一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 』

2011-12-21 | 乱読日記

就職活動ノウハウ本を学べるというよりは、現在の就職活動をめぐる企業・学生・大学各プレイヤーの構造がわかることができる本。

先日紹介した『僕は君たちに武器を配りたい』が同書の著者自身のようなマッキンゼーでインターンシップができるレベルの「上級者」を意識して、「就職活動」のさらに先を見据えて書かれているのに対し、本書は中堅校から就職困難校までの大多数の大学生に対し、世の中の仕組みを理解することでまずは就職活動に取り組む心構えを準備してもらおうという本になっています。

著者は現在の大学生の就職戦線はこのような構造になっているといいます。

  • 就職ナビサイトの利用が基本となったために学生の企業の採用情報へのアクセスが容易になった。
  • しかしその反面、現在の就職難をうけて、大量の学生それぞれが多数の企業に応募するという状況が生じている。
  • 企業の人事部は応募者数が自らの評価の指標となるため、企業説明会などではスマートな人事マンや若手社員が夢や希望を与えるイベントと化している。
  • 一方で企業側も募集人数の数百倍という大量の応募者をさばくため、選考においては効率を優先せざるを得なくなっている。
  • 大学も企業とのコンタクトが大学で開催する企業説明会程度になってしまい(しかも中下位校には大手企業は来ない)キャリアセンターといっても身のあるアドバイスはできず、大学志願者増のための実績データづくりに追われている。

要するに、景気低迷で求人数(分子)が減る一方で大学全入時代で大学生(分母)が増えたという状況で、その増えた分母が就職ナビサイトのなかにひしめき合うという一見公平そうに見えるが実は非効率な市場になっているということのようです。

そういう状況に問題意識を持つ著者は、その中で学生が不必要に「テクニック」習得にあくせくしたり自信を失ったりしないための就職活動に取り組む心構えやポイントを語っているので、学生にとっても参考になる部分は多いと思います。
そして「分母」の多さについては筆者はこう主張します。

大学教育の行く末として、アカデミック追求型と職業教育校の二手に大きく分かれていくのではないかという議論がずいぶん前からある。大学教員をはじめとする知識人たちがさまざまな大学論を展開しているが、正直言って、ご自身が勤めている大学階層の中でのみ通じる議論をする方が大部分だと思う。最上位と上位と中堅と下位と低辺とでは学生の質も世間からの扱われ方もこんなに違うんだぞ、ということをあまりご存知なく、というかわざとスルーしているような方も散見され、大学論の本を読むたびに私はどこかしら不満を覚える。
アカデミック追求型と職業教育校の二分化は、自然とそうなるというより、積極的に分けていったほうがいいと私は考えている。中途半端に並存させるよりかは、はっきり分けたほうが学生も教職員もビジョンを共有しやすい(もちろん、職業訓練校においても、基礎学力が求められることは言うまでもない)。

『僕は君たちに武器を配りたい』では大学で「リベラル・アーツ」を学ぶことの重要性が説かれていますが、リベラル・アーツの教育を全ての大学が提供できる余裕があるわけではなく、また、全ての学生が望んでいるのではない(または習得できるわけではない)ことを前提にした現実的な見方かもしれません。

それをもっと現実的に描いているブログがこちらです Fランク大学生は大学で何を学ぶべきか?(統計学+ε: 米国留学・研究生活)

少々寂しい気もしますが、大学・大学生というものの相対価値が低下してきている以上仕方ないかもしれませんし、大学を受験する学生にとっても何を目指すかがはっきりした方がかえってわかりやすいかもしれません。



コメント
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