先日林業についてのセミナーで本書の著者が社長をつとめる三重県の速水林業のことが取り上げらtれていたので早速購入。
印象的だった部分をいくつか
日本の森林は今がいちばんいい状態
江戸時代は木材の需要が多く、無計画な伐採がされたため、森林は悲惨な状態だった。
* 屋久島に行った時にかなり高いところにある「天文の森」が天文年間の切り出し所だと知って驚いたことがあります。博物館では江戸時代には屋久杉の伐採はほぼ山の頂上近くまでおこなわれ、禿山に近くなってしまった歴史が展示されています。
明治になって植林が始まったが、第二次世界大戦でまた大量に伐採された。 戦後は伐採と同時に造林が進められ、現在日本の森林は2500万haと終戦時の2倍になり(うち1000万haは人工林)、現在は日本林業の最も豊かな状態にある。
しかし皮肉にも
戦後、延べ10億人の人間を使い、現在の金額に換算して約25兆円分の投資をしたにもかかわらず(日本林業経営者協会の試算)、木材価格が安いためにビジネスとして林業が成り立ちにくくなっている
広葉樹が善玉で針葉樹が悪玉というわけではない
戦後のスギ、ヒノキという針葉樹中心の植林が山を崩れやすくしたと言われる。
もちろん広葉樹もある多様性のある森林は重要だが、植物の多様性や土砂流出防止には下草がしっかり生えていることが大事で、そのためには適切な手入れが必要。(コナラやブナなど広葉樹の一部にはアレロパシー(他感作用)という他の植物を寄せ付けない性質を持つものもある)
ある単一樹種を植える林業は、針葉樹であっても広葉樹であっても、その段階ですでに生態を破壊している。それは日本の林業の前提である。だからこそ、林業は植物の多様性に可能な限り配慮しなければいけないのである。
社会的循環と生態的循環
リサイクルというが、金属やコンクリートなどは製造過程で膨大なエネルギーを消費している(だからこそリサイクルが必要)。
一方で木材は生態系の循環の中にあり、CO2の循環も含めて自然界の中でリサイクルされているもので、バイオマス全体がもっと評価されるべき。
志の高い著者の熱気が伝わってくるだけでなく、日本の林業について、産業として、治山・治水、そしてCO2排出などの環境問題の歴史から現状まで幅広く、かつわかりやすく語れらていて、林業、森を守ることなどに関心のある方にとって非常に参考になるだけでなく、トレッキングなどの際にも森への理解が深まると思います。