いて、生活しているかが知りたいのではないのでしょうか?」
「そうです。お父さんも、本当は日本に来たいのですが、仕事の関係で中々休めないのです。」
「だったら、この様に観光ばかりの嘘のスケジュール表ではなく、ありのままの日程表、つまり、XXさんの家で家事を手伝うとか、XXさんの勤務先を実際に見に行くとかを、正直にありのままを書いたら良いじゃないですか!」
「お母さんやお父さんは、病気にも関わらず、日本で働いているあなたの事が毎日毎日心配なのですよ。年齢的に私も同世代ですから、お母さんやお父さんの気持ちが良~く分かるのです。病気のあなたが、日本でどのような会社に勤めているのか。会社の人達はどのような人達なのか。あなたがどのような所に住んでいるのか。今通っている病院の医師は大丈夫なのか。友達はどのような人達なのか等々、心配する事は山ほどある筈ですよ。」
「正直にXXさんが、癌で手術をした事。それでも日本に戻って来て引き続き働いている事。それを中国のご両親がとても心配している事。ご両親はあなたの日本での生活状況をこの目で見て、確認したいと思っている事等々を正直に書いて下さい。そして、これらの事を裏付ける資料として、医師の診断書などを適宜添付して下さい。病気にも関わらず、外国暮らしを続けている娘の様子を、実際に見てみたいと思う親心は世界中皆同じですから。」
そうして、準備し直した査証申請書と添付書類を見せに、昨日再び事務所に来たのでした。数々の添付資料の中の診断書には”XX癌、肺転移”と書かれてありました。決して簡単な病状では無いようです。そんな彼女の重篤な病状に心配をしない親など居ない筈は無いのです。おそらくご両親は、彼女に日本へ戻って欲しくなかったのであろうと私は想像します。でも、もしもの事があればと、彼女のご両親は娘が大好きな日本に再び行かせてあげたのだと私は想像しています。
そんな娘が、日本でどうやって暮らしているかを、確認したいと思わない親は居ないと断言できます。人道的見地からも、彼女のお母様の短期滞在査証を是非発給して頂きたいものです。もし、日本総領事館の方々が、人並みの心をお持ちであるのならばの話ですが・・・。