著者はベンチャー起業し上場を目指すも成就直前で役員の造反にあい、企業が瓦解する中、個人保証を入れていた3億円の負債を抱えた状態から立ち直り、その後経営コンサルタントなどを経て、さまざまな成功本に共通する法則を分析した本が人気になり、現在は執筆業をメインにしているという波乱に富んだ経験をしてきた人です。
僕自身はネットバブルやベンチャーブームには直接関わりがなかったのであまりイメージがわかないうえに、固有名詞や事業の詳細についての記述を避けているので、あまり臨場感が伝わってこないのが残念でした。
なので部外者にとっては業界の内幕話を期待すると期待はずれに終わります。
前半部で面白かったのは、借金の返済の順序は「人(従業員の給料)→モノ(仕入れ)→カネ(金融機関)」の順にすべきということくらい。
エピソード自体はいろいろなところにまぶしてある人生訓を読むための舞台回しと考えた方がいいのかもしれません。
一時間半くらいで読めてしまうという手軽さも含めて、ここのところが著者の文筆家としての成功のノウハウなのでしょうか。
面白かったのは、著者が文筆家として成功本に共通の法則をまとめるにあたって、自らを成功実験のモルモットにしたというところ。
成功の法則というのは著者曰く
主なところで言うと「早起きする」「時間とお金と人間関係を管理する」「目標を定めて行動する」「成功ノートに目標を書く」「潜在意識の力を利用して日々生活を送る」「願いはかなうと心のそこから信じる」というようなことである。
とシンプルなのですが、そこまでの覚悟をもって徹底することが必要だということですね。
ただ、ちょっと疑問なのは、著者のベンチャー企業が頓挫した理由のひとつが会社の上場をゴールにし、キャピタルゲインでセミリタイアを目指していたため、上場の先の企業経営のイメージがないまま一攫千金狙いの人々の集まりになっていたからではないかと思えることとの関係です。
つまり、目標設定が適切でなければ「成功」は難しいのではないか、目標を設定するために視野を広く持つことや、「成功」した後の自己イメージが正しいものであることが大事だったりするんじゃないのかな、とオジサンとしては思った次第です。