一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『株主に勝つ・株主が勝つ』

2008-04-18 | 乱読日記

『敵対的買収の最前線』同様、toshiさんの課題図書になっていた『株主に勝つ・株主が勝つ―プロキシファイトと総会運営』をようやく読了。

これも前半は上の本と同様講演会のパネルディスカッション、後半に論文が載っているという構成です。

後半の西本弁護士の論文「株主提案・委任状争奪戦にまつわる法律上の諸問題と実務上の戦略」は、実務的にかなり細かい部分まで網羅的に検討していて、手元に置いておくと万が一の時のために(または自分から仕掛ける時のために)便利です。
パネルディスカッションは久保利弁護士がモデレーター、パネリストに江頭憲治郎教授を配し、なかなか濃い目の内容になっています。  

パネルのまとめでの久保利弁護士の言葉。  

要するにわれわれが今置かれている現状というものは、・・・最高裁判例が確かたる基準を一般論として示しているわけではない。一定の射程距離でそこから先は・・・次の判例が出てみなければわからないと。一体サメ寄せになってしまったのかサメよけになりうるのか(go2c注:ブルドックソース事件のように買収者への経済的補償が必要となると買収者を遠ざけるはずの防衛策がかえって買収者を誘引することになりかねないということ)、何の意味もなかったのか、こういう状態に実は今いると。私が今日お聞きの方々に少なくとも言えることは、次に判例を取る第1号にはならないでいただきたいと、・・・そういう点でやはり事前警告型の買収防衛策というのはやっぱりサメよけの効果を期待して、毅然とした対応策をとる・・・仮に発動段階で、特別委員会が駄目だと言われても、何だと言われても、その判例第1号にはうちはならないんだと。それは他社さんにやって頂いて、敗けたら特別委員会の方も考え直すさというぐらいで事前の対応をしていくことが必要な時代ではないかなと。

ご指摘の通り、多くの企業はとりあえず標準的な事前警告型買収防衛策を導入または導入をスタンバイしつつ様子見、というのスタンスを取っているのではないかと思います。

もっとも「1番くじ」を回避しようというのは自分で努力しても限界があるところが悩ましいところです(上場企業としては仕方ないと言えば仕方ないわけですが。)。
いったん1番くじを引いてしまうと、待ち構えていた弁護士やM&Aアドバイザーの自薦他薦、その他もろもろ外野からのヤジアドバイスが殺到して、さながら「公開実験」のようになってしまうのは目に見えています。

しかも、今までの事例を見ると、映画『七人の侍』のように「勝ったのは侍(弁護士・アドバイザー)たちでなく農民(依頼した企業や買収者以外の株主)だ」となればまだいいのですが、どうやら侍の方が名を上げることが多いようで、あまり農民は幸せになれていないようにも思います(しかもブルドックのケースでは野武士もお土産をもらって帰ってますしw)。  

もっとも農民としても、襲われた他の村の事例を教訓にせっせと土塁を作ろうとしているわけなのでどっちもどっちですが(笑)


 

コメント
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